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【子どものおもらし、嘔吐物、血、経血】など……”お困り汚れ”を安全に&清潔に掃除するには?

  • 藤原千秋

2023.12.16

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冬はインフルエンザや風邪など、体調をくずしやすい季節です。そのため小さな子どもは特に、嘔吐や鼻血などが伴う、困った症状にも見舞われがち。「出物腫れ物所構わず」(ことわざ)という言葉通り、住まいのあちこちで困った汚れもまた発生しやすいもの。子育て“あるある”です。

そう、”あるある”なのは頭ではわかっているのですが……「ソファに吐かれた!」など、いざ自分が遭遇するとやっぱり、あまりのことにパニックになってしまう方も多いのではないでしょうか。

そういった症状による突然のものでなくても、トイレトレーニング中のお子さんがいる場合、夜中におもらしの処理や洗濯に悩まされますよね。

果たして、おうちでこれらの”お困り汚れ”に対峙したとき。一体どうしたらいいのでしょう?

水気の吸い込まないフローリング床などの場合と、吸い込んでしまうじゅうたん・布団・リネン類の場合にざっくり分けて、できる対処をお知らせしたいと思います。

ソファ 子ども 嘔吐

”お困り汚れ”の掃除に使える「処理グッズ」

まず、小さい子どもの育児中なら家にあった方がベターな処理グッズがあります。準備しておくだけではなく、いざというとき、いずれもサッと出せるようスタンバイさせておくことが大切です。

●ディスポ(使い捨て)手袋
ドラッグストア、100円ショップなどで購入可。処理の際にはいつも、すぐはめる癖を

●45Lゴミ袋
常に多めに買い置いておきましょう。割いてビニールシートや前かけとして使うこともできます。布団などを捨てるときには90Lがあるとなお良い

●トイレットペーパー、新聞紙
トイレットペーパーは常に多めに買い置いておきましょう。新聞購読していない場合、ポスティングされるタブロイド情報紙だけでも、少し保管しておいて

●ティッシュペーパー、キッチンペーパー(水に溶けないタイプ)

●使い捨てできる古いタオル 洗濯は余計大変になるので、必ず捨てたいもので

●お尻ふきシートウェットシート(水に溶けないタイプ)

●紙おむつ 普段から少し多めに買い置いておくのをおすすめします

●重曹、セスキ炭酸ソーダなど
アルカリ剤の粉末。掃除用で十分。ドラッグストア、100円ショップなどで購入可

●次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤 ドラッグストア、100円ショップなどで購入可

洗面器、たらい たためるタイプなら普段はじゃまになりません

●アイロン(スチームの出るもの)

●リンサークリーナー(あれば)

あるある”お困り汚れ”の正しい応急処置法は?

1.おもらし

尿(おしっこ) 

床にされた場合はトイレットペーパー(古い使い捨てタオルでもOK)で素早く拭いてしまいましょう。出たゴミはトイレには流さず(詰まります)、ゴミ袋に密封して処分。

布団やじゅうたんでおしっこされた場合は、広げた紙おむつ(高分子吸収体)を押し当てて水分をなるべく素早く移し取ります。トイレットペーパーは水分でボロボロくずれるので、布ものを拭くのには使用しない方が無難です。

尿の95%はただの水です。ただ、濡れている時間が長くなると臭いの原因になる細菌が増えて臭くなります。手早く水分を取り去り、乾燥させるのに注力しましょう。洗えるリネン類なら普通に洗濯してしまっても良いでしょう。

便(うんち) 

床、リネンとも、固体部分を素早く除去します。便の硬度により、水気で溶けるトイレットペーパー、溶けないキッチンペーパーをうまく使い分けましょう。出たゴミはトイレには流さず(詰まります)、新聞紙などに包んでゴミ袋に密封して処分

ノロウイルスやロタウイルスによる食中毒や感染症で起こる下痢での便汚れ以外であれば、洗えるものは速やかに洗い(たらいなどで一度洗剤で手洗いしたのちに洗濯機へ)、洗えないものは重曹、セスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤の5%水溶液で拭き掃除をすれば、便臭なども落ち着きます。

感染性が疑われる場合のリネン類は、洗剤液で軽く手洗いしたのち、たらいなどに作った次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤の薄め液(塩素濃度約200 ppm)に漬けて消毒、その後に改めて洗濯機で洗濯します。

洗濯できないじゅうたんや布団の場合は、まず大きな汚れをペーパー類で包み取った後、重曹、セスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤の5%水溶液と溶けないペーパー(or古い使い捨てタオル)での拭き洗い、のちにスチームアイロンで85度1分間の熱消毒をしますが、これは応急処置です(詳細は後述します)。



2.嘔吐物

ソファ 子ども 嘔吐

▼水気を吸わない床などに嘔吐された場合

周囲を溶けないペーパーで囲って覆い、そっとかき集めて新聞紙などで包み、ゴミ袋に密封して処分します。胃酸による異臭は重曹、セスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤の5%水溶液と溶けないペーパー(or古い使い捨てタオル)拭き掃除すれば落ち着きます。

