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妊婦さんだって「新型コロナワクチン」は接種できます!【宋美玄さんの聴く婦人科診察室#10】

  • 宋 美玄

2021.09.03

  • 音声

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今週も産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載「宋美玄さんの聴く婦人科診察室」の時間がやってきました! 女性ならではの心や体のお悩みを解決したり、性にまつわる最新事情を解説したりと、充実の内容でお送りします。今回は月に一度の時事トークです。新型コロナウィルスに感染した妊婦さんが自宅で産気づいたものの、受け入れ先の病院が見つからず、自宅で出産して赤ちゃんは亡くなるという痛ましいニュース。きっと多くのLEE読者にも衝撃を与えたと予想されます。妊婦をとりまくワクチン接種やコロナ感染の現状を宋さんが解説します。

接種NGだった妊婦さんや授乳中の方も問い合わせを

デルタ株の蔓延で収まる気配のないコロナ禍。近頃「ワクチン打った?」が挨拶代わりの言葉になっている読者も多いのではないでしょうか。宋さんのクリニックでもワクチン接種を行っています。職域接種や自治体の接種で「妊婦・授乳中はNG」と接種を断られたり、自治体でなかなか接種予約が取れない妊婦さんが連日多数いらっしゃるそう。

宋さんが多くの妊婦がワクチン接種を断られている現状と、妊婦がワクチン接種しても問題ないことをツイートしたところ、おおいにバズり方々に拡散されました。それが河野太郎新型コロナウィルス感染症ワクチン接種推進担当大臣の側近の目に留まり河野大臣本人まで届いたようで、関係各所に「妊婦もワクチン接種の優先接種対象に」という通達が出されるに至りました。

方針を見直す自治体も出てくると予想されるので、もしこれまでは接種NGだったという妊婦さんや授乳中の方も、諦めず今一度問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。

日本の産婦人科ならではの特殊事情

日本には個人経営や小規模の産婦人科がとても多く、このような産婦人科をかかりつけにしている妊婦さんが多いという現状があります。しかし設備や動線の確保の難しさ、小規模ゆえ院内感染を防ぐのが困難……といった理由から、小規模の産婦人科でコロナ患者を受け入れることは難しくなっています。前述のニュースは、このような日本の産婦人科ならではの特殊事情ゆえ起こってしまったのではないか、と宋さんは分析します。

宋美玄さん10

「ここまで感染爆発してしまったのは、もちろんデルタ株が生まれてしまった不運も要因ではありますけど、これまでの緊急事態宣言が骨抜きになり過ぎてしまい、全く効き目がない状況を作った行政の責任だと思います。私が医療従事者だからフラットな見方をできないのかもしれませんが……。日本は病床数めっちゃ多いんですけど、医療従事者数がめっちゃ少ないので、どこの医療機関も150%頑張っているけど、連日多数の感染者が出ている状況ではそれを受け入れ切れなくなってしまうのが当然で……」(宋さん)

妊婦の感染者の8割はパートナー経由

出来たばかりの未知のワクチンということもあり、接種したら胎児に悪影響があるのではないか……と妊婦が不安を感じるのは当然。このように不安に囚われてワクチン接種に踏み切れない妊婦さんも少なくありません。

しかし宋さんは「接種しても流産率は上がりません。接種後の副反応で発熱してもアセトアミノフェン(解熱剤)なら妊娠中・授乳中でも服用できます。分子生物学的メカニズムを考慮すると、接種後腕の中で壊れ胎盤や胎児まで届くことはまずあり得ませんので、ぜひ接種してください」と言います。

また、本人だけでなく、同居しているパートナーも感染対策をしっかりすることが大事。妊婦の感染者の8割はパートナー経由の家庭内感染だといいます。読者の皆様もどうかお気をつけてお過ごしください。

(次回は9月10日(金)18時配信です、どうぞお楽しみに!)



宋美玄さんへの質問を大募集!

宋さんへのご質問や番組へのご感想は、専用メールアドレス(fujinka@lee.hpplus.jp)宛にお送りください。


イラスト/鹿又きょうこ

宋 美玄 Song Mihyon

産婦人科医

セックスや女性の性などについて、女医の立場からの積極的な啓蒙活動を行う。メディア出演や著書多数。'17年、丸の内の森レディースクリニックを開業。https://www.moricli.jp/

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