TAKARAZUKA STAR|ココロの景色
【宙組・瑠風 輝さん】「私の成長を見守り続ける、宝塚の武庫川と空」【宝塚スター|ココロの景色】
-
TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色
2025.05.15
あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

宙組
瑠風 輝さん
瑠風さんの忘れられない景色
「私の成長を見守り続ける、宝塚の武庫川と空」
HIKARU RUKAZE

HIKARU RUKAZE・Profile
2012年宝塚歌劇団に入団、宙組に配属。歌、芝居、ダンスの三拍子そろった実力で注目を集め、4度の新人公演主演、バウホール主演、東上公演主演を経験。8月1日付で星組へ組替え。新境地での活躍にも期待が高まる。
美しいものに心奪われている時間は
すべてを忘れて“無”になれるんです
HIKARU RUKAZE
「初めて宝塚歌劇団の舞台を観劇したのは東京宝塚劇場でした。演目は花組の『ファントム』。春野寿美礼さんの歌声が本当に素晴らしくて。その日以来、宝塚の虜になった私は何度も劇場に足を運ぶように。当日発売の立ち見券※を求め、始発の電車に乗って、寒い冬はカイロを握りしめながら、朝からチケット窓口に並んだこともありました」
東京宝塚劇場は瑠風さんの人生を変えた場所。今も劇場に立つと「あの頃の自分をふと思い出し、懐かしい気持ちになる瞬間もあるんです」と微笑(ほほえ)みます。
「気づけば、男役14年目。生まれ育った東京より宝塚市で暮らしている時間のほうが長くなりました。そんな私が宝塚音楽学校に入学してから眺め続けているのが武庫川(むこがわ)の景色です。川のほとりに建つ宝塚大劇場、阪急電車が通り、その背景には青い空と山々が広がる……あの景色が私はすごく好きで。川があると空が広くなるといいますか、陽が落ちる時間とか、宝塚の空は本当にきれいなんです」
美しい景色に心を奪われている時間は無になれる。「ぐるぐると頭の中を駆け巡る思いから離れ、心がリセットされるような感覚になるんです」と瑠風さんは続けます。
「東京に住んでいるときは空を見上げることなんてなかったのですが、今は空が大好きに。ハワイの海と空、鹿児島の桜島と空、飛行機内から撮った空……私のスマホのカメラロールは空の写真で埋め尽くされていて。でも、一番好きなのはやっぱり武庫川の空。宝塚大橋の向こう側に大きな虹がかかっている写真が私の一番のお気に入りなんです」
未熟な自分に落ち込んだ日も、稽古場で努力を重ねた日も、新人公演主演を任された驚きに心震わせたときも……武庫川は瑠風さんの成長をずっと見守り続けてきました。
「時間の経過とともに武庫川を眺める私の心も変化していきました。音楽学校時代や下級生時代は“きれいだなぁ”と思いながらもセカセカと通り過ぎていたのですが、今は歩調をゆるめて、大きな深呼吸なんてしてしまうんですよ。“ああ、今日もいい天気だ!”って(笑)。実は空のほかに好きになったものがもうひとつ。それはお花なんです。楽屋の化粧前にはいつも花を飾るようにしていて、それを眺めるとやっぱり余計なものが削ぎ落とされ心がリセットされる感覚になる。そんなふうに、美しいものを愛でることができるのはきっと、心に余裕ができたからなんでしょうね」
下級生時代、瑠風さんがよく口にしていたのが「もっと自信が欲しい」という言葉でした。経験を積み、確たる実力を身につけて堂々と舞台に立つ今、自信について尋ねると、返ってきたのは「自分が積み重ねてきたものを信じることはできるようになりました」という答えでした。
「昔はできなかったことが今はできるようになっている。その積み重ねがあるからこそ、新しい挑戦も“大丈夫”と楽しみながら向き合える。経験は血となり肉となっていく、今日の自分が明日の自分を作っていく、そう信じて……。この先も新しい経験を積み重ねていきたいと思っています」
※=現在、東京宝塚劇場では当日券の販売はありません
LEEweb限定!
瑠風輝さんに3つの質問!
1
瑠風輝さんはどんな人ですか?
1
自分の性格を一言で表現すると「おおらか」
私にも心にさざ波が立つようなときもあるのですが、人前ではめったにそれを出すことがなくて。先日、宝塚音楽学校の思い出話になったときも、一学年下の下級生からこんなことを言われました。「上級生から指導を受ける機会も多かったけれど、もえこさん(瑠風さんの愛称)は優しさがにじみ出ていた」と(笑)。それが上級生の姿として正しいのかどうかは謎ですが……下級生と接するのは今も昔もすごく好きです。普段から「こうしてみたらいいんじゃないか」「こうやってみたらもっと良くなるんじゃないか」と声をかけるように。下級生に目を向けていると、歌声が出るようになったり、お芝居が上手になっていったり、成長する姿を見ることができる。それがすごくうれしいんです。
また同時に、私自身の成長にも繋がると言いますか。例えば、新人公演でも、私のお役を演じる下級生に目を向け、役柄を客観的に見ることで「あ、こういうやり方もあるのか」と気付かされることもあります。助言は自分自身がきちんとしていないとできないものでもあるので。下級生に助言を届けるたび、自分自身も背筋が伸びるような気持ちになるんです。
2
休日はどのように過ごしていますか?
2
基本、寝ています(笑)
休日は完全にスイッチをオフにしたいので。外に出て動き回るよりも、ゆっくり、ゆったり、ボーッと家の中で過ごしたい。つまりは、アクティブにディズニーランドへ、とはならないタイプです(笑)。ドライブが好きなので、車を走らせることはあるのですが、そこで過ごす時間もまたゆったり。海に行って美しい景色を眺めたり、高速道路を走りながら目の前に広がる空を眺めたりして。
お昼過ぎまで寝て、ゆっくり起きて、カフェに行ってのんびり過ごす、そんな休日が私の理想です。心や体を休めてエネルギーをチャージしてくれる睡眠はすごく大事にしています。それだけに、枕にはこだわっているのですが、さすがに全国ツアーにまでは持って行けなくて。前回の全国ツアーではホテルの枕と毎晩バトル。「なんとか自分に合う形にならないか」と、こねくりまわしておりました(笑)。
3
8月1日付で宙組から星組へ組替え。今の心境を教えてください。
3
宙組で積み重ねてきたものを大事に抱え、星組での新しい経験を糧にもっと成長したい
組替えが発表されたのは『Razzle Dazzle』のお稽古中。初めての女役に挑戦している最中の出来事でした。そこで私は、「最後まで、自分の全てを出し切って、やり切れ」と言われているような気持ちに。宙組生としての最後の作品『ZORRO THE MUSICAL』は、ずんさん(桜木みなとさんの愛称)のトップスターお披露目公演です。それをしっかり支え、かつ宙組でいただける成長の機会を最後までしっかり手にして、星組へ向かえたらと思っています。
多少の不安もありますが、星組にはあり(次期・星組トップスター暁千星さん)をはじめ、同期がたくさんいるので。発表後はすぐに同期の皆に連絡。星組へ挨拶に行くときも皆がついてきてくれたんですよ(笑)。約14年、宙組の舞台で自分が“積み重ねてきたもの”を信じて……新しい場所でどんな経験をして、どんな成長ができるのか、今はすごく楽しみにしています。
ただ正直、宙組の舞台に立っている今はまだ実感がないんです。私よりも周りの方が実感しているようで。下級生たちも「瑠風さんと過ごせる時間がもう少ない」「瑠風さんがいなくなったらどうしよう」なんてしんみりしてしまって。でも、それはちょっとうれしくもありました。「ああ、みんなの中に私がいるんだな」「今までしてきたことがちゃんと伝わっているのかもしれないな」と。この関係性もまた、私が“積み重ねてきたもの”。大事にしていきたいと思っています。

