【知花くららさんインタビュー】育児をしながら大学へ…やり遂げられたのは家族のおかげ
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LEE編集部
2021.11.30
LEE世代で学校に入り直して、本気の“学び直し”をする人が増加中。コロナ禍でおうち時間ができたこと、将来への不安が募ったことも後押しに。さまざまな形で、もう一度学校で学び直している経験者にお話を聞きました。人生100年時代を考えるためのヒントも満載です!
この記事は2021年9月7日発売LEE10月号の再掲載です。
お話を伺ったのは
モデル、女優 知花くららさん
1982年、沖縄県生まれ。モデルとして数多くの女性誌で活躍。国連WFPの日本大使を務める。最新情報は公式インスタグラム(chibanakurara.official)にて。
CHIBANA’S History
知花さんのこれまでヒストリー
2006 | 上智大学文学部教育学科卒業 ミス・ユニバース2006世界大会で第2位 |
---|---|
2007 | WFP(国際連合世界食糧計画)オフィシャルサポーターに就任 |
2008 | 女性誌の表紙を務めるなど、モデルとして活躍 |
2009 | 栄養学を学ぶために短大に入学したものの、のちに退学 |
2013 | WFPの日本大使に就任 |
2015 | NHK大河ドラマにて女優デビュー |
2017 | 結婚・第63回角川短歌賞で佳作を受賞 |
2019 | 京都芸術大学建築科の社会人課程に入学 /妊娠中に大学生活スタート!\ 第1子出産 |
2021 | 大学を卒業・第2子出産 |
寝ながら模型を組み立てた、つわり真っ最中の卒業制作
今年の3月に、京都芸術大学の建築デザイン科を2年かけて卒業した知花くららさん。もともと教育学で学位を取得していましたが30代の今、建築という別分野で新たに学ぼうと思った理由は?
「世界中の建物を見てきたこともあって建築、内装、インテリアが以前からとても好きでした。かつてその延長線上でインテリアの資格取得のために勉強をしたことも。でも、インテリアは物やディテールのことがメインで、例えば、窓のような開口部の大きさやガラスの材質などの構造や素材については建築の範疇になると知り、もっと本格的に建築についても学びたいと思うようになったんです。
建築士の知り合いに相談もしたのですが『建築を学ぶと、これまで見てきた世界の景色が変わりますよ』という言葉がすごく印象的で。この先の私のキャリアを見据えるうえで真剣に学び直したいと思い大学に入り直すことを決心しました」(知花くららさん)
選択したのは、建築士の資格取得のための学位が取れる通信制の大学。レポート提出などの座学と、実技を学ぶ月に2〜3回のスクーリングで単位を取得し、社会人は最短2年で卒業ができます。
「最初は座学が多く、レポートに必要な文献を探すために丸1日図書館にいることも。課題が多く、必死にやらないと締切までに終わらないので、仕事の際も勉強道具を持ち歩き『今日は合間にスケッチが3ページできそう!』などと、隙間時間をフル活用しました」(知花くららさん)
また、大学入学が第1子の妊娠、出産と重なり、最後の卒業制作中に、今度は第2子の妊娠が発覚。「私の大学生活はつわりで始まり、つわりで終わりました(笑)」と笑う知花さんですが、想像を絶する大変さだったはず……!
「妊娠中はまだよかったのですが、入学して半年後に出産してからは今振り返っても記憶が曖昧なほどに慌ただしくて。授乳で朝4時ぐらいに目が覚めるのでそのまま勉強を始めて、子守唄を歌いながらレポートを書いたこともありました。そして一番大変だったのが、第2子のつわり真っ最中の卒業制作。制作の規模がだんだんと大きくなり、最初はワンルームや二世帯住宅だったのが、卒業制作では公共建築の模型を作り上げなくてはいけなかったんです。
何段階かある締切の直前になって、娘が高熱を出して保育園に行けなくなったり、自分自身のつわりも気持ち悪くて寝ながらボンドをつけて模型を組み立てたり……。夫のサポートと周りの助け、借りられる手はすべて借りて乗り切り、何とか2年で卒業することができました」(知花くららさん)
LEE世代の学びで難しいのが、家庭や仕事との両立。知花さんは妊娠、出産と人生の転機が続く中で、休学したり、一度学びを中断しようと思うことはなかったのでしょうか?
