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LIFE

津島千佳

『おむつなし育児』を知ることは、人間らしさを知ること/『おむつなし育児』で子育てがラクになる!【最終回】

  • 津島千佳

2017.05.27

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『重たすぎる紙おむつ』が新たな問題を生む

実践的な『おむつなし育児』の方法おむつに頼りすぎる育児が生むデメリットを、おむつなし育児研究所所長の和田智代さんにうかがってきた本連載。

最終回はいつか自分にも訪れるであろう、高齢者になってからのおむつについてまでお話くださいました。

『重たすぎる紙おむつ』が新たな問題を生む

和田 紙おむつだとサイズとともに単価も上がるので、私もそうであったようにお母さんとしては1枚の紙おむつをできるだけ長くさせておきたいじゃないですか。でも長時間おむつを替えないことで、子供は排泄物を出す感覚を知る機会をさらに逃しています。

他にもデメリットはあって、2年ほど前からよく聞くようになったのが『重たすぎる紙おむつ』です。

津島 『重たすぎる紙おむつ』ってなんですか?

和田 紙おむつの中でおしっこを何回もしてブヨブヨでかなり重たくなっているのに、交換しないままの状態のこと。そんな紙おむつをしたままだと腰に負担がかかって、腰痛のような症状で苦しむ赤ちゃんが現れ始めている話を最近あちこちで聞きます。

津島 赤ちゃんで腰痛って本当ですか!?

和田 これから本格的に実態を調べるところですが、昨年出版された保育士向けの専門誌の中で「長時間替えていない『重たすぎる紙おむつ』は、赤ちゃんの腰への負担になることを保護者に伝えましょう」とアドバイスしている記事がありました。

それに保育士さんやベビーマッサージ講師など、日々小さいお子さんと関わっている専門職の方々も指摘するようになっています。これから問題になるのでは、と心配しています。

津島 つけっぱしの紙おむつが子供の腰への負担になっていることまでは想像できていませんでした。

和田 よちよち歩きの1歳後半の赤ちゃんで平均体重約10kg。1回のおしっこで少なくとも80ccくらいは出ると言われます。2回分だと約160cc。それを大人の体重に単純に換算すると、46kgの私の2回分で約600ccということになります。

津島 600ccって結構ありますね。

和田 500mlのペットボトル以上の負荷が股にかかっていますよね。私も大人用の紙パンツに約600ccの水を含ませて着用してみましたが、腰骨にずしっと重みがかかり、辛くて15分でギブアップ。12時間おむつを替えないと少なくとも4回はしていますから、1歳後半くらいの子で約320ccくらい。それは私の体重に単純換算すると約1200ccにもなります。牛乳パック以上ですよ。

津島 1L以上もの負担が腰にかかっているって……。自分に置き換えて考えると、かなり重いです。

和田 ねんねの時期ならともかく、歩くようになったらおむつをしているだけでも歩行の妨げになると指摘する論文も発表されています。そのうえ重たいおしっこの負荷まで加わったら、腰など赤ちゃんの身体に不調が起こっても全く不思議ではありません。

高齢者もおむつを外すと、体調が好転する!?

津島 大人で考えると赤ちゃんに酷なことをさせているんだな、と反省です。

和田 高齢者になるとまたおむつをすることもありますよね。だからおむつなし育児研究所が行っている『おむつなし育児アドバイザー養成講座』では、高齢者のおむつもトピックスにしています。

津島 今は子供のおむつに頭を抱えていますが、数十年後は自分がまたおむつをすることになるかもしれないですもんね。

和田 特別養護老人ホームのような介護度の高い高齢者がいらっしゃる施設の多くは、紙おむつを使用しています。そうした施設でも紙おむつに頼りすぎるのを止めて、トイレやポータブルトイレという『解放空間』での排泄をサポートする『高齢者のおむつ外しの運動』が起きています。赤ちゃんと高齢者のおむつには共通することが多く、おむつの外で排泄ができるようになると高齢者も赤ちゃんと同じようなメリットがあるんですよ。おむつをしている高齢者は便秘が多いのですがトイレやポータブルトイレでできると、便秘が解消したり、認知症の問題行動が激減して機嫌よくすごす時間が長くなるなどといわれています。

津島 人間本来の排泄方法を取り戻すだけで、そんなに変わるんですか。

和田 おむつは育児や介護をする側の負担を減らすために開発された、便利なグッズ。それが悪いわけではありません。私も子育て中はおむつにはたくさん助けてもらいました。

ただ『赤ちゃんはおむつの中で排泄するのが当たり前』ではないのです。おむつの外の解放空間で排泄するのが動物としての自然な姿。大人が家や服を汚されたくないために『赤ちゃんに我慢しておむつをつけてもらっている』のです。

おむつに助けてもらいつつ、可能な範囲で赤ちゃんにとって自然で気持ちいい排泄をさせてあげるバランスが大事ですね。『おむつに頼りすぎない育児』にも目を向けて『おむつなし育児』を選択肢の一つにしてもらえたら、排泄のお世話を通じて幸せを感じられる親子がもっと増えると思います。

『おむつに頼りすぎない育児』ってハードルが高い印象を受けるかもしれませんが、試してみると、あまりのシンプルさや簡単さ、そして楽しさに驚かれる人が多いです。人間の生理に適った昔からしてきていることですからね。

津島 とはいえ、今のママたちにとって『おむつに頼りすぎない育児』はやっぱり難しそう。どうしたら簡単に取り組めますか?

和田 おむつなし育児研究所のウェブサイトでは、簡単なノウハウや参考図書などをご紹介しています。また『おむつに頼りすぎない育児』を伝えられる人を育成する試みとして『おむつなし育児アドバイザー養成講座』も実施しています。それを受講したおむつなし育児アドバイザーさんたちが各地で講座や交流会などを開催しています。そうしたイベントに参加されるのはいかがでしょう。近くでイベントの開催がなくても、ブログやSNSで検索するとたくさんのおむつなし育児実践ママに出会えますよ。

津島 本当にもっと早く『おむつなし育児』を知っておきたかった! ありがとうございました。

目次

お話をうかがったのは、和田智代さん

おむつなし育児研究所所長、みらい子育て研究所代表
国内を中心に『大人と子供のコミュニケーション』をテーマに、講演・セミナー・カウンセリング&コーチング・執筆など、様々な形での子育て支援事業に携わる。
訳書『おむつなし育児』、『世界一しあわせな子育て』(ともに柏書房)、実践指導『五感を育てるおむつなし育児』(主婦の友社)、共著『赤ちゃんにおむつはいらない』(勁草書房) のほか、育児・保育雑誌への執筆多数。『おむつなし育児』をもっと知りたい人に向け、全国各地での『おむつなし育児』講演会やアドバイザー養成講座も行っている。

津島千佳 Tica Tsushima

ライター

1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。

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