和食に欠かせない、うま味。
世界にも注目されるUMAMIの正体って?
2013年のことですが「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された、というニュースを覚えていますか? この無形文化遺産とは、ピラミッドや宮殿といった建造物ではなくて、言語や舞踏、お祭りなど文化を保護する条約の下に始まったもの。
ユネスコ無形文化遺産に登録された<和食>の特徴とは、
①海・山・里で採れる多彩な食材を使用している
②動物性油脂が少なく栄養バランスが取れている
③四季が表現されている
④正月のような行事と食の関わりが深い
という4点。
無形文化遺産に登録されたことは、日本人の伝統的な食文化が、欧米だけでなく世界中で注目を集めるきっかけになりました。例えば、一汁三菜の食事スタイル。動物性の食材を使わずに昆布や鰹節などで取っただしを使ったヘルシーな調理方法。栄養バランスがよく、見た目も華やかなお弁当。
その中でも、だしの「うま味」は「UMAMI」という世界共通の呼称で知られています。しかし、恥ずかしながら、うま味ってなんなのか、きちんと説明できるか難しいですよね。そこで、長きに渡り、うま味を研究し続ける味の素(株)が開催した、講演会に参加してきました。
第五の基本味に認定された「うま味」ってどんな味?
ご存じの方も多いかもしれませんが、まずは「うま味」の基礎知識から。
「だし」の主成分は、昆布やカツオに含まれているうま味成分です。「うま味」とは、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ基本五味(きほんごみ)のひとつ。お味噌汁や、お吸い物、お蕎麦やうどんのツユをいただくとき、口の中にコクやまろやかな余韻が残りますよね。「だし」を加えた料理がおいしく感じるのは、その「うま味」があるからこそなんです。
うま味の存在が確認されたのは、1908年。科学者の池田博士によってです。池田博士は昆布だしの美味しさの秘密は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸だと発見。それを「うま味」と命名しました。その後、かつお節や干し椎茸にもうま味があることが、次々と科学者たちによって発見されていきました。なんと、母乳にも(!)グルタミン酸がたっぷり入っているのだそう。人間は産まれながらにして、うま味と接しているのですね。
そして、この「うま味」を手軽に料理にプラスすることのできる調味料として、今から110年前の1909年に、うま味調味料「味の素®」が誕生しました。
実は味噌や醤油と同じ製法。
「味の素®」の歴史は、うま味の歴史。
そういえば、「味の素®」が一体何からできているのか不思議に思っていませんでしたか?実は、さとうきびが原料。さとうきびをしぼった糖蜜を、味噌や醤油、ビールと同じように発酵させて作っています。発酵菌のパワーで、糖分からグルタミン酸が生まれるのだそうです。
化学調味料という名称で呼ばれることもあるため、「体に悪いのでは?」という印象を持っている人もいるかもしれませんが、「味の素®」の主成分であるグルタミン酸は、植物を原料として発酵法で作られており、化学合成されたものではありません。ただし、そのままでは水に溶けにくく料理に不向きなので、ナトリウムを加えて溶けやすい性質に変化させています。それで、あんなにサラサラしているんですね。
うま味を上手に取り入れるには?
結論から言うと、適量を使用している限り、グルタミン酸ナトリウムが体に悪影響を与えることはありません。むしろ、うま味成分には、少量で食事の満足感を高める働きがあるため、塩分を控えることができる、食事の量を減らすことができる等、いろいろなメリットがあることが科学的に実証されています。
大きな期待を持てるのが、病人食。塩分を控えなければならない人に向けて、うま味調味料を活用すれば、減塩食の物足りなさ解消に役立ちます。ほんの少量用いるだけでうま味が増し、満足感がアップするからです。
もっと詳しく「うま味」を学んでみたい方は、味の素㈱川崎工場の工場見学をおすすめします。「味の素®」の製造工程のジオラマや包装工場の見学、うま味の体験もできますよ。
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峰典子 Noriko Mine
ライター/コピーライター
1984年、神奈川県生まれ。映画や音楽レビュー、企業のブランディングなどを手がける。子どもとの休日は、書店か映画館のインドアコースが定番。フードユニットrakkoとしての活動も。夫、5歳の息子との3人家族。