〜五感を研ぎ澄まし心地よく暮らすvol.102〜
【49歳の読書記録5作品】本を閉じたあと、自分自身の生き方を振り返るきっかけになった本。【LEE DAYS club clara】
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LEE DAYS リーデイズ
2026.08.10
今回は最近読んだ本についてご紹介したいと思います。どれも読み終わった後に、自分の人生や暮らしを見つめなおしたくなる、そんな心に残る本ばかりです。※まだ読んでいる途中の本が1冊だけありますがご了承ください。

1『カフェーの帰り道』嶋津 輝
第174回直木賞受賞作品として話題のこちら。わたしも早速手に入れ、この週末に一気読みしたところです。

激動の時代を逞しく生き抜いた女性たちの物語
戦争の影がそこかしこに潜んではいますが、戦争そのものの描写はほとんどなく、家族が戦争に出征したり、誰かが亡くなったり、少しずつ日常生活の中に戦争の影響が影を落とす中で、人々の暮らしがどの様に変わっていったのかが静かに伝わってきます。
連作短編集であるこちらは複数の女性たちが入れ替わりながら登場します。その人の人生の一場面を垣間見る中に物語としての余韻があり、彼女たちを通してゆるやかに物語が繋がっていきます。
時代が変わっても、誰かを好きになったり羨んだり、時には悩んだりしながら生きている女性たちは、今の時代を生きる私たちと変わらない人間なのだという、そんな当たり前のことを感じつつ、同時に生きる時代が違うということの残酷さや切なさにやるせ無い想いも抱きました。
決して恵まれた時代ではなかったかもしれないけれど、自分が一番自分らしくいられる場所を求め、逞しく生き抜こうとする女性たちの姿が印象的でした。彼女たちは祖母であったかもしれないし叔母たちであったかもしれない、そんなことも頭をよぎりました。
読み終えた後は、一度しかない人生だからこそ、強くしなやかに生きていきたい、そう心から思った作品です。
2『空、はてしない青』メリッサ・ダ・コスタ 著、山本知子 訳
2026年の本屋大賞、翻訳小説部門で1位になったこちらの作品。フランスの作家メリッサ・ダ・コスタのデビュー作にして上下2巻の大作です。
様々なところで紹介されている本作品ですが、手に取る前は、フランス文学作品にどこまで共感できるのかな?という若干の不安も正直ありました。
実際読みすすめてみると、孤独や生きづらさを抱えながら自分らしく生きること、そして家族や他者との関係性…と普遍的なテーマが描かれていて、国や文化を超え、今の自分自身にも響く内容だと感じています。

「余命宣告をされた男性」と「掲示板で知り合った同行者(女性)」が、長い旅路の果てに行きつくところとは……
ある目的をもって旅に出た二人の男女が穏やかな日常を大自然の中で過ごす中で、それぞれの内面に向き合い、お互いの関係性を少しずつ積み重ねていく作品。
実はまだ完読していないのですが、この穏やかな時間がこの先どう変わっていくのだろう?と気になりながら先を読みすすめています。
普段暮らしていると、時間も予定も、人との関係もどこかで「こうしなきゃ」という気持ちがありますが、そこから一度完全に離れて、別の時間軸に身を置く中でじっくり自分自身と向き合いながら過ごす、そんな時間の流れにわたしも身を置いてみたくなります(これはわたしの永遠なる希望なのかもしれません)。
「本当の自分でいるってどういうこと?」ということを考えながら、大事に読みすすめていきたい作品です。
3『ファイア・ドーム』辻村 深月
話題作のこちらも一気に読み終えました。
大きな事件が起きたとある街で、その事件を巡って人々の間に広がっていく噂や憶測が現実を変えてしまう恐ろしさを描いた作品。

