アメリカの児童文学作家ノーマン・ブリッドウェルの原作『クリフォード おおきな おおきな あかい いぬ』を実写映画化。一晩で3mになってしまった赤い子犬がニューヨークで大騒動を巻き起こすハートウォーミングな物語『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』が公開されます。
赤くて大きい、個性の塊とも言える一匹の犬をどうやって守ればいいのか。それは生き物、人種、ジェンダーなど、多岐に渡る多様性や個性とどのように共存していくかにもつながります。「ありえない!」と思える対象をどう受け入れるのか、そんな考えの導きにもなるような笑いあり感動ありの本作は、ぜひお子さんと一緒に楽しんで欲しい映画です。
本作で、頭は良いけれどクラスメイトとうまくやれない主人公エミリーを支える友人、オーウェンの吹き替えを担当するのが声優の三森すずこさんです。三森さんに作品の見どころやオーウェン役の思い出、声優という仕事の醍醐味、夢を実現するためのポイントを聞きました。最近では将来の夢に「声優」を上げる小学生も増えている中、三森さんはどんな風に声優へとたどり着いたのでしょうか。
三森すずこ●1986年、東京都生まれ。高校時代からミュージカル部に所属し、卒業後はミュージカル女優に。2010年に声優デビュー。主な出演作に『探偵オペラ ミルキィホームズ』のシャーロック(2010年)、『カードファイト!! ヴァンガード』のコーリン(2011年)、『キラッとプリ☆チャン』(2018年)白鳥アンジュ、『ヒーリングっど♥プリキュア』の風鈴アスミ(キュアアース)(2020年)など。声優ユニット「ミルキィホームズ」のメンバーとしても活躍中
賢くて優しい男の子、オーウェン役を好演。大人っぽく背伸びしているお茶目さを表現したい
—まずは、演じたオーウェン役について聞かせてください。三森さんにオーウェンはどんな風に映りましたか。
オーウェンはとにかく優しくて賢い男の子です。エミリーのことが好きだからかもしれないけれど、ちょっと背伸びしている感じがかわいいんです。学校でエミリーがイジメられている時も見捨てることなく、同じ目線に立って分け隔てなく接しているところが素敵だなと思います。さりげなくサポートをしてくれるところにぐっときますね。大人っぽい自分を演じているものの、父親との会話から幼い自分がバレちゃったときの対応も、お茶目でかわいくて。そんな部分をお芝居に合わせて出せたらいいなと思いました。
—好きな女の子ために背伸びしている男の子というがかわいいですよね。オーウェンのセリフで印象的だったもの、好きなセリフはありますか。
エミリーのおじさん・ケイシーと一緒に学校に忍び込んで、データを盗もうとパソコンに向かいながら「仕事中」と言うシーンが好きですね。大人っぽくしているのに、スポンジ・ボブのUSBを挿しているのがかわいいんです(笑)。オーウェンのセリフではないのですが、最後にエミリーが集まった人たちの前で演説をするシーンも印象的でしたね。見た目だけで判断しない、個性を認めてあげよう、そうすることで素敵な世界になるんだ、と訴えます。犬のクリフォードは大きくて赤くて、エミリーも学校でいじめられていて。ひょっとしたらオーウェンもアジア人の男の子ということで、嫌な思いをしたことがあるかもしれない。子供目線から個性を認めよう、それを楽しく、難しく考えずに伝えているのが素敵だと思います。
実家では13歳のポメラニアンと過ごす愛犬家。小さい時も大きくなっても、どっちもかわいい
—クリフォードが3mになっても、エミリーは同じように愛情を注ぎます。三森さんも犬好きだとお聞きしましたが、三森さんにとって犬はどんな存在ですか。
みんなそうかもしれませんが、家族そのものです。実家で白いポメラニアンを飼っていて、今13歳なんです。子犬の時は、まあ小さくて可愛くて、お腹の上に乗せていたら勝手に寝ちゃうんですよ。当時は妹みたいな存在でしたが、最近は年齢を考えるとおばあちゃんみたいな感じで。前の「遊ぼ!遊ぼ!」とエネルギッシュな感じとは違って、帰っても横目でチラッとこっちを見るだけ。お気に入りの場所はソファなんですけど、そこに一緒に座って!と、わんわん吠えて指示してくるんです。それで座ってあげると、お尻をくっつけて寝るんです。本当にかわいいですね。彼女なら、もし3mになっても愛せそうだなと思います。
