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LIFE

LEE DAYS club clara

〜五感を研ぎ澄まし心地よく暮らすvol.56〜

モダニズム建築家・前川國男デザイン「埼玉会館」見学ツアーへ【LEE DAYS club clara】

  • LEE DAYS リーデイズ

2024.05.21

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名建築をたのしむTV番組『名建築で昼食を』に魅せられて

数年前に放送されていたTV番組『名建築で昼食を』が好きで、録画したものを時々見返しています。普段あまりTVは見ないほうなのですが、これはなぜかお気に入り。女優の池田エライザさんと俳優の田口トモロヲさんの名コンビによる「名建築」と「グルメ」を題材にしたドラマは、現存する古き良き日本の貴重な建築物(「山の上ホテル」や「自由学園明日館」「ホテルニューグランド」など個人的に好きな建物もたくさん登場しています)にまつわる誕生秘話や建築家の想い、時代背景や歴史などを一視聴者目線で知ることができ、毎回興味深い内容なのです。

またクラシカルな建物内でいただく昼食やお茶のシーンも毎回楽しみで、古くから大事に受け継がれてきたレシピに基づくメニューや銀食器が揃う美しいテーブルセッティングなど、至るところにちりばめられた胸キュンポイントが満載。関西編も含め、いつかお邪魔したいと手帳に記した建物リストもひとつやふたつではありません。

写真 東京のおいしい名建築さんぽ
このドラマ、甲斐みのりさんが綴るエッセイ本が原作本となっています。旅や建築・ホテル、そして美味しいもの……と様々なジャンルへの造詣が深い甲斐さんですが、甲斐さんの視点で綴られる文章から、行ってみたことはあるけど新たな魅力を再発見したり、今までとは違う見方でモノを見るきっかけになることもしばしば。

モダニズム建築の巨匠 前川國男の建築をめぐる見学ツアー@埼玉会館

そんな甲斐さんが名建築を紹介されているサイトで見つけたのが地元さいたまにある「埼玉会館」。ル・コルビュジエを師に建築を学んだ前川國男氏の設計によるもので、DOCOMOMO Japanによる「日本におけるモダン・ムーブメントの建築216選」にも選定されているそうです。

その埼玉会館の見学ツアーが年に数回開催されていることを建築好きな友人から聞いていたのですが、ちょうどタイミングよく春の見学ツアーがあり、参加してきました。

名建築をガイドで巡る

当日は少人数のグループに分かれ、「前川國男を知ろう!彩の国探検隊」のガイドさんが各グループにおひとり、引率してくださいました。

写真 ガイドさんの手作り資料
わたしが参加したグループの担当ガイドのHさんは、手作りの資料(こちらは前川オリジナルの打ち込みタイルの模型)も用意されていて、時折小出しにされるその資料からも「前川建築の魅力を知ってもらいたい」という熱意が伝わってきて、終始とても楽しい学びの時間となりました。

※今回の見学ツアー、写真撮影・記事掲載可とのことで、気になるスポットは遠慮なく写真に収めさせていただきました。また普段入ることのできない場所も見学することができ、とても貴重な体験となりました。建築とはどうあるべきなのか、前川イズムを含め、巨匠と呼ばれる所以を、様々な角度から掘り下げる見学ツアーの中でうかがい知ることができました。

市民に愛される建物とは

今回はぜひ自分だけのお気に入りポイントを見つけてくださいね、と事前に言われていたのですが、知れば知るほど、前川國男さんの建築に込められた想いに深く魅せられました。

写真 埼玉会館
「人間は儚い、だからこそ100年残るような永遠性のある建築、環境と建物が都市空間の中で溶け込み、みんなに長く愛される頑丈なもの」を目指し作られたのだとか。そのための様々な工夫を今回知ることができました。

埼玉会館は、前川國男が多く手掛けた市民が集う公共の建物のひとつで、東側に大ホール、西側に小ホールと会議棟を配し、その間にゆったりとした広場を配した造りになっています。市民の生活と環境を考えて、奇をてらわず、長く市民に愛される建物を目指したという点が何よりとても素敵だなぁと感じました。派手さや奇抜さは無くとも、知れば知るほどしみじみいいなぁと感じる、そんな建物でした。



これぞ前川スタイル。「打ち込みタイル」と「打ちっぱなしコンクリート」のコントラスト

建物の外壁には、前川建築の特徴である打ち込みタイル工法により、黄褐色のタイルで覆われています。自然の焼きムラがあるタイルと一部に垣間見られる打ちっ放しコンクリートとの絶妙な対比が前川建築らしさ。

写真 埼玉会館
逆Rの庇は埼玉会館の特色。小ホールの裏側から見た窓枠や打ちっぱなしコンクリートの外壁のデザインは、コルビュジエの影響も感じさせる。

タイルの色、質感にもこだわり、この会館は明るい色と釉薬で「都会風」に仕上げているそう。(対する東京都美術館や埼玉県立歴史と民俗の博物館は大きな公園の中にあり、自然に溶け込むよう、タイルは土や木の色に合わせ、釉薬はなし。そんな周辺環境に応じた工夫も新たな発見でした)

写真 埼玉会館
巾木のデザインも傾斜を持たせることで、汚れにくい工夫がなされているそう。細かな拘りが随所に!