人間が生み出す「怖さ」をあぶり出す
平穏、安全が当たり前で普通に暮らしている人の日常が、ほんの小さな出来事をきっかけに一瞬にして当事者側に引きずり込まれてしまうその怖さ。
そしてある情報が人から人へと伝わるうちに少しずつ形を変え、いつの間にかそれが「真実」としてひとり歩きしていき、そしてその噂を信じた人たちが更に新たな噂を生んでいく怖さ。
「真実がわからない」ことよりも、「真実が分からないまま人は動いてしまう」ということの怖さがリアルに描かれている作品だと思いました。
そこには悪意があるわけでもなく、自分たちの解釈で判断してしまう危うさが背景にあり、物語の先が気になりページをめくる手が止まりませんでした!
そして信頼している人の心の中で、本当は何が起きているのかはわからないという怖さ。
人って誰かを、特に身近で親しい人であればあるほど「わかっている」と思いがちですが、実際にはその人の心のほんの一部分しか見ていないのですよね。
家族でも、親しい友人でも、長く付き合っている人であっても、その人が抱えている孤独や葛藤、秘密までは完全には知りえることはできない、それなのに分からない状態に耐えられず、相手の気持ちを推測したり、噂を信じたり、自分なりの物語を作ってしまう。
人間の弱さ、愚かさ、儚さもいろんな場面を通して描かれています。
人と人はどんなに近くても完全にはわかり合えない、それでもわかろうとするしかない、という切ないテーマも感じた作品です。
わたし自身は大事な人のことでも、すべて知らなくても全然かまわないタイプ。自分自身もそうですが、お互いオブラートに包んでおきたいことだってきっとありますから。
4『また、同じ夢を見ていた』住野よる
こちらもある方が勧めていたので気になって手に取った1冊ですが、主人公の女の子に思いのほか惹かれてしまいました。
一読したところ、表面上は不思議で少しファンタジーのような作品ですが、中心にあるのは「幸せは、自分で選んでいくもの」 というテーマなのかなと感じました。主人公の小学生である奈ノ花が、いろいろな人との出会いを通して「幸せ」について考えていく物語です。

『空、はてしない青』のような、日常から少し離れて、自分の時間をゆっくり味わう読書とはまた違って、こちらは読み終えたあとに「自分の人生の選択」を静かに振り返りたくなる感じがありました。
自分の幼少期を振り返ってみた
「もし、あのとき別の選択をしていたら?」と人生の中の幾つかの分岐点を振り返ることって、誰しも経験があると思うのです。その選択が正しかったかどうかについてはすぐには答えが出ないと思いますし、結局は自分が歩んできた道が全てなので受け入れるしかないのですが……。
奈ノ花は幼いのに「自分はこう思う」という軸がちゃんとある。もちろん、まだ子どもだからこその未熟さや危うさもあるけれど、決して周りに合わせるために自分の気持ちを簡単に曲げない。しっかり考えて答えを出す、その姿がわたしには眩しく、時に羨ましくも感じました。
わたし自身も幼少期、群れるのが苦手なタイプの子どもでした。奈ノ花と友だちになったら、こちらの話をちゃんと聞いてくれて、まっすぐな言葉で「それって本当にあなたがしたいことなの?」なんて聞いてきそう(笑)。
幾つになっても、こういうふうにもなれる、こんな人生を選ぶこともできる、こんなふうに傷つくこともある、それでも、やり直すこともできる。つまりどんな人と出会い、何を感じ、どんな言葉を受け取り、そして自分自身が何を選ぶのか。その積み重ねで、少しずつ自分の人生が形作られていくことを、この本を通して再認識できた気がします。
5『白鳥とコウモリ』東野 圭吾
東野圭吾さんの訃報を知り、久しぶりに再読してみようと手に取ったこちらの作品。

加害者の息子と被害者の娘が、それぞれの父親の行動に違和感を覚え、協力しながらひとつずつ矛盾点を見つけ出し、事件の真相に迫る物語。時間を追うごとに見えてくる複雑な人の繋がりや次の展開が気になり、寝食を惜しんで読んでしまうこと必至!
大事な誰かを守るためにやったことが他の誰かを深く傷つけてしまう、白鳥にもコウモリにも一瞬で変わってしまうことがあり得る、そんな人間の切なさを感じた物語です。
人間の不可思議と儚さをここまで巧みに紡ぎだす東野圭吾さんの作品からは、いつも様々なことを考えさせられます。
この秋に映画公開も決定しているようで、そちらも楽しみです。
読書を通して、「自分がこれまでの人生で、どんな選択をしてきたのか」を静かに振り返る
まだ読み終えていない本もありますが、やはり読書に没頭する時間は、思いもよらないところへ自分自身を連れて行ってくれるような感覚があるのが特別だなと感じています。
特に今回の5冊は、読みすすめることで今までの自分自身を見つめなおしてみたくなる、そしてこの先の人生にどんな願いや希望を抱くのか、そんなことに想いを馳せる読書体験ができる本だと思います。どなたかの参考になれば幸いです。

秋へ向けてまだまだ読みたい本もたくさんあります。またどこかでご紹介できればと思います。

clara
49歳 / 埼玉県 事務員
夫と2人の子ども、猫(♂)との暮らし。自分に必要なものをその時々で取捨選択し、日々心穏やかに過ごせるよう心がけています。ひと手間かかっても五感を満たしてくれるもの、丁寧に作られたものを好みます。
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