引き続き、hitomiさんのインタビューをお届けします。
真っ白なバルーンシルエットのサロペットを着て取材に来てくれたhitomiさん。引き締まった体に屈託のない笑顔がヘルシーで、まるで夏を先取りしたような雰囲気です。「好きなファッションは海を感じさせるスタイル。シンプルにTシャツにデニム、オーバーオールも好きですが、若い頃と同じようには着られないから、シルエットや質感など、大人っぽい要素を取り入れて着こなすようにしています」。
後半では、hitomiさんがモデルを経て歌手になるまでと自ら手がけた「CANDY GIRL」歌詞の誕生秘話、最近取り組んでいるという終活(ダウンサイジング)や自分らしい美しさ、50代60代に向けての理想の生き方についてお聞きします。(この記事は全2回の第2回目です。第1回目を読む)
憧れの雑誌の読者モデルにはなれたけど、歌手の夢を諦められなかった
hitomiさんは、小さい頃から歌手になることを夢見ていました。きっかけは6歳の時。母にたまたま連れられて行ったお店に小さなステージがあり、そこで歌った気持ちよさや爽快感が忘れられなかったと言います。
「あまり子どもを連れて行っちゃいけない夜の店だったと思うんです(笑)。そこで松田聖子さんの曲を歌って、とても緊張したんですけど、快感というか不思議な気持ちよさを感じました。“お姉ちゃん、上手だね!”と褒めてもらえて嬉しかったのを今でも覚えています」
14歳の時、歌手になるためにホリプロスカウトキャラバンに応募。関東地区代表の最終4人に残るも落選、しかし姉妹事務所から声がかかり所属することになります。そこでオーディションを受け続けますがなかなか通らず、「背が高いからモデルがいいんじゃない?」と言われ、だったら普段よく読んでいる雑誌がいいと思い雑誌『Fine』に応募し、読者モデルとして採用されます。
「履歴書を送ったら、編集部の方が気に入ってくれたんです。憧れていた雑誌だったし、当時の女子高生はみんな読んでる雑誌だったので、とても嬉しかったです。とはいえ、やりたかったのは歌。モデルとして活動しながらオーディション雑誌は読み続けていて、歌手のオーディションを探していました」
履歴書が小室哲哉さんの目に留まり「歌詞を書いてみない?」と提案される
そんな時、応募したのがディスコのコンテストでした。当時16歳だったhitomiさんは年齢制限から受けることができなかったものの、その履歴書が小室哲哉さんの目に留まり、声がかかりました。
「“コンテストは難しいんだけど小室さんにビデオメッセージをくれないか”と主催者からお願いされて。小室さんはちょうどプロデュース業を始めた頃で、歌手を探していたようです。ただ、そこからすぐにはデビューできず、しばらくは事務所で電話番をしたり、レッスンを受けたりして過ごしました。電話に出てもマナーも何も知らないから“○○さんはいません”なんてぶっきらぼうな答え方で、すごく迷惑をかけていたと思います(笑)。当時エイベックスの社長だった松浦(勝人)さんからは、“暇だったら女性誌を読むといいよ。今もトレンドを知るのが君の仕事だからね”と言われて、雑誌を読んだりもしていました」
hitomiさんの奔放なキャラクターを見た小室さんから「歌詞を書いてみない?」と言われ、生まれて初めて歌詞を書くことになります。
「歌は歌いたい、誰かの歌で気持ちを伝えられたらいいと思っていました。一方で“大人は嘘つき”“信じられない”という不信感があったので、その思いを歌詞にしたいとも。当時付き合っている彼がいたんですけど、小室さんからは“彼と電話で話しているようなリアルな言葉を書いて”と言われて。そして生まれたのが『CANDY GIRL』です。“もっと楽に生きていきたい”なんて、一周回って今と同じ考え方の部分もあるから面白いですよね」
少し早いかもしれないけれど「終活」「ダウンサイジング」に取り組み中
hitomiさんがライブの時にいつも持ち歩いているのがヨガマット。歌う30分前くらいからストレッチをして、体をほぐしてからステージに立つようにしているそう。歌う時の心持ちも以前から少し変化があったそうです。
「よく“かっこいい”“堂々としている”なんて言われて緊張しなそうに見えますが、実は緊張してるんです(笑)。心の中は“ドキドキが止まらない”“どうしよう!”と動揺していますが、歌っていると徐々にお客さんとの距離が縮まって自然とリラックスしてきます。昔は“かっこいい自分を見せるぞ”という気分でしたが、最近は自分の曲を聴いて幸せになってくれたら嬉しい。喜んでもらえることが一番だと思うようになりました」
近頃取り組んでいるのが、「少し早いかもしれないけれど」という終活。洋服や持ち物を整理して、なるべく身の回りのものを減らしていくこと、ダウンサイジングを続けているそうです。
