FOOD

料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」(ミニレシピ付き)第15回

美術鑑賞の敷居をグッと下げてくれる「びじゅチューン!」&『井上涼の美術でござる』に夢中!【名作絵画インスパイア系ミニレシピ付き】

  • 今井 真実

2025.04.25

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Yummy!

今月のミニレシピ

「牛乳を注がれたミントティー」

今井真実さん 牛乳を注がれたミントティー

ミントティーはストレートでもおいしいですが、牛乳を注ぐとマイルドに。濃いめに入れた紅茶にミントを浮かべた、さわやかなミルクティ仕立てです。ホットでもアイスでもおいしいですよ。
 
フェルメールの「牛乳を注ぐ女」は井上さんの手にかかると「なんにでも牛乳を注ぐ女」という歌に。社食のBランチ、カンジャンケジャンにも牛乳を注いでしまいます。

今井ファミリーがこよなく愛する美術番組「びじゅチューン!」って?

みなさん、「びじゅチューン!」をご存知ですか?


「びじゅチューン!」はEテレで放送されている、5分間の番組。世界の美術をテーマにした歌とアニメーション、美術作品の解説がぎゅぎゅっと詰まった内容で、作詞・作曲・歌・アニメーションの全てを、アーティストの井上涼さんが担当しています。番組は2013年にスタートして、今年でなんと12年目だそう!



実は私、井上涼さんがYouTubeで作品を発表されていた時からの長年のファンで、「びじゅチューン!」がスタートした時はまさか子ども向け番組を担当されるなんて!と驚きました。しかし、当時幼稚園児だった娘もYouTubeの井上さんの歌をよく歌っていましたし、確かにメロディは子どもも簡単に歌えてしまうほどキャッチーで、怖いほどクセになります。「びじゅチューン!」はもちろん1回目から全て見ており、今も欠かさずその習慣は続いています。

井上涼さん サイン
井上涼さんのサイン色紙。熱海のMOA美術館での井上涼さんの展示会の時、ミュージアムショップでゲットしたものです! サイン会にも何度か行きました。

美術作品に対する井上さんのユニークな解釈で作られたアニメーションはあまりに自由で突飛で、ちょっと難しそうだなあと思う美術をどんなふうにも受け取って楽しんで良いという鑑賞法を私たちに与えてくれました。

井上さんの手にかかれば、葛飾北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏」は、富士山を思い続ける「波」の恋心がこもったラブソング「ザパーンドプーンLOVE」となり、奈良・薬師寺の「吉祥天女像」は衣装の大胆な柄合わせから「その天女、柄マニアにつき」という歌になります。

子守唄も「びじゅチューン!」。美術の英才教育(?)を受けた今井家の子どもたち

アニメーションは可愛いくて破天荒、井上さんの歌声は癒されるのですがどことなくローファイ。コーラスもとっても素敵なのにただ芸術家の名前を連呼しているだけだったり、とにかくちょっとヘンなのです。だけども、どうにも何度も繰り返して見てしまうし、なんだったらDVDもCDもリズム絵本も全て買ってしまいます。

今井真実さん びじゅチューン! 本
我が家の「びじゅチューン!」BOOK。最新刊もありますが、撮影時何故か行方不明で涙。2冊ずつあるのは、娘と息子で取り合っていたために買い足したのでした。

娘と1回目から「びじゅチューン!」を見始めて、やがてその内に息子が生まれ、その熱狂は姉から弟に引き継がれることとなりました。息子は赤ちゃんの時から「びじゅチューン!」が大好き。生まれた時からTVでずっと流れていたのですから無理もありません。泣いた時には「びじゅチューン!」の歌を、もちろん子守唄も「びじゅチューン!」。

そして、ネタ元の作品を観るために、暇さえあれば美術館に行くようにもなりました。家族旅行の行き先も作品の鑑賞を目的に決めて、京都や奈良、地方の美術館をまわったりすることも。

ちなみに娘は中学時代、美術の筆記テストの勉強がラクだったそうで、それは番組を見ていたおかげだったようです。息子はと言うと小学生にしてはやはり美術の知識はある方だと思います。



待ってました!「びじゅチューン!」を手がける井上涼さんの漫画『井上涼の美術でござる』

さて、前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは『井上涼の美術でござる』(一の巻、二の巻/毎日新聞出版)。この本は毎日小学生新聞に連載している「美術」をテーマにした井上涼さんのマンガをまとめたものです。

我が家にとっては「待ってました!」の2冊(一の巻、二の巻と同時に発売されたので正しくは2冊ですが!)。発売が発表された瞬間と同時にもちろん予約。2016年にスタートした連載がまとまるのに9年……まだかまだかといつも待ち侘びていたのです。なんせ、この連載を読みたいがために毎日小学生新聞を取り始めたほどですから。

主人公は忍者BとC。この忍者は井上涼さんファンならおなじみのキャラクターです。この2人が時空を超えて、世界中のさまざまな芸術家たちに会い、その人生や有名な作品をマンガで紹介していきます。

マンガの内容は「びじゅチューン!」に匹敵するほどトリッキーで自由でかわいい! 