NEXT STAGE
『ZORRO THE MUSICAL』
“Zorro-The Musical” is presented in association with Zorro USA LLC
Original Executive Producer-John Gertz

19世紀初頭のカリフォルニア。奔放な生活を送るディエゴのもとへ届く父の訃報と兄の暴政の報。彼は民衆を救うべく謎の男“ゾロ”に扮して故郷へ向かう。宙組新トップスター桜木みなとのお披露目公演 主演:桜木みなと、春乃さくら
6月14日〜7月3日 東急シアターオーブ
Staff Credit
撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2025年LEE6月号(5/7発売)「ココロの景色 vol.6 瑠風 輝さん」に掲載の記事です。
▼ 「ココロの景色」連載一覧はこちら

この連載コラムの新着記事
-
【月組・彩海せらさん】「“石割桜”の美しく生命力にあふれた姿」【宝塚スター|ココロの景色】
2025.04.17
-
【花組・希波らいとさん】「その時々、自分の心を映す劇場の客席」【宝塚スター|ココロの景色】
2025.03.20
-
【星組トップスター・礼 真琴さん】「パレードの大階段を一歩一歩降りながら眺める、最高に幸せな景色」【宝塚スター|ココロの景色】
2025.02.20
-
【雪組トップスター・朝美 絢さん】「生まれ育った街で何度も眺めた、夏の夕暮れの海」【宝塚スター|ココロの景色】
2024.12.19
-
【専科・瀬央ゆりあさん】「スペインで見た未完成のサグラダ・ファミリア」【宝塚スター|ココロの景色】
2024.11.21

この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。