TAKARAZUKA STAR|ココロの景色【SPECIAL】
【月組・彩海せらさん】「“石割桜”の美しく生命力にあふれた姿」【宝塚スター|ココロの景色】
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TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色
2025.04.17
あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

月組
彩海せらさん
彩海さんの忘れられない景色
「“石割桜”の美しく生命力にあふれた姿」
SERA AYAMI

SERA AYAMI・Profile
2016年、宝塚歌劇団に入団。雪組に配属され、その後、月組へ組替え。2度の新人公演を務め、昨年は初のバウホール公演主演も経験。実直に舞台と向き合い得た高い実力と、まばゆい輝きで観客を魅了する男役スター。
故郷や家族と過ごした時間が、
舞台に立つ私の“内側”を満たしてくれる
SERA AYAMI
「私は鹿児島県の桜島で生まれ育ちました。海で魚釣りをしたり、林でカブトムシを捕まえたり、外で遊ぶのが大好きな女の子で。雨が降ると土や草がプンと香り、火山が活動的になると灰の独特な匂いが漂ってくる……自然の豊かさを全身で感じながらスクスクと育ったんです」
大自然の中ではお転婆だけど、大勢の人の中では引っ込み思案。幼い頃の彩海さんは「人前に出るのが大好きな姉の後ろをついてまわるような女の子だった」そうです。
「姉がミュージカル教室に通い始めたときは、私と妹もまねして同じ教室へ。それをきっかけに舞台に興味を持ち観劇するように。実は、宝塚歌劇団との出会いもその流れで、教室の先生に誘われて観劇した雪組の『ベルサイユのばら』が、私の人生を大きく変えることになったんです」
そんな彩海さんの“ココロの景色”といえば岩手県盛岡市にある石割桜。初めての新人公演主演作となった『壬生義士伝』にも登場する、その桜が咲き誇る景色です。
「『壬生義士伝』の公演が決まったとき、作品に縁のある土地を旅しようと、組の仲間と訪れました。樹齢300年を超える桜が巨大な岩を割って伸びている、その姿はとても生命力にあふれていて。すでに満開時期を超えて葉桜になっていたのですが、それでも十分に美しく、その姿はまるで“どんな困難で苦しい状況であっても、誰もが花を咲かせることができるんだ”と、私に教えてくれているようでした」
感動に突き動かされるように撮った石割桜の写真。今は亡きお父様にその写真を送ったこともあるそうです。
「父が闘病しているときでした。石割桜からもらった力を父にも届けたかったですし、“私たちは大丈夫だよ”という思いも伝えたくて。好きなことをするのが一番だと、三姉妹をミュージカル教室に通わせ、私が宝塚音楽学校を受験したいと言ったときも応援してくれた……。いつだって家族のことを誰よりも思い支えてくれた父だからこそ、“どんな状況でも私たちは咲ける。石割桜のようにたくましく生きるから安心して”と、ちゃんと伝えたかったんです」
そんな石割桜もですが、「今も昔も“おかえり”と同じ姿で出迎えてくれる、故郷の桜島の風景」もまた、彩海さんにとって大切な“ココロの景色”です。
「役作りは“外側”を作る作業でもあって、演じ続けているとどこか自分が作り物になっていくような感覚に陥ることも。そんなとき、故郷や家族と過ごした時間を思い起こすと、“本来の自分”が戻ってきて“内側”が埋まるような感覚になるんです。芝居には人間力が必要だと言います。どんなに技術があっても、内側に演じる人の心がないと、お客様の心もきっと動かすことができない。だからこそ、私は“本来の自分”を取り戻せる時間を大切にしていて。休日は三姉妹で集まり自然豊かな場所へ遊びに行くことも。シートを敷いて、その上で本を読んだり昼寝をしたり。桜島での暮らしを思い出すようなその時間が、自然の中を駆け巡り舞台に恋焦がれていた“私”を呼び起こしてくれるのです」
LEEweb限定!
彩海せらさんに3つの質問!
1
宝塚の“好きな景色”を教えてください
1
誰もいない、稽古場
本稽古は、演出家の先生もいらっしゃって、先生が言ってくださる要望と自分のやりたいことを照らし合わせながら、どこか神経を張り詰めながら進んでいくのですが。本稽古後の稽古場では、失敗しようが、踊って転ぼうが、ひっくり返ろうが、自分のやりたいことを自分の好きなように練習することができる。その時間が私はとても好きなんです。昨年、バウホール公演の主演を務めさせていただいたときも課題が山積みだったので、最後のひとりになるまで稽古場で作品と向き合い続けました。たとえ、その日抱えている課題が解消されなくても、そこで自分と向き合い過ごした時間は、次の日の稽古にきっと繋がる。誰もいない、暗くなった稽古場が、明日の私を作るんです。
2
彩海せらさんはどんな人ですか?
2
自分の機嫌を自分でとるのが、わりと得意な人(笑)
もともと、人見知りで引っ込み思案な性格をしていたからでしょうか。外側よりも内側に自然と目がいくようになったと言いますか……。気づけば、自分の機嫌を自分で取るのがわりと得意になっていました(笑)。心にさざ波が立つような日は音楽を聴くように。聴くのは、自分が大好きなミュージカルの楽曲。自然に心が湧き立ち、幸せな気持ちになり、気持ちも和らいでいくんです。休日は歌のレッスンへ。「休みの日までレッスンをするなんて大変」と思う方もいるかもしれないですが、声を出すことは私にとっては一番のリフレッシュ。皆さんにとってのカラオケと同じような感覚なんです(笑)。時間があるときは大好きな本を読むことも。本は自分の頭の中ですベてを想像できる、さらには、すべての登場人物を頭の中で演じることもできるので。映画やドラマの何倍もの楽しみを私に届けてくれるんです。
3
男役10年目。今、どんな時期にいると感じていますか?
3
「やっとスタート地点に立ったね」という言葉に救われています
下級生の頃に見ていた男役10年目を迎えた上級生と今の自分の姿があまりにも違いすぎて……。9年目を迎えたころは「あと1年で10年になってしまう!」と、焦ったりもしたんです。でも、実際に10年目を迎えたときに「やっとスタート地点に立ったね」という言葉をいただいて。それまで「10年目には完璧でいなければいけない」と思っていたけれど、そうではないんだと教えてくれた、その言葉にはすごく救われました。
今は、恐れずにいろんなことに挑戦する時期のような気がしています。そもそも、私は頭で考えて「こうじゃなきゃ」を作り出してしまうタイプでもあるので。それを、これからは「こうしたい」に変えていきたい。不安で、怖くて、ぐっとつかんでしまっているものがあれば、それを一度、手放してみたい。もっと柔軟に、臆することなく、楽しみながら。もっともっと新しい自分に出会いたいなと思っています。

NEXT STAGE
王朝ロマン
『花の業平』~忍ぶの乱れ~
Takarazuka Spectacular
『PHOENIX RISING(フェニックス・ライジング)』
-IN THE MOONLIGHT―

恋の噂の絶えない平安の貴公子・在原業平と政敵の娘・高子のままならぬ恋。『伊勢物語』の世界を優艶に描き出す王朝絵巻。主演:鳳月杏 天紫珠李
4月28日、4月29日刈谷市総合文化センター アイリスを皮切りに5月27日まで全国9カ所にて公演
Staff Credit
撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2025年LEE5月号(4/7発売)「ココロの景色 vol.5 彩海せらさん」に掲載の記事です。
▼ 「ココロの景色」連載一覧はこちら

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