性感染症については習うのに、セックスについては話せない?中学生への性教育のゆがんだ現実を、産婦人科医の宋美玄さんと高橋幸子さんが解説【聴く婦人科診察室#26】
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宋 美玄
2021.12.24 更新日:2023.09.05
今週も産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載「宋美玄さんの聴く婦人科診察室」の時間がやってきました! 女性ならではの心や体のお悩みを解決したり、性にまつわる最新事情を解説したりと、充実の内容でお送りします。
今月は「趣味・性教育、特技・性教育、仕事・性教育」の産婦人科医・高橋幸子さん、またの名をサッコ先生をスペシャルベストにお迎え! 5週連続で宋さんと性教育の最新事情について大いに語り合っていただきます。今回は第4週・中学生への性教育についてお届けします。
中学入学時に母から性教育の本を10冊渡されたサッコ先生
中学生といえば、いよいよ性に対する興味で頭がいっぱいになってくるお年頃。宋さんは中学時代は女子校で少女マンガに夢中。サッコ先生は中学入学と同時に共学校で寮生活に入り、家を出る際にお母様から性教育の本を「これ読んでおきなさい」と10冊まとめてドドンと渡されたそう。
令和の中学生に対しても、性に関するゆがんだ情報がインターネット経由で入ってくる前に、先回りして正しい知識を与えてあげた方が良いでしょう。そして「ネットの情報には噓もある」ことも伝えおけば、子どもは噓を自分で見抜けるようになります。
性感染症は教えるのにセックスや避妊は教えない
2021年12月時点では、学習指導要領では中学1年生に第二次性徴について教えることになっています。生殖器が成長すること、精子と卵子が一緒になることは教えますが、小学校同様「歯止め規定」があり、精子と卵子が一体どうやって一緒になるのかについては扱いません。3年生で性感染症についての授業があり、予防にコンドームを使うことも教えますが写真やイラストなどはなく、やはりセックスについても触れない、という矛盾した内容に。ちなみに、避妊についても高校生にならないと取り上げません。
中には「歯止め規定」を気にせず堂々とセックスについても教える先生もいらっしゃいますが、大学の教育学系や教職の授業で性教育の教え方を学べる授業はほとんどないのが現状です。とはいえ、性教育の必要性を感じる先生がたは、サッコ先生のような外部講師を招き「学習指導要領を超えた内容だけど、外部講師が喋っちゃったからまあOK」という形を取っています。
性交同意年齢が13歳なのに、きちんと性教育を受けられない
「日本は性交同意年齢が13歳と諸外国に比べ低いのに、きちんと性教育を受けられず、でも同意の責任だけ持たされている状況。15歳時点でも性教育に避妊について取り上げないのに、性交同意ができると扱われているなんて、本当に子どもに対する虐待だと思います」とサッコ先生は憤ります。性感染症については習うのに、どうやったら子どもができるのか、どうして性感染症になるのか、といった根本的な話ができていません。
サッコ先生によると、埼玉県の中学校では6割が外部講師を招いて性教育の講演会を行っています。裏を返すと、残り4割の学校では学ぶチャンスがないということ。実は今、校長先生の世代の方々が若かりし頃は性教育が盛んな時代だったので「私は若い頃の自分の話したけどね、奥さんの出産ビデオ使って」などと話す先生もいますが、2003年から10年ほどあった「性教育バッシング」の影響で、それが若手の先生に引き継がれていません。
宋さんによると、自治体に招かれ教師や養護教諭向けに性教育の授業をする機会が最近増えてきたそうなので、学校側でも教師の知識をアップデートしないと、という問題意識もあるようです。残念ながらお子さんの学校が性教育をきちんとしてくれないときは、サッコ先生のYouTube「#めちゃ大事」をお子さんに見せてあげると良いでしょう。埼玉県の中学校で行われた性教育の講演会を見られます。
(次回は12月31日(金)18時更新。いよいよ性教育スペシャル最終回・高校生以上編です。どうぞお楽しみに!)
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性教育は「生」教育。思春期の入り口までに、小学生に伝えたいこと。産婦人科医の宋美玄さんと高橋幸子さんが解説【聴く婦人科診察室#25】
イラスト/鹿又きょうこ
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宋 美玄 Song Mihyon
産婦人科医
セックスや女性の性などについて、女医の立場からの積極的な啓蒙活動を行う。メディア出演や著書多数。'17年、丸の内の森レディースクリニックを開業。https://www.moricli.jp/
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