—エミリーにとって、クリフォードが人生の大きな支えになりました。三森さんは幼少期に生き物に救われた経験、生き物から学んだことはありますか。
子供の頃、うちに猫が10匹くらいいたんです。祖父が猫好きで拾ってきたら、増えてしまって。外にも自由に出られるような放任の猫だったので、あまり私に懐かなかったんです。それでも10匹中何匹かは家にずっといて、少しは慣れたりもして。小学校3年生くらいの時に最後の1匹が亡くなった時は、すごく悲しかったです。心にぽっかり穴が空いて。妹と一緒に庭にお墓を作って埋めてあげました。命って亡くなるんだ、もっと構ってあげられたら良かった、もっと遊んであげれば良かったと後悔しましたね。残された猫の餌入れを見て、これがもう必要なくなるんだとも思って、寂しくなったのを今も覚えています。
SNSのキラキラした生活を見るのが辛くなったら、スマホをやめて、日々の充実ぶりを楽しむ
—エミリーは最後に大きな声でみんなの前でスピーチします。三森さんも今大勢の前で「主張したい!」ということはありますか。
うーん、そうですね。SNSを見ていると、みんなの生活がキラキラしているように見えてしまいますが、冷静に考えると自分の生活も素晴らしいものだな、と。キラキラした風に切り取るのが苦手なだけなのかなと。人とつい比べてしまうんですよね。でも、自分の生活や人生を楽しんでいれば、それでいいんじゃないかと思います。人と比べ、引け目を感じてしまったりすることは必要なく、ポジティブに生きていた方がお得だよ!というのを主張したいです。私も落ち込んだ時には、SNSを見ないようにしたり、スマホ自体を見ないように封印したりします。そのかわりに家族と会話したり、好きなドラマや映画を見て、美味しいものを食べて、「お、すごい充実してるじゃん!」と。満たされていると感じられればいいと思っています。
—エミリーは、クリフォードを一目見て気に入り、家族に迎えようとします。三森さんは、最近一目惚れしたものはありますか。
シルバーのスカートです。銀色でギラギラ光っていて、Aラインでテロっとした生地だから、私は「サバ」って呼んでるんですけど(笑)。昔は個性的な服もよく着ていたんですけど、最近は無難な服を選ぶことが多かったんです。冬服を買わなきゃと思ってお店に行ったら、たまたまそのスカートが目に入って。一体どこに着ていくんだろう?と思ったのですが、これは買うしかない!と思って、買いました。まだ履いていないんですけど、ある日突然履いてくると思います(笑)。お楽しみに!
—-映画のどんな部分を楽しんで欲しいですか。これから映画を見る人にメッセージをお願いします。
もちろん子供が楽しめる映画ではありますが、大人が見ても楽しめる作品になっていると思います。声優のお仕事でも、大人向けの作品がわりと多かったりするんですが、この映画は、子供がより楽しく見られると思います。あと、ドタバタ劇がすごく面白いのでそれも楽しめるポイントです。クリフォードを守るために、街の人や近所の人が助け合って策を練って協力する姿もいいですよね。ぜひ親子で、もちろん大人だけでも楽しめると思いますので、ぜひ楽しんでください。
バレエに夢中だった小学生。その後、宝塚を目指すも断念し、ミュージカル俳優の道へ
—-現在、声優として活躍中の三森さん。声優は今や小学生が憧れる人気職業の一つでもありますが、小さい頃はどんなお子さんでしたか。
小学生の時はずっとバレエを習っていて、バレリーナになりたかったんです。当時はアニメもそれほど見ていたわけでもなくて。中学生になったら、ミュージカル女優、俳優になりたいと思うようになりました。そこでレッスンをいろいろ受けるようになったのですが、そんな時、宝塚歌劇を見て「私もやりたい!」と思い、宝塚音楽学校を目指すようになりました。私は、そんなに勉強が好きじゃなかったこともあり、受験して合格したら、毎日芸事だけができる!と思って。残念ながら合格はできませんでしたが、高校ではミュージカル部に入り、卒業後も舞台で仕事をするようになりました。
—-最初は、舞台女優から始まったんですね。舞台やミュージカルは、声優の仕事とは全く違うように見えますが、どんな部分が面白いですか。
