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過剰な「加湿」で健康被害!部屋の理想的な湿度は? カビやダニのリスクを避ける3つの方法

  • 藤原千秋

2022.10.15

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”秋の日はつるべ落とし”と言いますが、秋の気温もつるべ落とし。

あるとき、ひゅーんと音を立てるように本格的な寒さがやってきて、慌てて暖房をつけます。となればがぜん、気になりだすのが部屋の空気の乾燥。

だって乾燥は喉に悪い、肌に悪い、髪の毛にも悪い! 「乾燥は、悪!」だから「加湿しなきゃ!」。

加湿器 スチーム 湿度

でも、ちょっと待って!

やみくもに加湿をすることが引き起こす、決して無視できない問題や、上手な加湿の秘訣があるんです

ぜひ、そこを先に知っておいてから、今年の加湿を始めてくださいね。

 

加湿のしすぎで結露。カビやニオイなどのリスクを招いていませんか?

「乾燥は身体に悪いので、寒くなったらお部屋めいっぱい加湿しているんです!」

とあるお宅にお邪魔すると、ムワ~。即座に曇るメガネ。そして大きなリビング窓には結露の水滴がびっしり。

「窓がビショビショになるくらいガンガン加湿していると、安心できるんですよ。ああ、潤ってるなーって」

確かに潤ってますね。

加湿 結露 窓

でも……私たち、ついこの間(梅雨~夏)まで「潤い」すぎている住まい・空気に悩まされ、うんざりしていましたよね?

お風呂場のしつこいカビやピンクヌメリ(バクテリア)、布団のカビやニオイ、ラグのベタつき、ダニ、チョウバエ、ゴキブリ、それから部屋干し洗濯物のニオイ、靴のニオイ……。

どれもこれも、住まいの水気や湿気、つまり潤いが原因だったはず!

 

秋冬になったら、これらの害がゼロになる……なんてこと、ないですよね。

しかも「窓がビショビショになるくらい」わざわざ加湿している状況というのは、窓ガラスの近辺で水蒸気が水滴に変わってしまっている(湿度100%)しるし。過剰な状態です。

そこまで加湿をするメリットというのは、住まいや寝具、衣類、そして衛生面全般、ほとんどありません

 

「湿度」は住まいにはメリットなし、しかし体にとっては適度に必要

「でも、”過剰じゃない加湿”なら、やっぱり大事ですよね?」

確かに、乾燥しすぎている環境には、問題があります。

たとえば、静電気の発生リスクや、火災のリスクは、秋冬の乾燥した空気環境で高まります。ピアノやバイオリンといった楽器も、乾燥しすぎることで割れる恐れが生じます。

それから、体外で浮遊するウイルスの不活化期間は、乾燥によって伸びてしまいますし、私たちの肌や粘膜が乾燥すれば、バリア機能を損ねて感染リスクが上がってしまいます

空気が乾燥していることで、知らず知らず脱水してしまう恐れも。

カビ 結露 湿度 加湿

とはいえ「住まい」「寝具」「衣類」などにおいては、湿っていていいことは何もありません。

乾燥がちにしておく方が、断然衛生的で快適です。

湿気によって増えるカビやダニはアレルギー症状をもたらし、喘息など起こせば容易に命にも関わることに。加湿しすぎて健康を害する恐れは、乾燥に比べても軽視できません。

ですから、間をとって「ほどほど、ちょうどいい」湿度に整えることが大切なのです。

 

住まいと暮らしのベスト湿度とは?

そんな「ほどほど、ちょうどいい」のひとつの目安に、厚生労働省の 「建築物環境衛生管理基準」による数値があります。 

たとえばエアコンをかけている部屋の場合、適正な温度は「17度以上28度以下」

湿度なら「40%以上70%以下」

【参考】https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu-eisei/gijutukensyuukai/dl/h23_2.pdf

湿度計 加湿 湿度

おおむねこのくらいを目安に、一般的な住まいだったら「相対湿度45%~65%」といったところにととのえておくのが無難と言えるでしょう。

さて、「なんとなく肌がつっぱるから」「なんとなく喉がイガイガするから」加湿器を稼働しようとしているその部屋の、いまの湿度は何%ですか?

意外と50~60%台あったり、少なくても42%くらいあるならば、加湿器を稼働させる必要はないということです。

 

私たちは案外、気温ほどには正確に湿度を体感することができないようです。 乾燥していると思っていたその部屋の湿度、実際に測ってみれば、思うより高かったりするのではないでしょうか。

 



おすすめ、3つの加湿アクション

「それでも、やっぱり子どももいるし」「風邪も気になる」。

 長年信じてきた「加湿すべき!」という思いが強いと、加湿の必要のない湿度だからって、まるで「加湿しないこと」が、悪いことのような気がしてしまうものかもしれませんね。

 

そんな方におすすめな加湿アクションに、「洗濯物の部屋干し」があります。

秋冬は気温が低く、晴れだからとベランダに干しても、夕方まで乾かないなんてこともしばしば。部屋干ししたほうが早く乾くことも多いのでは?

でも、あれっ、まさかバンバン加湿しながら洗濯物を部屋干しして……「なかなか乾かないなあ」なんて言っていませんか?

加湿を兼ねた部屋干しの際には、エアサーキュレーターを併用して洗濯物の真下から直接風を当てるようにすると、洗濯物の乾きが早く、部屋への加湿効果も高まるので、おすすめです。

部屋干し 加湿 サーキュレーター

そして人寄せごとを行う日などに必須のアクションが、「暖房+加湿+換気」をセットにすること

家族や仲間と飲んだり食べたりするような日に「暖房+加湿」を行うなら、必ず1時間に1回、2箇所以上の窓を開けての定期的な自然換気(5分以上)もしっかり(もちろん24時間換気システムの稼働はマスト)行うようにすること。

実は私たちの身体そのものが、赤外線を放つ熱源かつ、生きている(息している)だけで部屋を加湿していて(水分を蒸散している=不感蒸泄)加湿器の役割を果たしていますから、暖房や加湿も、その部屋にいる人数をつねに勘案して設定するのが省エネにもなる大事なポイント。ここはぜひ頭の片隅に置いておいてください。

 

また眠るときなど、どうしてもどうしても乾燥が気になるなら、「ポイント(パーソナル)加湿」を基本アクションにするのも一案。

寝室全体の空気を湿らせてしまうと、布団やベッドのカビ・ダニの発生、部屋のたんす、クローゼットなどの湿気による衣類の異臭やシミ、カビの発生、窓ガラスや壁に結露してのカーテンのカビや建具の腐朽のリスクなどが、どうしても懸念されます。加湿の強度や方法によっては電気代がかさみがちなのも気になる、このご時世です。

比較的安価かつ小型で最小限のミストを発生させる加湿器(超音波式の場合はタンク清掃をこまめに行うのが基本ですが)を就寝時のみに稼働させたり、シルクやコットンの保湿マスクを装着して寝る「ポイント加湿」は、ローリスクでローコスト。

加湿器 ベッド 保湿 就寝

ちなみに、エアコンの暖房をかけると空気が乾燥するという固定概念も根強いものですが、近年ちょうど良い湿度にしてくれる「加湿機能」のついたエアコンが増えています。なのにその機能に気づかず、加湿器をプラスしてより加湿しすぎになっているお宅もあったり……。おうちのエアコンの取説を今すぐ確認してみて!

そしてぜひ、「ほどほどにちょうど良い」湿度環境を手に入れてくださいね。

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藤原千秋 Chiaki Fujiwara

住生活ジャーナリスト、ライター

掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。

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