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山田孝之さん「亡き妻のことを思い続ける撮影期間は本当につらかった!」

2020.04.02

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音楽、実業、製作など活動のフィールドは多岐にわたり、俳優としては“怪優”と呼ぶにふさわしい演技で観る者を圧倒する山田孝之さんが、久々に等身大の男性に! 主演映画『ステップ』で、結婚3年目で妻に先立たれ、シングルファザーになる健一を演じた。

山田孝之さん
亡き妻のことを思い続ける撮影期間は本当につらかった!

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「妻を喪う、娘を育てる。どちらも自分には経験がない。単純にそれがオファーを受けた理由であると同時に、これはやるべき作品だとも思って。もちろんテンションの持っていき方は違いますが、どんな役でもやることは一緒なんです。……いや、ウシジマ(『闇金ウシジマくん』シリーズ)以外。物体のようにそれがないウシジマと違い、健一もほかの役もすべて感情を作っていく作業は同じなので」

『全裸監督』や『勇者ヨシヒコ』と、健一の役作りが同じ区分とは驚き! では今回、どのように感情を作っていったのだろうか。

「とにかく妻のことを考え、思い続ける。そうすると常に僕の視界の中には妻がいる状態になり、娘のことを報告したり、生意気な様子に苦笑し合えたりするんです。今も僕の中にまだ健一の感覚が残っているので、僕には妻の姿がここでも実際に見えますよ。でも、そんな約1カ月の撮影期間中は、ずっと妻の死と向き合う状態だったので、もう嫌になるほどメチャクチャつらかったです」

幼い娘を抱え、仕事をしながら育児に家事に奔走する健一の姿は、本当に大変そう! でもそこに思わず共感する人は、多いだろう。

「健一は優しい人に囲まれていますが、いわゆる“みんな優しくて心温まる感動物語”になるのは違うだろう、と僕は思いました。喪失感の中で、女の子のことがわからずいろいろうまくいかず、でも自分の子どもだから育てていかなければならない。助けてくれよ、本当に、と普通はなりますよね。きれいごとで済ますのはよくないと思ったし、リアルな共感を得るためにも、“グズってないで早くしてくれ!”と言いたくなる健一のイラつきを、きちんと出すことを意識しました。頭で考えず、常に心で状況に向き合って演じました」

そんな幼かった娘が対等な口をきいたり、生意気になったり。父と娘の関係性の変化がほほえましく、それにまつわる展開に胸を打たれる! 本作で“シングルファザー”を疑似体験された山田さん自身には、何か変化は生じただろうか。

「子どもに対する感覚は変わりませんが、妻に対しては……感謝です。こんな大事なことをずっとやってくれているんだ、と。だからちょっと皿を洗っておこうかな、程度のささいな変化は起きました。でもそれ自体、相手を考える時間が増えたということ。それが大事だし、この映画を観た方々も、そうなってくれたらこの映画をやった意味があるな、と思います」

実際はひとりの男の子のパパだが、すべてにおいてユニークな山田さんのことだから、子育てだって相当ユニークに違いない。

「最初から男の子ひとりにすべてを注ぎ、おもしろいヤツに育てようと決めていました。一人っ子は寂しいことがある反面、想像力や妄想力が豊かになる。だから息子が幼い頃、可愛くてちょっかいを出したくなるのをグッと堪え、ひとりで遊ばせていました(笑)。協調性も大事ですが、これからは“個”がより大事になると思うんです」

 

Profile
やまだ・たかゆき●1983年10月20日、鹿児島県出身。’99年に俳優デビュー。近年の代表作に『50回目のファーストキス』『ハード・コア』(ともに’18年)など。Netflixオリジナルドラマ『全裸監督』(’19年)も話題に。『デイアンドナイト』(’19年)でプロデュース、『聖☆おにいさん』で製作総指揮を務めた。

『ステップ』

映画『ステップ』

©2020映画『ステップ』製作委員会

30歳の健一(山田孝之)は妻を亡くし、突然シングルファザーに。営業部から総務部に転部し、幼い娘の保育園送迎からお弁当作り、家事にと奔走しはじめる。亡き妻の両親との交流を絡めながら、父と娘の日々、娘の成長や父娘の関係性の変化を10年にわたって描く。重松清の同名小説を、『虹色デイズ』の飯塚健が映画化。近日公開予定。


撮影/川上 優 ヘア&メイク/灯(ROOSTER) スタイリスト/澤田石和寛 取材・文/折田千鶴子

シャツ¥50000/ヨウジヤマモトプレスルーム(YOHJI YAMAMOTO)

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