性教育は「生」教育。思春期の入り口までに、小学生に伝えたいこと。産婦人科医の宋美玄さんと高橋幸子さんが解説【聴く婦人科診察室＃25】

宋美玄

2021.12.17

音声

今週も産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載「宋美玄さんの聴く婦人科診察室」の時間がやってきました！　女性ならではの心や体のお悩みを解決したり、性にまつわる最新事情を解説したりと、充実の内容でお送りします。

今月は「趣味・性教育、特技・性教育、仕事・性教育」の産婦人科医・高橋幸子さん、またの名をサッコ先生をスペシャルベストにお迎え！　5週連続で宋さんと性教育の最新事情について大いに語り合っていただきます。今回は第3週・小学生への性教育についてお届けします。

性教育、やっぱり10歳までには！

「『性教育は何歳から始めたらいいですか？』という質問には『別に何歳でも。早ければ早いほど良い』と、『何歳までに教えてたらいいですか？』には『やっぱり10歳までには！』とお伝えしてますね。小学校に講演会に行くと、同じ内容で4年生と6年生に講演しても、全然反応が違う。4年生は目をキラキラさせて本当に興味で聞いてくれるんですけど、6年生だとすごく緊張してたり、逆に『おい今日、あの話だぜ』みたいな感じでもうニヤニヤが止まらない男子3人組がいたりとかね」（サッコ先生）

2021年12月時点では、小学校で行われる性教育は、まず2年生で「おへその話」、4年生で男女一緒に保健体育の授業で月経と射精について、5年生で理科の授業で「ヒトの誕生」という項目の中で子宮の中で赤ちゃんが育つことや出産について、６年生で第二次性徴について学びます。「教科書に『心が発達するよ、異性が気になったりするよ』と書かれていて『いや、異性とは限らんだろう』と思うんですよね」とサッコ先生。

学習指導要領の「歯止め規定」とは

今のところ学習指導要領には「歯止め規定」というものがあり、精子と卵子の話はするけど、精子と卵子がどうやって一緒になるのかについては「取り扱わないものとする」となっています。しかしサッコ先生は「命の繋がりの温かいところを教えてあげてください」と小学校からリクエストされ講演会に行く際、プライベートゾーンについてのスライドを１枚入れ込みます。

そして「男性の身体と女性の身体、それぞれに『赤ちゃんの素』が半分ずつあります。男性が持っている『赤ちゃんの素』を、男性のペニスを使って女性の膣の中に届けてあげると、女性のお腹の中で『赤ちゃんの素』が一緒になります。赤ちゃんになって充分に大きくなって『もう産まれてもいいよ』となると、赤ちゃんの部屋である子宮がギュウギュウと収縮をして、赤ちゃんの通り道である膣を通して身体の外に生まれます」の、「子宮がギュウギュウ」のくだりを先に説明し、その流れの中で「精子と卵子がどうやって一緒になるのか」も説明するそう。

「人工授精」については教えているの？

それを聞いた宋さんから「ペニスを使って『赤ちゃんの素』を入れられない人もいますよね？　卵を取り出してとか、そういう話は小学生にはしてますか？　今あってやっぱりクラスの中で何人かは（人工授精で生まれた子が）いるでしょうし……」と質問が。

「今のところしてないですね。中学生向けのスライドは今作り直してて（人工授精で生まれた子が）ショックを受けないように、と、赤ちゃんができる方法に『性交』と『生殖補助医療』を並べています。話をするときにも『将来的にはそのような選択肢があるよ』『性行為以外にも赤ちゃんを持つ方法があるよ』などと説明しています。性別違和や同性愛についても話します」（サッコ先生）

「命の安全教育」にサッコ先生が思うこと

2023年以降に全学校を対象に「命の安全教育」を行う、と文部科学省が発表しました。性犯罪被害から身を守るためのプライベートゾーンの話、デートDVの話、性的同意の話を、発達年齢に応じ、担任教師が道徳の時間に教えることになります。

「全ての子どもを守るため、性教育の欠片に見えるものを学校で堂々とできるようになるのはありがたいですが、怖い内容から入る脅しの性教育には絶対なってほしくない。温かい話と、「気をつけようね」という話と、セットでやってもらいたい」とサッコ先生は進言します。

小学生の妊娠が出産に至ってしまう理由

それを受けて「やっぱり性教育って文脈とかバランスがすごい大事だよね。集団教育だと既に被害に遭っている子もいるかもしれないし。私も講演に行って『個別に喋りたい子はおいで』と言うと、性被害とか『彼氏が避妊してくれない』とか結構相談を受けるので。子どもの小学校のお母さん経由で小学生の性行為について話を聞くことも増えてきましたよね」と宋さん。

小学生の妊娠は誰もが「まさか」と思っていて気づかれないので、出産にいたってしまうことが少なくありません。そういう点でも、やはり10歳までには色々と伝えておきたいものです。

（次回は12月24日（金）18時更新。性教育スペシャル・中学生編です、どうぞお楽しみに！）