ただしノロウイルスやロタウイルスによる食中毒や感染症で起こる嘔吐が疑われる場合は、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤の薄め液(塩素濃度約200 ppm)での拭き掃除、消毒も必ず行いましょう

▼洗濯できないじゅうたんや布団が汚れた場合

やはり同様に、周囲を溶けないペーパーで囲い、覆い、そっと汚れをかき集めてゴミ袋に密封して処分。その後、重曹、セスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤の5%水溶液と溶けないペーパー(or古い使い捨てタオル)で拭き掃除することで胃酸による異臭は落ち着きます。

そのうえで、持っていればリンサークリーナーを使う方法もあります。

ただしノロウイルスやロタウイルスによる食中毒や感染症を想定する場合は、さらにスチームアイロンでの85℃1分間以上の熱消毒をしますが、これは応急処置です(詳細は後述します)。

▼嘔吐物が付着したリネン類、特に感染性が疑われる場合

大きな汚れを取り、洗剤液で軽く手洗いしたのち、タライなどに作った次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤の薄め液(塩素濃度約200 ppm)に漬けて消毒しますが、このとき胃酸の成分が残っていると次亜塩素酸ナトリウムと反応し塩素ガスが出てきて危険なので、十分に注意してください。

3.鼻血などの血液

鼻血 子ども

▼水気を吸わない床などに付着した血液の場合

ウェットシートを被せて速やかに拭き取ります重曹、セスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤の5%水溶液と溶けないペーパーor古い使い捨てタオルで拭いても良いでしょう。

▼ソファ、ラグなど吸い込む素材に付着した場合

まずペーパー類で吸い取れる分を吸い取ったのちに、重曹、セスキ炭酸ソーダといったアルカリ剤の5%水溶液と溶けないペーパーor古い使い捨てタオルで拭き洗い、その後水ですすぎ拭きします。

▼洗えるリネン類

洗面器やタライに作ったアルカリ剤の5%水溶液に1〜2時間つけ置けば血液部分がドロっと落ちるので、その後、洗濯機で洗濯しましょう。

血液の主成分はタンパク質で熱で凝固しやすいため、つけ置きや洗濯の際には40度以上のお湯は決して使わないようにしましょう。かといって手がかじかむような冷たい水である必要はありません。冷たくない程度のぬるま湯で十分です。

「お困り汚れ」はクリーニングやコインランドリーを使えない!?

お困り汚れに「恒久的処置」はある?

さて先ほど、二度ばかり「これは応急処置です」とお断りしましたが、では、その場しのぎではない根本的な「恒久処置」はあるのでしょうか。
「困ったらプロにお願い!」というのは、お掃除セオリーですが、ここでも自分で余計なことはしないで、すぐにプロのクリーニングに出してしまえば済むんじゃないんでしょうか?

おもらし 布団

でも実は、それが、ダメなんです。

基本的に、便、嘔吐などによる汚れ物はクリーニングに出すことはできません!

正確に言えば、専門のクリーニング以外に出すことはできません

こういった、「伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるもの」の受付が可能なのは「指定洗濯物取扱施設」を持っているクリーニング店のみ。しかし「指定洗濯物取扱施設」なんて初めて聞いたか、知らなかったという方も多いのではないでしょうか?

「指定洗濯物取扱施設」とは、飲食店や病院、介護施設などの洗濯物を扱う、塩素や高い温度での殺菌消毒の可能な施設のことを言います。

通常のクリーニング店より数は少ないものの、全くないわけでもありません。小さなお子さんがいる場合には家の近くの「指定洗濯物取扱施設」を念のため前もって把握しておいても良いかもしれませんが、逆にいうと他のそういった汚れの洗濯物と一緒に、我が家のものも取り扱われるということでもあります。

そしてもう一箇所、困ったときの洗濯に使いたい「コインランドリー」ですが、実はこちらも「伝染性の疾病の病原体による汚染のおそれのあるもの」は洗えません。持っていきたいのはやまやまかも知れませんが、どうか尿や便や嘔吐物のついた洗濯物や布団を持ち込むのは避けてください。

つまり自宅で洗えない、布団、じゅうたん、ラグ、布張りのソファ、高価なマットレスなど、子どもの粗相のコントロールの効きにくい年齢の間は使わないようにする、というのも後ろ向きな提案かも知れませんが、頭に置いておいても良いかも知れません。

生理の「経血」汚れの処理の正解は?

生理 経血 汚れ シミ 布団

余談ですが、子どもが育って嘔吐も粗相も鼻血も滅多にしなくなっても、女性は「生理の経血汚れ」とはなかなか無縁になれず、日常的に困っている声を聞きます。

経血も血液なので鼻血と同様に、高温での凝固に注意し、アルカリ剤での下洗いをしっかりしておけば、後に残るシミなどにもなりにくいのですが、”あるある”な失敗は、入浴ついでに処理しようとしてついつい40℃程度のお湯で洗ってしまうこと!

ハッと思い当たった方は、次からちょっと気をつけてみてくださいね。


LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!

藤原千秋 Chiaki Fujiwara

住生活ジャーナリスト、ライター

掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。

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