第一子を産んでから、産後の「尿漏れ」に悩んでいます。くしゃみも笑うのも怖い…(泣)【宋美玄さんの聴く婦人科診察室#15】
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宋 美玄
2021.10.08 更新日:2023.09.05
今週も産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載「宋美玄さんの聴く婦人科診察室」の時間がやってきました! 女性ならではの心や体のお悩みを解決したり、性にまつわる最新事情を解説したりと、充実の内容でお送りします。今回は読者からのお悩みメール「第一子を産んでから、産後の「尿漏れ」に悩んでいます。くしゃみも笑うのも怖い…(泣)」に、宋さんがアドバイス!
妊娠中は尿のコントロールが難しい状態
以前、LEE本誌で「人には言えない下半身の3大悩み」という特集を組みました。3大悩みとはズバリ「痔」「尿漏れ」「膣のケア」。出産を経験した人の1/3が何らかの「尿トラブル」に悩んでいると言われていますが、読者の声を聴いていると、もっと悩んでいる人が多い気が……。
「4割ぐらいの方が悩んだことがあると言われています。特に妊娠中の尿漏れは大半の方が経験されてると思いますし、産後でも経膣分娩直後ならすごく多いのでは。妊娠中は大きなお腹になるので、物理的にコントロールが難しい状態。腹圧が膀胱にそのまま伝わっちゃうんですよ。産後は骨盤底筋が傷ついたり緩んだり伸びきったりするので、尿漏れが割と長引く傾向が。出産直後は膀胱麻痺になり、尿意が分からないことも」(宋さん)
尿漏れ防止には「腹圧」をかけないこと
女性は男性に比べ尿道が短いので、出産等の影響で腹圧がかかると非常に尿漏れしやすい状態に。尿漏れをなんとか防ぎたい! そのためには、基本的に腹圧をかけない生活を送るべし。「腹圧」って何?という方、まず歯磨き粉のチューブを想像してみてください。チューブに握って圧力をかけると、歯磨き粉が出てきますよね。歯磨き粉が出てくる部分を人の体に置き換えると、膣に当たります。お腹に力を入れると、膣の方に全ての圧がかかり、ゆえに骨盤底筋に負荷がかかります。
ということは、産後にお腹を引っ込めようと腹筋運動するのは、歯磨き粉のチューブをにぎにぎしているのと同じ……頑張って運動しても、それが尿漏れに繋がってしまいます! 産後はどうしても腹直筋が伸びてしまい「あれ、産んだはずなのにもう一人入ってる?」という位お腹が出てしまう人が少なくないようですが、腹直筋は6カ月位で縮み、その頃にはお腹も自然に引っ込みます。ので、腹筋運動は絶対に止めましょう。
骨盤ベルトを着用し、常に姿勢良く
また、臥床、つまり横になることで骨盤にかかる負担が少なくなります。そして起き上がるときには横を向いて、手をついて上体を起こすべし。が、一人目ならともかく、二人目以降の出産では上の子どものケアでずっと寝ているわけにもいかないでしょう。それゆえ、出産回数が増えるほど尿漏れはひどくなりがちです。また、尿漏れが解消したとしても、更年期の頃に女性ホルモンの減少に伴い骨盤底筋が弱くなり、再び尿漏れが顕在化するケースも。
腹圧をかけないためには、骨盤ベルトの着用が有効。ベルトを着用することによって、残った骨盤底筋の収縮を助けてくれます。そして常に姿勢を良くすることを心がけて。くしゃみや笑ったりする、重いものを持ち上げる等の尿漏れリスクのある行動を取る際は、背筋を伸ばして、骨盤底筋を持ち上げて膣をキュッと締めてから。それを心がければ尿漏れしません、と宋さんは断言します。
排便も場合によっては尿漏れのリスクに
また女性に多いのは、排便の際に気張り、腹圧がかかり骨盤底筋に負荷をかけてしまうというケース。特に便秘がちな方は、出産同様に負荷をかけてしまい尿漏れに繋がる恐れが。腸が蠕動したら何を置いてもトイレに直行し、排便姿勢も「考える人」のポーズをしたままバンザイをし、トイレの前にあるドアをグーッと押すイメージで。そうすると腹圧をかけることなく、力むことなく、排便できますよ!(上のイラスト参照)
日々姿勢を正し、骨盤底筋を傷つけない生活を心がけて。とはいえ、泌尿器科を受診し、理学療法士さんに腹圧をかけない方法を指導してもらうのが最も確実です。
(次回は10月15日(金)18時配信です、どうぞお楽しみに!)
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イラスト/鹿又きょうこ
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宋 美玄 Song Mihyon
産婦人科医
セックスや女性の性などについて、女医の立場からの積極的な啓蒙活動を行う。メディア出演や著書多数。'17年、丸の内の森レディースクリニックを開業。https://www.moricli.jp/
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