ママ起業家のエネルギーはどこから湧くの?
親子で起業体験できるボードゲーム「コドモ社長vsオトナ社長」の企画・プロデュースを行ったブランコ・カンパニー株式会社(https://www.blancocompany.jp/)の市原真理子代表は、8歳と4歳の女の子のママ。長女の小学校ではPTA役員も引き受け、仕事、母親業とフル回転。
「子供にお母さんがやってる仕事を記憶に残るようにしたかった」と言うが、どこからエネルギーが生まれるのか。源になったのは、3歳の時に母をガンで亡くしたことにあった。
「私は、自分のお母さんってどういう人かって、父に聞いてもわからないんですね。保育園の園長先生だったらしいんですが、どういう思いで働いていたのか、なぜ保育の仕事を選んだのか、すごく聞いてみたかったです。『話を聞けたらよかった』って」
幼い真理子さんを残して43歳で逝った母。どれだけ生きて娘の成長を見守りたかったか、どれだけ悔しかっただろうか。自分が母となり、娘を持つと、幼い子供を残して旅立った母の気持ちが痛いほどわかるようになった。
「母は43歳で亡くなってるんですが、実は、私が今43歳。ここ1、2年、母の年齢に近づくことで、もし人生があと1年しかなかったら、何をしたいのか?を強く考えるようになりました。そういうタイミングもあって、自分らしさ全開で働き、子供に何かを残すこと、にパワーが出ていました」
産休、育休を取れなかったベンチャー企業時代
中高時代は美術部に所属。もともとアート好き少女だった。
中央大学卒業後はものを作る仕事に憧れ「リクルート」へ。クリエイティブ職の契約社員としてインターネット事業部に配属され、インターネット制作に携わった。
その後「リクルート」出身者でが立ち上げたネットリサーチ会社「マクロミル」の創業メンバーに。5人でスタートした会社は急成長し、東証一部上場企業にもなった。10年ほど勤めたのち、長女出産。産後は1年半ほど専業主婦に。
「産んでみたら、子育ては予想以上に大変だった。あんまり産後の世界を知らなかったんです、こんなに自分の世界や時間がひっくり返ってしまうなんてって。当時のベンチャー企業では働きながら育てるイメージ湧かなくて、会社を辞めました。そしたら、今度は仕事を辞めたら保育園に申請すらできない。えー!もう、ずっと働けないの!?みたいな」
会社を辞めると社会との繋がりがなくなり、子供と自分だけの世界に。「この先どうしたらいいかわからなくなって、英会話スクールに通ったり金融の勉強をしたりして迷走しましたね・・・」。
「やっぱり働いている方が自分らしい」と、無認可保育園を探して子供を預け、再び、マーケティングデータのベンチャー立ち上げに参画。事業立ち上げがひと段落した頃に、次女を出産したが、「役員だったので、産休も育休もなかった。特殊な感じだけど、従業員じゃないからそういう制度はなく・・・」と産後すぐベビーシッターを雇ってスカイプで会議に参加。「スカイプで参加していても、やっぱり情報の乖離がどんどん出てきました。現場の情報がわからない。大事なポジションを担うのに、赤ちゃん抱えてスカイプは厳しいと実感しました」。
荒れる長女「2人育てる資質なかったのかな」
2人目が生まれてから、長女は妹に嫉妬し、「すごい荒れちゃった。結構激しくって、上の子も不安定だったし、2人目育児も初めてだしで、精神的に余裕がなくなった上に、仕事でもなかなか思うような役割が果たせない自分に焦ってしまった」。
当時夫もベンチャー企業勤務。子供の送り迎えをしてもらったことはなく、ほぼワンオペ状態では「仕事に対しても子育てに対しても、圧倒的に時間が足りなかった。2人、3人育てながら働いてるお母さんっているけど、今の自分には無理だわ・・・。2人育てる資質がなかったのかな?」。思い悩んだことで、思い切って働き方を変えることにした。
自分のペースで働くため会社を辞め、独立を決意し、2016年12月に株式会社ブランコ・カンパニーを設立。受託でのウェブサービス開発のディレクターやベンチャー企業の広報などの仕事を請け負う「ひとり社長」となった。
子供の成長に合わせた働き方という選択
その後、グラフィックデザイナーの末松朝樹さんとの出会いもあり、社員を雇うなら、ひとりではできなかったことに挑戦しよう、と、2018年秋にはウェブマガジンUZUZUをスタート。今年7月には自社商品としてボードゲームを作り、販売するという目標も叶えた。
働き方を変え、子供と向き合う時間を増やしたことで長女も精神的に落ち着きを取り戻し、日々が好転していった。
「私も育児と仕事の両立に長いこと悩んで、なかなか子供に向き合えなかったんです。子供に寄り添う時間も大事にしたい、でも仕事もしたい。 仕事を辞めたり、フリーになったり、落ち着いたらまた会社勤めもいい。子供の成長に合わせて、働き方が変えられるといいですよね。
娘たちの時代は、今よりもっと女性が働くのが当たり前になる。そのために、色んなスタイルを私が身をもって体験してる感じですね。(笑)
女性ってタイプが多様で、どういう生き方がその人らしいかってその人それぞれ。自分にフィットした過ごし方や働き方をして、その人が笑顔でいられるのが1番なんじゃないかなって今は思います」
11月23、24日には東京ビッグサイトで開催される「ゲームマーケット2019秋」に出展する。「そんなの売れるわけがない」とバッサリ切り捨てた長女は、いまや親子のゲーム体験会ではルールの説明役を買って出てくれたり、商品梱包・発送を手伝ってくれるよきサポーターだ。
親がハッピーであってこそ、子供もハッピーになれるもの。娘2人の成長に合わせた自分らしい働き方とはどういうものか。真理子さんの挑戦は続く。
「コドモ社長vsオトナ社長」公式HP https://uzuzu-mag.jp/boardgame
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田辺幸恵 Sachie Tanabe
ライター/ライフコーチ
1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。