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わが子の「思春期」がこわい

専門家に聞く!今から知っていきたい【思春期】子どもに育まれる3つの力

2022.07.17

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そんなにしんどい状況になるなら、いっそなければいいのに……と思いたくなるけれど、どんな子にも訪れるのが思春期。
いつ頃から始まるの?親子関係はどう変わる?
その意味・意義や疑問を、専門家が解説します!

教育カウンセラー&精神科医に聞く!
そもそも「思春期」って何?いつ頃、どんな理由があって訪れるの!?

成熟していく身体の中に、〝大人の自立心〞と〝子どもの依存心〞が共存するアンバランスな時期

教育学博士・教育カウンセラー 諸富祥彦さん

教育学博士・教育カウンセラー 諸富祥彦さん
明治大学文学部教授。上級教育カウンセラー、スクールカウンセラーとして長年にわたり子育ての悩みをかかえる親の相談に乗る。著書に『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など。
公式サイト:https://morotomi.net/

思春期は、人生最大の変化。自分と向き合い、社会で自立して生きていくために必要な力を身につける大切なステージ です

精神科医・臨床心理士 鍋田恭孝さん

精神科医・臨床心理士 鍋田恭孝さん
青山渋谷メディカルクリニック名誉院長。専門分野は心身医学、臨床心理学、児童・青年期精神医学など。思春期・若者論に詳しく、引きこもり、不登校、うつ病の臨床に携わる。
公式サイト:https://dr-nabeta.com/index.html

今から知っておきたい
子どもの成長、人間関係の変化・・・「思春期」とは?

「思春期」とは?

年齢の目安

一般的には 10歳~18歳くらい(小学生高学年~高校生) but個人差が大きい

どんな時期?

●身体の成長
第二次性徴=身長・体重の増加、性的成熟。性ホルモンの分泌が増え、心身が不安定に

●認知の発達
1.現実を正確に把握できるようになり、理想を持つなど抽象化能力が出てくる
・・・理想と現実のギャップに悩む

2.自分を客観視できるようになる
・・・周りに自分がどう見られているか意識するようになる

●人間関係の変化
家族や親より、友人との関係が親密になり、性への関心も

発達に必要な段階だから、訪れてしかるべきなんです!
思春期の子どもに育まれる3つの力

「思春期の葛藤は、その先の人生をよりよく生きる力を獲得するため大事な経験なのです」(諸富さん)

1.自分をつくる力

親の価値観から離れ、自分自身の価値基準を見つけて、少しずつ自分という人間をつくっていきます。

2.挫折から立ち直る力

勉強、恋愛、人間関係など失敗が多い思春期。自分で乗り越えることで、困難や挫折を克服する力がつきます。

3.悩む力

親が正解を押しつけず、子どもが自分自身で悩み考えることで、物事を深く具体的に考えられるようになります。



心と体がアンバランスながら懸命に大人になろうとしている

思春期の葛藤

そもそも思春期っていつ、どんな時期のことを指すのでしょう?

「個人差が大きく、早いと小学2~3年生から始まる子も。一般的には小学生高学年~中学生から始まり、高校2年生くらいまでがど真ん中と言えます。
同時に体もぐんと成長し、身長が伸び男子はヒゲが生え、射精ができるように。女子は体つきが丸みを帯び、生理が始まります。体は大きくなっても心は追いつかない部分もあり、成熟していく体の中に大人の心と子どもの心が同居している、非常にアンバランスな状態。
心の土台を育てる乳幼児期、社会性を身にける学童期を経て、子どもが〝自分づくり〟に取り組み人として自立しようとしているのが思春期で、成長にとって非常に大切な時期なのです。それだけに親は子どもをそれまでのように〝子ども扱い〟せず、対等なひとりの人間として扱う必要があります」(諸富さん)

思春期を経て育まれる自分自身で生きていく力

言うことを聞かない、コミュニケーションが取れないなど親からすると思春期のネガティブな側面にばかり目が行きがちですが……

「一般的に10歳くらいから現実が正確に把握できるようになり、その分、自分自身や周囲の人の欠点も見えだす。親が完璧でないことがわかってくるので、言うことを聞かないことも増えるでしょう。自分を第三者的に見る力も備わってくるため、他人の目が気になり対人不安が高まることもあります。
でも裏を返せば、これら現実の把握や客観性、自分と向き合うことなどは、社会で生きていくうえでとても大切な能力。この力を獲得するのが思春期で、人生最大の変化であり、大人になるために不可欠な時期なのです」(鍋田さん)

思春期の疑問1
思春期の表れ方に男女差はある?

思春期の表れ方に男女差はある?

男女で傾向はあるが、個人差のほうが大きい

「体の第二次性徴と連動するので、始まるのは女子のほうが早め。でも表れ方に明確な性差は感じません」(鍋田さん)

「会話が少ないためコミュニケーションが取りづらい、と悩むのは男子の親に多い傾向が。女子は友人関係で苦しむ子が比較的多いよう」(諸富さん)

思春期の疑問2
「反抗期」って思春期とイコール?反抗期がないのも問題?

「反抗期」って思春期とイコール? 反抗期がないのも問題?

反抗期は思春期の表れ方のひとつ。なくてもOK

「同義というより、思春期の表れの一種が反抗期。攻撃的だったりコミュニケーションを拒絶するような言動が出るケースのこと」(諸富さん)

「〝友達親子〞のような関係だと反抗しない子も。特に問題はありません。ただ自己主張をまったくしない場合は心配も」(鍋田さん)

思春期の疑問3
現代っ子の思春期は、昔とは変わってきている!?

非行など、わかりやすい反抗期は減っている

「今の親や先生は昔と比べて優しいため、かつてのような非行というあからさまな反抗は少ないよう」(諸富さん)

「反抗が減った分、摂食障害や不登校が多いというのが最近の傾向かも」(鍋田さん)

スマホやSNSで、親の目が届かないところに問題が

スマホやSNSで、親の目が届かないところに問題が

「SNSの発達で親の目の届かない人間関係を持つ子は多い。でもすべてを把握するのは無理、子どもを信頼するしかありません。持たせる前に親子で一緒にルールをつくるのが大切です」(諸富さん)

親を論破して打ち負かそうとする子も

親を論破して打ち負かそうとする子も

「今の子どもはネットのおかげで、大人より情報量が多いことも。その知識で大人を言い負かしたりする子もいるようですが、そういう場合は負けてやったらいい。〝負け上手〞になりましょう」(鍋田さん)


イラストレーション/室木おすし 取材・原文/遊佐信子

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