ミュージカルは歌とダンスと芝居、三つ巴で進んでいくのが面白いし、舞台は、目の前で人が踊ったり歌ったりする。生のパワーをもらえるのが大きいと思います。「こんなに歌がうまい人がいるんだ!」と圧倒されることも良くあります。作品も、重いテーマからポップなものまでいろいろあって、舞台はだいたい1カ月くらい公演期間があるものが多いんです。稽古期間も長かったりして、同じ出演者さんと一つのカンパニーになって過ごす時間も本当に好きですね。舞台の仕事が始まると毎日が同じことの繰り返しなんだけど、どんどん自分が上達していく。その過程がすごく好きなんですよね。
声優を始めたきっかけは「演技の勉強をしたいから」。毎日違う役ができるからメリハリがあって面白い
—-声優の仕事を始めたきっかけを教えてください。舞台やミュージカルと声優は少し遠いイメージもありますが。
私の出ていた舞台を、たまたま今の事務所の社長が見にきてくれて。今の事務所は声優が多く所属している事務所で、それがきっかけで仕事をするようになりました。それまで声優になろうと思ったことは一度も無かったんです。最初、声優の話をいただいた時も「お芝居の勉強になりそう」と思って、飛び込みました。そうしたら声優の仕事がだんだんと増えてきたんですよね。
—-声優の仕事の楽しさ、醍醐味は何ですか。
毎日違う現場で、毎日違う役ができることですね。舞台だと1カ月2カ月単位で同じ役に向き合って深めていく作業が楽しいですが、声優は毎日違う役が演じられて、現場によっては1人で何役か違う役を演じることもあり、それが面白いんです。さっきまですごく暗い役だったのに、夜にはすごくバカなことやる役だったり。その切り替えが、メリハリがあって面白いですね。
—-声優の仕事をするようになって、初めて知ったことはありますか。声優にはどんな資質が必要だと思いますか。
舞台では毎日リハーサルをするんですけど、声優はアフレコの素材をまず先にいただいてそれを家で見て練習をして。当日現場に行ったらテスト1回で、すぐに本番なんです。基本的にほぼ1回で録るので、それに驚きました。そのスピード感にびっくりしましたね。練習はしていても、掛け合いがある時は、相手がどんな風にセリフを行ってくるか分からない。あと、監督から「こんな風にしてください」とか、自分のプランとは違うリクエストをされることもあります。そういう時に、自分の練習してきたことを1回手放して柔軟に対応できる力と、すぐに切り替えて行動できる瞬発力が必要なのかなと思います。
「好き」を深めること、エンタメのアンテナを敏感に。自分なりの一芸、個性や得意分野があると強い
小説を読んだり、映画を見たり、自分の好きを深めていくことも必要ですし、そうやって自分のエンタメアンテナを敏感にするのも大事ですね。どうしたらこの役を深められるかと悩んだ時は、「あのドラマのあの役」「あの小説のあの登場人物」を参考にしてみることはあります。自分の中で役のマップを作るイメージですね。あとは、人が今どんなものを見たいか、どんなものが求められているかをチェックしています。
—-声優に憧れている子どもたち、声優を仕事にしたいと思っている人にアドバイスをください。
すごくラッキーだったのは、ちょうど私が声優を始めさせて頂いた頃から、声優として歌ったり、踊ったりする機会が増えたんです。だから、それまで私がやってきた歌やダンスのレッスンが活かされました。今、声優と言ってもいろいろな仕事があって、特に若いうちは歌ったり踊ったり、演技面だけでなく、いろいろな面での魅せ方が必要とされます。だから何か一芸、人とは違う個性や得意分野があるといいんじゃないかと思います。
撮影/山崎ユミ
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『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』公式サイト
監督:ウォルト・ベッカー
出演:ジャック・ホワイトホール、ダービー・キャンプ、トニー・ヘイル、アイザック・ワン、ジョン・クリーズ、シエンナ・ギロリー他
声の出演:花澤香菜、三森すずこ、金丸淳一、諏訪部順一
1月21日(金)より全国ロードショー
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武田由紀子 Yukiko Takeda
編集者・ライター
1978年、富山県生まれ。出版社や編集プロダクション勤務、WEBメディア運営を経てフリーに。子育て雑誌やブランドカタログの編集・ライティングほか、映画関連のインタビューやコラム執筆などを担当。夫、10歳娘&7歳息子の4人暮らし。