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フェムテックって何ですか? 産婦人科医・宋美玄さんオススメのアイテムは?【聴く婦人科診察室#1】

  • 宋 美玄

2021.07.02

  • 音声

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産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載。女性ならではの心や体のお悩みを解決したり、性にまつわる最新事情を解説したりと、充実の内容でお届けします。今回は「フェムテックって何ですか? 色々なアイテムがあるようですが、一体何から手を出していいのかわかりません」というお悩みにお答えします!

2020年は日本における「フェムテック元年」

宋美玄さんの聴く婦人科診察室1

「フェムテック」とは、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品やサービスのこと。ただし海外では「ヘルステック」(性別にかかわらず、健康の課題をテクノロジーで解決する商品やサービス)という言葉のほうが一般的です。

2020年は日本における「フェムテック元年」とも言われ、企業がフェムテックアイテムを多数リリースし、フェムテックを盛り上げるイベントが度々開催されました。女性の健康の分野は解決すべき課題が多いこともあり、現在も引き続き各方面から熱い視線を向けられています。

「布ナプキンを使うと生理痛が軽くなる」は噓

「10年前はテクノロジーよりも、『より自然であること』に価値を見いだしているメディアやインフルエンサーの方が多かった。例えば畳の上や水中で出産したり、田舎暮らしをして自然に近い環境で産んだり……といった出産スタイルが『私らしい出産』などと言われていましたよね」と宋さんは振り返ります。

生理についても「昔の女性は膣の中に経血を溜めて、トイレなどでまとめて出していた」「オーガニックな布ナプキンを使うと生理痛が軽くなる」「布ナプキンを使うと子宮の病気が治る」といった嘘が、まことしやかに語られてしまったり……。便利なものに囲まれ生物としては不自然なライフスタイルを送っていることへの引け目からか、人々のナチュラル指向が高まっていた時期でした。

「フェムテック」知らない読者が8割超

しかしここ数年は「出産の陣痛には意味がない、だから無痛分娩が良い」など「楽に、快適にできるなら」と、テクノロジーを積極的に取り入れていく傾向が。経血が付いた布ナプキンを専用のホーロー容器につけ置きしお風呂場で手洗いすることから、月経カップに溜まった経血を捨てるだけに。そういった変化を宋さんは肯定的に捉え、面白いと思っているそう。

LEEの最新読者アンケートでは「『フェムテック』という言葉を知らない」という回答が8割以上でした。使ってみたいフェムテックアイテムについての質問事項でも「特にフェムテックを取り入れたいと思わない」という回答が約3割、という結果に。



宋さんの一押しは月経カップ

とは言え「どんなフェムテックアイテムを取り入れたら、快適に過ごせるようになるのか知りたい!」と思っている読者も多いのではないでしょうか。宋さんのオススメは月経カップと、近頃大流行の月経用吸水ショーツ、そしてデリケートゾーン用ケアアイテム。

宋さんは5年以上前から「まともに生理がない」状態。妊活をしていない時期は毎月生理が来る必要がないので、医療の力で生理が来ない状態にしています。ですので宋さんの体験談は第2子妊活以前の話になりますが、その頃に月経カップを使っていました。

月経カップを海外から個人輸入、便利さに感動!

現在では日本製の月経カップも発売され種類も多いですが、当時月経カップは日本未承認の医療器具という扱いだったので、Amazon経由で海外から個人輸入したという宋さん。使ってみてその便利さに感動。パッケージに「あなたの生理中にBreeze(そよ風)が吹きます」といったキャッチコピーが書かれており、本当にその通り!と思ったといいます。

「多分女性ならみんなわかると思うけど、ナプキンをパンツにくっつけてデリケートゾーンを覆っている、あのなんとも嫌な感じが全くない。そして生理が終わった後の『もうナプキンを着けなくてもいいんだ……!』という爽快感が生理中もずっと続くんです」(宋先生)

生理中を快適に過ごすことはQOL向上につながる

LEE Webで最初に月経カップを取り上げたのは、2018年7月に国産の月経カップ「ローズカップ」を紹介する記事。「デリケートゾーン」という便利な言葉もありますが、多くの日本人女性は自分の外性器内性器をものすごくタブー視しています。自分の身体なのに、膣にタンポンや月経カップを挿入することに対しての心理的ハードルがものすごく高い、医師やパートナーには膣を触られる機会があるのに自分で触るのが怖い、という女性が少なくありません。

しかし、生理中を快適に過ごすことはQOL(生活の質)の向上につながります。自分の身体は自分で管理し、怖がらずに積極的に月経カップをはじめとするフェムテックアイテムを取り入れる女性が増えればいいのですが、と宋さん。

月経カップは人工肛門や医療用チューブと同じ医療器具

「月経カップはどんな形状ですか?」という質問には、宋さんはいつも「シリコンでできたおちょこみたいなもの」と答えるそう。おちょこ部分をを潰して膣に入れると、潰していた部分が膣内で拡がってフィットし、その中に経血を溜め続けます。

「インターネット上などで『こんな小さいものじゃ私の経血は収まりません』といったコメントをよく見かけますが、月経カップから溢れるほどの経血量は過多月経なので、ぜひ一度婦人科に行って生理を減らすような治療を受けてください。『汚い』というコメントも少なくありませんが、月経カップは人工肛門や鼻から入れる医療用チューブなどと同じく医療器具ですので、安心して使っていただけます」(宋さん)

タンポンやナプキンは、時間が経つと経血が酸化して臭いが気になりますが、月経カップはシリコン製で、経血が空気に触れにくく酸化もしにくく、臭いも気になりにくい。そして繰り返し使えるので地球に優しい。エコな上に快適なんです。

月経用吸水ショーツは自分なりに使い方を工夫して

一方、月経カップよりも先に、月経用吸水ショーツを試してみたというLEE Webプロデューサーの畑江。デザイン製の高いオシャレなもの、普通の下着とあまり変わらない感覚で気軽に使える薄手のもの、経血量が多い日にも使えるもの、計3種類を購入し試してみました。一度、生理中を吸水ショーツのみで過ごしてみての結論は「全部を吸水ショーツにお任せするのはちょっと厳しいかな」。

普段はタンポン派で、多い日にはナプキンとの併用スタイルの畑江は「タンポンと吸水ショーツを併用すればナプキンを使わずに済むし、安心感もある」と、併用を推奨。また、生理が来そうなときや終わりかけにオシャレな吸水ショーツを履いていれば、ナプキンがデリケートゾーンに張り付くことの不快感を解消できる上に、テンションも上がります。他のアイテムとの併用など、自分なりに使い方を工夫して、快適な使い方を模索してみるのが良さそうです。

「ただ、月経用吸水ショーツは現状、初期費用が高過ぎますね」と宋さん。洗って繰り返し使える点は高評価ですが、決して安いものではないので、『生理の貧困』の当事者である若い女性にはハードルが高いかもしれません。

宋美玄さんへの質問を大募集!

宋さんへの質問や番組へのご感想は、専用メールアドレス(fujinka@lee.hpplus.jp)宛にお送りください。


イラスト/鹿又きょうこ

宋 美玄 Song Mihyon

産婦人科医

セックスや女性の性などについて、女医の立場からの積極的な啓蒙活動を行う。メディア出演や著書多数。'17年、丸の内の森レディースクリニックを開業。https://www.moricli.jp/

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