「卒業までは最短で2年ですが、社会人なのでそこは自由で、当初は3年ぐらいかけてもいいかなと思っていたんです。でも始めてみたら好きな建築を学べるのが楽しかったこと、そして、思っていた以上に大変で、家族への影響が大きく……。これを3年も4年もズルズルと続けるのは申し訳ないなと思うようになりました。今この瞬間は大変でも、学校に行く期間をできるだけ短くしたほうが、家族への負担が少なくなるのかなと。これが、できる限り2年で卒業したいと思った最大の理由です。
実は20代後半で、栄養学を学びたくて短大に入学したことがあるのですが、その際は、仕事が忙しくて通えなくなり、やめてしまったんですね。ひとりなら途中で諦めてもいいけれど、ここまで家族を巻き込んで協力してもらうと、きちんとやり遂げなければ!と思う。家族がいるからこそ、乗り越えられたのかもしれません」(知花くららさん)
在学中の2年間、夫からはさまざまなサポートが。
「学びの期間がちょうどコロナ禍のステイホーム期間と重なったので保育園に行けない子どもの面倒をみてくれたり、私が課題の締切前であまり食べずにいると温かいスープを作ってくれたり。一度、私が家事、育児ができずに負い目を感じて後ろ向きになってしまったときがあったのですが、そのときは話し合いの場を設けてくれて。
2年目の夏だったので、何を今さらという感じもありつつ(笑)、『ここまで学びたい気持ちがあるのはすごいことだから、応援したい』と言ってくれました。モヤモヤとしたときにきちんと伝えて、夫の気持ちを確認できたのは今でもよかったなと思います。もともと夫婦の会話は多いほうですが、コミュニケーションはやはり大切だなと。生活面も精神面も支えてもらえて感謝しています」(知花くららさん)
建築は未来に残るもの。古民家をプロデュースしたい
この夏には、無事に第2子を出産。産前の7月には2級建築士資格の一次試験を、秋には製図の試験を受けるそうで、大学卒業後も知花さんの学びは続いています。
「大きなおなかで試験勉強することは大変ではあったのですが、せっかく卒業したので、忘れてしまわないうちにと思い、すぐに試験を受けることに。真剣に学ぶことには苦労もありますが、学ぶことって自分のためだけに使えるものすごく貴重な時間。自分への最大のご褒美なんじゃないかなと、30代になった今だからこそ、強く思うんです。私はちょうどコロナ禍と学びの期間が重なり、先が見えなくてしんどいなと思うこともあったのですが、学ぶことで将来もっと楽しくなるかもと希望が持てたことがよかったなと。40代の自分に投資している感覚があります」(知花くららさん)
今後についてはこんな展望や思いも。
「祖父が沖縄の小さな離島出身で、祖父から島の土地と家を譲り受けたので、どうしていくかが私の大きなテーマ。自然いっぱいの場所にまっさらなきれいな家を建てるのではなく、古民家の魅力を生かして、改築やデザイン面でのプロデュースに携わりたいなと思っています。
建築は未来に続いていくものなので、子どもたち世代に何を残していくのか、ということもよく考えます。これまで世界中を旅して見てきたこと、こうして今学んでいることを娘たちに伝えていきたい。子どもたちに誇れるかっこいい母になりたいという思いが、学びのベースにはあるのかもしれません。今はシングルキャリアの時代ではないと思うので、興味があることにはどんどん挑戦していきたい。これからの楽しいイメージが広がる学びなら、悩まずにトライしたいと思います」(知花くららさん)
CHIBANA’S
学び直しPHOTO
喫茶店で集中!
夫に時間をもらい、近所のカフェや喫茶店で集中して課題に取り組んだことも。
自宅での作業はここで
自宅の学習スペース。大きなパソコンのモニターと、製図を描く場所もしっかり確保。
徹夜でレポートのまとめ
レポートを書いていると、夜が明けてしまうこともしばしば。夫から夜食の差し入れが!
課題で制作した模型たち
建築科ということで模型作りはマストな課題。だんだん制作物も大きく。
卒業式は感無量!
今年3月に行われた卒業式には着物で参加。卒業制作が間に合ったことで安堵していたそう。
学び直しにまつわる Q&A
Q 勉強時間を作るコツは?
【A】 子どもを保育園に預けたら、3軒隣の喫茶店でお迎えまで勉強。移動時間もムダにせず勉強タイムに。
Q 勉強時間を作るために、あえてやめたこと
【A】 古筆が趣味で癒しの時間だったのですが、入学してから時間も余裕もなくできなくなりました。
Q 勉強に役立ったツールは?
【A】 最初はスケジュール管理アプリを使いましたが、結局大きな紙に手書きで予定を書いて壁に貼って夫と共有。アナログなものが使いやすかったです。
Q 息抜きにしていたことは?
【A】 レポートの締切が終わると、夫と好きなお店のビュッフェに行っておいしいものを食べる。銀座など街を歩くのも気分転換に。
Q 学びを続けるためのモチベーションは?
【A】 知らないことを知って、これまでとは違う視点で世界を見られることにワクワクする。子どもたちにかっこいい母の姿を見せたい!
イラストレーション/HARUKA HAYASAKA 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2021年9月7日発売LEE10月号『30代、40代からでも遅くない「もう一度、学校に行こう!」』の再掲載です。
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