少し前のことですが、「国民年金の強制徴収を拡大」という文字が新聞に載りました。所得が一定以上あるのに国民年金の保険料を払っていない人に対し、国はこれまでも督促状を送ったりして納付を求め、それでも応じないと最終的に財産差し押さえを行っていたのですが、その対象を所得300万円の人にまで下げるというのです。
その背景には年金保険料の納付率が約60%、つまり4割の人が納めていないという実態があります。年金保険料は、会社員の人は給料から厚生年金保険料が天引きされており、その妻である専業主婦または扶養の範囲で働く主婦は自分で保険料を払わなくてもすむ第三号被保険者になっています(その保険料は年金加入者全体で負担しています)。
しかし、20歳以上の学生や自営業の人などは、自分で払う必要があります(学生には特例制度あり)。会社員であっても、たとえば夫が会社を辞め、しばらく求職活動を行う場合は、国民年金に加入する手続きをして保険料を納めなくてはなりません。この場合は妻も第三号被保険者から外れてしまうので、妻も同じく手続きをして保険料を納める必要があります。こういう時に気づかず未納になってしまうケースもあるので、注意が必要です。
老後以外の、こんな困った時にも年金はもらえる
平成28年度の国民年金保険料は月1万6260円です。夫婦二人分だと毎月3万円以上の負担ですから、結構重いですよね。「どうせ年金なんてもらえないんじゃないの? 払うだけソンでは」という声も聞きますが、これまで私が取材してきた限りでは「もらえないことはない、ただ、老後資金としては足りないかもしれないし、受給できる年数は今より先になり、受け取る金額も減るだろう」というのが大方の意見です。
これを聞いて、「やっぱり払いたくない」と考えるのは、ちょっと待って。年金には、老後にもらえるお金以外にも、困った時に助かるお金があるのです。
一つは、障害年金。
年金加入者が病気やけがで働けなくなった時、申請し障害と認定されれば受け取れる年金です。現在、働けなくなる要因として増加しているのは精神的な疾患だと言われています。民間の保険ではほとんど保障されない精神的障害にも適用されるのは、とても助かる点です。
もう一つが遺族年金です。
年金加入者が亡くなった場合、その人によって生計を維持されていた配偶者や子供などに支給されます。どちらも、生活に困った時の公的セイフティーネットとして頼れるお金。でも、これらを受け取るには、年金保険料を一定期間きちんと納めている必要があるのです。遠い老後のお金だからと思って年金保険料を未納にしてしまうと、いざという時に受けられるはずのお金が受け取れないということに。収入の減少や失業などにより保険料を納めることが経済的に難しいときには、保険料免除・納付猶予という方法もあります。未納のままにせず、必ずこうした手続きをとりましょう。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。