「大切に残していくものを限定していこうと思って。日常着は長く着られるもの、衣装は新鮮さを感じるものや5年後もまだ着たいと思えそうなものを選んでいます。歌手としての活動があるので、どうしても『見せる服』が必要なのですが、普段は自転車に乗って買い物や子どもの送り迎えに行ったりと、カメレオン状態で街に馴染みたいんです(笑)。だからグレーとかベージュの地味な服なんですよ。自分の服はもちろん、子どものものもつい増えがちですよね。うちは下が男の子3人で、お下がりが着られるからたくさんの服があって、靴もすごい量なんです。だから住んでいる地域で衣類のリサイクル回収の日があるので、その日に引き取ってもらっています」
50代を目前にした今、無理をせず、老いも受け入れて自然体の自分でいたい
自然体で軽やか、シンプルだけれど抜け感のあるファッションに身を包むhitomiさんの姿は、ウェルネスであり健やかそのものです。50代を目前にした今、美しさとは何かについて聞きました。
「私は自分のおばあちゃんの笑顔がとても好きでした。もちろんシワがあって歳を重ねていますが、表情がとても素敵だったんです。それは美容や化粧で作っているものではなく、自分の内側、心から生まれているものだと思っています。ハッピーでいること、自分らしく生きられているからこそ、その表情ができると思うので、日常を大切に、豊かに過ごせることを常に意識していたいです。シミ取りやエステに行くのも良いですが、今の自分の生活スタイルではちょっと難しいので、そのお金や時間を子どもと過ごす時間に使えたらいいかなと思います」
無理をせず、老いも受け入れて自然体の自分でいること。体を鍛えることへの意識にも変化がありました。
「これまでストイックに続けていた筋トレも週2回から、できたら週1回に。筋肉をつけたいからじゃなく、シンプルに体を引き締めたいから続けています。トレーナーに“ウェイトをもうちょっと上げてみる?”と言われても、無理はしないし逆に“今日は関節が痛いのでやめておきます”とブレーキをかけることも。無理をしたら、その分を取り戻すのにかけた以上の時間がかかるんですよね(笑)」
第一の人生が歌手、第二の人生が子育て。第三の人生はとにかく穏やかに暮らしていたい
hitomiさんは、5年前に「LOVE 2020」を配信リリースしました。2000年にリリースした大ヒット曲「LOVE 2000」は、同年に開催されたシドニーオリンピックのテーマソングで、女子マラソン金メダリストの高橋尚子選手が試合前に愛聴していたことで話題になりました。その続編、アンサーソングとして新しい歌詞を書きました。
「2020年がオリンピックイヤー予定だったということでスタッフから提案があったのに加え、自分がやりたい思いが一番強かったです。20年前と比べて“今ならこう思うよね”“こうだよね”という素直な気持ちで、ひとつひとつ確認するように書きました。ちょうど子どもを送り出した午前中、ファミレスで書いたのを覚えています。娘が私がデビューした年齢に近づいていることもあって、“あの頃の私と一緒だね”“ただ前を向くだけだったね”“だいぶん変わったよね”という気持ちもあります」
20年を節目とすると、「『LOVE 2040』もありますか?」と聞くと「ふふふ、あったらいいですね」とhitomiさん。50代60代の生き方について聞いてみると、こんな本音を明かしてくれました。
「第一の人生が歌手で、第二の人生が子育て、第三の人生ですよね。その頃には閉経もして子どもも育って落ち着いているだろうから、また違った人生を歩めたらいいなと思います。今の60代の方って元気ですよね。歌を歌うことももっと自由になって、またギターを習って自分の曲を歌えるようになっているのもいいですね。東京から離れた場所で暮らしてみるのもいいかもしれない。ハッピーに、おしゃれに、好きなものに囲まれていたいです。とにかく穏やかに暮らしていたいです」
My wellness journey
hitomiさんに聞きました
心のウェルネスのためにしていること
「朝、お香を焚くことです。朝5時ごろに起きて、家族が起きてくる前に、ゆったりした気持ちを味わいたくてやっています。家族が起きてくると戦いじゃないですか(笑)。まだ誰も起きていない時間に、一人ゆっくり洗濯物をたたみながら、お香をかぐ。とてもリラックスできます」
体のウェルネスのためにしていること
「朝のテレビ体操(ラジオ体操)です。実はもう2年くらい続けています。最初やってみた時、小学校のころはあんなに余裕だったのに全然体が動かなくてびっくりでした(笑)。でも毎日やるようになったら、体も関節もしっかり動くようになりました。なんでもないようで、実はとても効果があるんじゃないでしょうか。いつもお香を焚いた後にやっています」
インタビュー前編はこちらからお読みいただけます
Staff Credit
撮影/高村瑞穂 ヘアメイク/松田美穂(allure) 取材・文/武田由紀子
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