忍者BとCはなんとも愛おしいキャラクターで、ミケランジェロに弟子入りして石の中に形を見つける特訓を受けたり、スナックでママのバカンス中の代わりにバイトをして美術収集家の松方幸次郎さんの相手をしたり(え?小学生新聞ですよね?と思ったり思わなかったり)。エキセントリックな設定なのに、セリフは親近感たっぷりでそこがまた井上涼さんの魅力の一つです。

井上涼の美術でござる
こちらも熱海のMOA美術館で購入した忍者の食器シリーズ。割れた時用に、もうワンセット揃いで持っています。井上涼さんの関連グッズはどれもかわいくておしゃれ。この水色も食卓を明るくしてくれます。

葛飾北斎の引越しの手伝いに来た忍者BとCは荷造りをします。だけど、2人はついつい作業の手を止めて「北斎漫画」をじっくり読んでしまいます。「引越しの時ってつい本を読んじゃうのよね」「宇宙の法則だわ」2人は北斎漫画をまねしていろんな図形を組み合わせて、絵を描いて楽しみますが、北斎の娘のお栄に叱られてしまうことに……。


彫刻家ロダンの巻では、ロダンはなんとヨガ・インストラクター。忍者BとCに地獄の門の彫刻と同じポーズをするように指導します。そのコミカルな設定に笑ってしまいますが、ロダンは実際に、制作の時には必ずモデルにポーズを取らせたそうです。

AI時代に、人が人の手で作ったものを見ることの大切さ

「びじゅチューン!」や『井上涼の美術でござる』にもしお子様が夢中になったら、モデルとなった芸術作品を見せるチャンスです。

ロダンの「地獄の門」は上野の国立西洋美術館の入り口の広場にあります。チケットを買わずともお子様と鑑賞できるので、美術館は敷居が高いと思われる方にもおすすめ。上野だけでなく、美術館に行かずとも楽しめる美術作品は、日本中にたくさんあります。

例えば有名な作品でいうと岡本太郎「太陽の塔」が。我が家も大阪まで「太陽の塔」を見に行きましたが、写真で見るのとは訳が違う! 自分の目で作品を鑑賞して初めて受ける衝撃を実感しました。遠くから見ても異様で、近くに来て見るとその質感に再び驚き、その巨大な建造物に大興奮でした。岡本太郎の作品は渋谷駅にも「明日の神話」がありますし、川崎市の生田緑地まで足を伸ばせば広々とした広場とともに作品や川崎市岡本太郎美術館があります。

神社仏閣も面白いものですし、大仏なども同じく大きいというだけで子どもも圧倒されるようです。東京国立博物館では数年前に出来た、子ども向けのスペースがとても楽しくて体感型の展示がされています。ミュージアムグッズもとてもかわいいですし、ショップでは子ども向けの美術書もたくさん売られています。
 
また夏休みには、美術館や博物館では子ども向けの展示が多く企画されます。私自身も、美術の世界はどうも敷居が高く、知識がないと難しいのでは、と思っていましたが、「びじゅチューン!」に出会ってからはふらっと美術館に行くようになりました。


どう解釈しても良いし、作品は人に見られたがっていて、作品は見る人を選んでいるわけではないのですよね。このAI時代に、人が人の手で作ったものを見る。それはとても大切なことなのかもしれません。

(『料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」(ミニレシピ付き)』は毎月最終金曜日更新です。次回をお楽しみに!)


Staff Credit

撮影/今井裕治

Check!

あわせて読みたい今井真実さんのレシピはこちら!

今井 真実 Mami Imai

料理家

レシピやエッセイ、SNSでの発信が支持を集め、多岐の媒体にわたりレシピ製作、執筆を行う。身近な食材を使い、新たな組み合わせで作る個性的な料理は「知っているのに知らない味」「何度も作りたくなる」「料理が楽しくなる」と定評を得ている。2023年より「オージービーフマイト」日本代表に選出され、オージービーフのPR大使としても活動している。既刊に、「低温オーブンの肉料理」(グラフィック社)など。

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