料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」(ミニレシピ付き)第28回
関西出身料理家・今井真実さんが名古屋の「赤だし」に懐かしさを覚えた理由【味噌汁ミニレシピ付き】
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今井 真実
2026.05.29
Yummy!
今月のミニレシピ
セロリとブリのお味噌汁〜まだ行ったことのない秋田の味噌を使って〜


鍋に水を張り、中火にかける。ブリの切り身を入れて表面が白くなるまでさっと茹でる。鍋の湯を捨て、水400m、筋をピーラーで剥き、5cm長さの薄切りにしたセロリを入れて中火で沸騰させる。茹でたブリを戻し、弱火に切り替え1分ほど煮る。火を止めて秋田味噌を大さじ2ほど入れて溶かし、さらに中火で再沸騰させたらすぐに火を止め、器に盛り付ける。
東京在住の関西人あるある?
自分が関西人だと自覚し直すことって、実はあまりありません。なぜなら私は今年で45歳。もう東京に住んで20年以上経っているし、生活は意識せずとも東京に馴染んでいます。江戸前のお寿司も大好物ですし、鰻もふわふわの関東焼きにすっかり慣れました。
しかし、ふとした時にやっぱり私は関西人なのだと思うのです。それはお惣菜コーナーで肉じゃがを見たとき。あ……豚肉だ……といつまで経っても思ってしまいます。もしくは、神戸に帰ったとき。ああ、そうだったと急に昔の記憶が蘇るのです。そうそうミックスジュースもミルクセーキも、東京の喫茶店にはなかったなって。
しかし阿古真理さんの『47都道府県 おいしいもの巡り』(幻冬舎文庫)を読んでいたら、自分のこだわりはなんと適当なものだろうと痛感しました。私と同郷で兵庫県生まれの阿古さんの独特の視点には敵いません。まさに鋭いツッコミのよう!

この本は生活史研究家である阿古さんが日本全国47都道府県を巡り、その土地の食文化に触れ、旅の思い出をエッセイとして綴ったものです。
本書で、阿古さんは47都道府県の特徴や文化に接しながらも生まれ育った関西文化との比較を行います。そんな理由もあり私は、完全に阿古さんと同じ目線で本書を読みました。そしてその阿古さんの指摘やぼやきに共感して思わず何度もくすり。
名古屋で「汁」のおいしさに目覚める
愛知県について綴った「豆味噌の味噌汁が秘めたる力」では、そうなの! と何度も頷いてしまいました。
食べ物や料理が好きな人であれば、旅行先でよく調味料を買われる方も多いでしょう。ある時期から阿古さんは、各地を訪れるたびに味噌を買うようになったそうです。そのきっかけは名古屋観光に出かけ「汁」のおいしさに目覚めたことから。







実は私も、お味噌汁のなかでも特別に思っているのが「赤だし」です。きりっとした塩味、かすかな酸味、舌に乗るビターな味わい。これだってお味噌汁なのに、すべてがいつもの汁とはちがうように思えます。それでいてワカメとお揚げのような普遍的な具材でもすっとなじむ度量の大きさ。
大人になって、ようやく八丁味噌のことを知り、そもそもいつも自宅にある米味噌と材料が違うということに驚きました。赤だしでよく使われる八丁味噌は大豆と塩のみを原料とし、麹も米麹でなく大豆から作った「豆麹」を使用します。ちなみに八丁味噌は単なる赤味噌ではなく、「愛知県岡崎市の八帖町で伝統的な手順で作られている豆味噌」のみを指します。
実は関西も赤だし文化圏
私も愛知県が大好きで年に1回は家族旅行で訪れるほど。いつも旅館の朝ごはんにお味噌汁をいただいて「これこれ……!」と喜んでいるのです。それでいて、ふと懐かしさを抱いており、いつもそれを不思議に思っていました。
そして阿古さんの指摘に、はっとしたのでした。そうでした。関西にも赤だし文化があるのです。お寿司屋さんで最後に出る汁。そのほとんどが赤だしでした。時にはアラが入っていたり、海苔や、あさりだったり。お寿司を散々食べたあとすっとした赤だしの味わいは口の中を全てきれいにしてくれるような清涼感がありました。私は東京に来てお寿司のおいしさにいつもほくほくしていたけれど、あの汁を潜在的に求めていたのだなと本書を読みやっと自覚したのでした。

知っている場所のことも阿古さんのフィルターを通すと解像度が上がり、新しい発見があります。「はじめに」の項にもありますが、私は生まれ育った神戸の文化が決して全国的なものではないことを上京するまで知りませんでした。ですので、春を告げる豆であるうすいえんどうもミックスジュースだって、なかなか今の生活では出会うことがありません。阿古さんの文章を通し、故郷の食を思い出し懐かしく感じました。
秋田味噌がマイブーム
一方でまだ訪れたことのない地域の話を読むと、わくわくして実際に行ってその食文化に触れたいと焦がれてしまいます。
最近私の中では「秋田味噌」がブームで、秋田県の「だまこ鍋」の説明を読んでいるとなんとも食欲が刺激されます。具沢山の汁にうまみたっぷりの味噌。だまこと呼ばれる、米を潰してだんごにしたものと一緒に煮込むのだそう。きっといろんな味を吸っただまこ、絶品だろうなあ。もう季節も夏に近づいてきているというのに秋田の郷土鍋が気になって仕方がありません。

47都道府県、その土地の味を巡る。いつかそんなことができたらいいなと思いながらこの本を読んで、次の旅の予習をしています。
LEEweb読者の皆さんの夏休みの計画にもお役立ていただけるのではないでしょうか。
(『料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」(ミニレシピ付き)』は毎月最終金曜日更新です。次回をお楽しみに!)
Staff Credit
撮影/今井裕治
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