贅沢な大ホール

そして現代の建築法ではもう作ることのできない、内装下地も仕上げもすべて木材で覆われた贅沢な大ホールへ。

写真 埼玉会館大ホール
美しい曲線美が随所に。音楽ホールとしての機能性にもかなりの拘りと工夫が感じられます。

客席の椅子は県花のサクラソウ柄、所々に大理石の小さなタイルも使われているのも素敵でした。

写真 埼玉会館大ホール
上:小さな大理石をはめ込んだ装飾。下:サクラソウを模したシートデザイン。

舞台裏も見学

写真 埼玉会館大ホール
今回特別に舞台にもあがらせてもらいました!大舞台に立つだけで気分が高揚しました。(歌ってもいいですよ~とのことでしたが、歌唱力に自信なく・笑)

仕上げ材も内装もすべてに木をふんだんに使った構造は現代の建築法では作れない、とても貴重なものなのだそうです。「音楽堂は一つの楽器でありましょう」とは前川國男氏のお言葉ですが、音の響きがぶつかり合わないように両側の拡散壁は、ヒダをずらして設計されています。このホールは音響家が選ぶ優良ホール100選に選ばれているのだとか。

わたし的お気に入りポイント4つ!

1:オリジナルデザインの照明あれこれ

写真 埼玉会館の照明

上:ホールにある豪奢なシャンデリア  左下:今は無き電話ボックスの跡地の照明  右下:天井のランダムな配置のライトは星空のよう。全体的にとても落ち着いた雰囲気と温かみを感じる空間が印象的でした。 

2:なぜか心躍る階段

名建築と呼ぶにふさわしいホール内の階段手すりの美しいアームや、がっしりとした質感。素敵!とみなさん写真に収めていらっしゃいました。

写真 埼玉会館 螺旋階段
掴みやすさ、手触りの良さも実感しました。

3:前川カラーのオリジナル家具

館内の所々に散りばめられたオリジナル家具。家具も建物の大事な一部と考え、オリジナルのデザインで作られているそうです。前川カラーは独特の色合いながら、空間に彩りを添える名わき役だと感じました。

写真 埼玉会館 前川カラーのオリジナル家具
左上:様々な色合いのローチェア 右上:空気孔隠しも同系色でまとめて 下:ホワイエのカラフルな壁の色はコンクリートとの対比が印象的でした。

4:エスプラナード

エスプラナードは、フランス語では広場+散策路の意味を持ち、憩いの場になっています。建物の60%が地下にあり、その分、地上に散歩道など広く設けたことで、コンサートから帰る人の流れに流動性を持たせた動線を考えているそう。なるほどです。

写真 埼玉会館のエスプロナード
広場の椅子でお昼を食べている方も。市民の憩いの場として地域に溶け込んでいますね。またスツールの座面と会館のタイルの色を合わせているのもポイントだそうです。

特にエスプラナードの床タイル模様は1年もの時間を費やし、手書きで繊細な設計書から生み出されたといいます。2色のタイルで作られる模様は、建物の上から覗くとまるでお花のような形が浮かび上がっていました。

時代に合わせたマイナーチェンジ

また、「建築家は産みの親であり、育ての親である」の精神のもと、竣工後10年間は施工者や設計者と管理者が、一年ごとに振り返りをしていたと言うから驚きです。「不易流行」を掲げ、前川イズムを引き継いだ弟子たちが、「ずっと変わらず大事にし続けていくもの」と「時代にあわせて変えていくこと」を話し合い、マイナーチェンジをしている点も、長く愛される所以なのだなぁと感心しました。

写真 埼玉会館
存在感のある柱、もともとはむき出しのコンクリートでしたが、欅の木で周りを覆うことで印象がだいぶ変わります。

今回、大ホールを丁寧にガイドしていただいたおかげで、今後は今までとは違う目線で大ホールを見られそうな気がします。きっとどの施設にも建築家や施工者の想いが込められているのですよね。

埼玉会館は夏には夜間ツアーがあるそうなので、建築の魅力を違う側面からまた体感してみたいと思います。身近にある名建築を巡るお散歩、次はどこに行こうかな。

*次回、埼玉会館の夜間ツアーは7月6日(土)を予定しています。また、年間の開催予定はこちらをごらんください。

おまけ:名建築見学のあと、純喫茶へ立ち寄りました

こちらも甲斐さんが紹介されていた喫茶店「恵比寿屋喫茶店」に立ち寄りました。喫茶店らしいメニューがたくさんあり迷いましたが、「タマゴサンド」とカフェラテを注文。(名物は銅板でひとつずつ丁寧に焼く「ホットケーキ」だそうです♡)注文を受けてから作られるサンドイッチは、少し甘めの味付けのふわふわタマゴがたっぷりサンドされ、とっても美味しかったです♡

写真 恵比寿屋喫茶店
LEE DAYS club clala

clara

48歳 / 埼玉県 事務職

フルタイムワーカー。夫と2人の子ども、猫(♂)との暮らし。自分に必要なものをその時々で取捨選択し、日々心穏やかに過ごせるよう心がけています。ひと手間かかっても五感を満たしてくれるもの、丁寧に作られたものを好みます。

文字:LEE DAYS club LEE100人隊OGが愛着ある日々を更新中!リレー連載

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LEEとともに歩んできて、子育てが一段落。自分に目を向ける余裕の出てきたLEEの姉世代の方に、日々の“ほんとうに好きなものと心ときめく時間”をお届けします。

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