夫婦のお金に詳しいFP 風呂内さん教えて!
夫婦の収入や貯蓄は
教えあったほうが貯まりますか?
「夫婦でお金の情報を共有するほうが貯まるけど……」と風呂内さん。お互いがストレスフリーで、気まずくならない家計管理のコツを聞きました。
教えてくれたのは
風呂内亜矢さん
ファイナンシャルプランナー
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者などの資格を持つ。実践しやすいお金の話が人気。近著に『超ど素人がはじめる資産運用 第2版』(翔泳社)。
長年モヤモヤしていた
ライターTが
夫婦のお金のこと、聞いてみました!
ライターTの夫婦のお金事情
夫と5歳と3歳の子どもの4人家族。家計に入れる割合は、安定した収入の夫が6割、収入に波がある妻が4割。各自が共同口座に入れて生活費と一部を貯蓄に。独身時代の貯蓄はお互い未開示のまま。自分で自由に使えるお金も保持しておきたいため、夫の貯金を聞き出せない結婚7年目。
教えあうほうが貯まるけれど、見せない部分があっていい!
風呂内さん お金を貯めることだけを考えると、収入や貯蓄を全部開示するほうが無駄なく効率的。ただそれは抵抗がありますよね。「貯まること」と「心理的なハードル」は相関関係にあることが多いです。どこまで共有するかを話しあい、見せない部分があってもいい。自分だけでコントロールできる部分を持つのも大事ですから。
ライターT 少しホッとしました。共有できていない自分に罪悪感があったんです。自分で管理しているお金を「いずれは家族のために使う」という思いと同時に「欲しいものは、自由に買いたい」と自分勝手な気持ちもあって……。
風呂内さん そのままでいいと思いますよ。ポイントは、現状のままで、家計が将来も回るかどうか。もし、今夫婦で見えているお金の範囲で将来の不安があるなら「共同口座に入れるお金の割合を上げる」提案も手です。
ライターT 0か100ではなく、一部を開示するだけなら、いい歩み寄りができそうですね。
風呂内さん 例えばTさんが共同口座に今より2割多く入れることで、もしかしたら夫も2割多く入れてくれるかもしれない。二人で見える予算が増えるほど、今後の家族の選択肢も広がり、柔軟に選べます。正解は夫婦の数だけ無限大。二人で折り合いをつけながら、どのバランスがいいか一緒に探せるといいですね。
お金を夫婦で共有するメリットって何ですか?
夫婦というチームで、より満足度の高い選択肢を増やせます!
家計管理とは「自分たちの収入や資産をどんなサービスや商品と交換して生きていくか」ということ。「より貯める」ことではなく「より満足がいくものと交換する」ことが多くできるほど、お金の使い方は満足がいくものに近づきます。お金に余裕があれば、AやBに加え、Cという選択肢を増やすことができます。夫婦や家族というチームで、お金を何と交換して生きていきたいか、共通認識を共有できるほど、より満足がいく将来設計ができると思います。
お金の話を普段しない夫婦は、どう切り出すべき?
相手の好きなものやことをフックに! 昨今の物価高の話題もおすすめ
例えば、相手が旅行好きだったら「旅行に行きたいよね」と、考えるとワクワクすることを一緒に共有して、「それを実現するためにはどうしたらいいかな」という相談からだと入っていきやすいかもしれません。また、「物価が上がったね」と1週間くらい家計簿をつけてみる方法も。「お給料は上がってないし、家計を考えないとね」と自然な流れで話せそうです。「新NISAが始まるらしい」と話題にするのもいいと思います。
収入や貯金を開示するなら、100%するべき…?
100%だと、貯まる効率は確実にアップ。ただ、各々が手綱を握れるお金があることで、夫婦が円満にいくケースも!
すべてを開示したほうが合理的でストイックに貯蓄できますが、性格によって「合う・合わない」も。ストレスになっては逆効果。自分でコントロールできるお金を持っておくのは悪いことではありません。例えば収入の7割を家計に入れ、残りの3割を自由に使えるお金にして、その部分は互いに干渉しないと決めたほうが、お互いストレスがなく貯まる家計になることも。
夫婦共同でお金を貯める場合、どんな方法がベスト?
それぞれの口座をアプリ上で連携させるのがスムーズ
日本の銀行は個人名でしか口座を作れないため、夫の口座に生活費や貯蓄をまとめてしまうと、もしも夫が亡くなった場合、口座が凍結されて大変な手続きが必要に。また、夫婦間でも資産を移すと贈与税の対象になるので、個別に財産形成を。生活費や貯蓄、投資用の口座を決めて「マネーフォワード」など、家計簿アプリのアカウントに紐づけることで「共通口座」を疑似的に作り、互いに確認できるようにするのがベターです。
お金の話はやはり定期的にするべき?
年に1度、年末に総資産のおさらいを!
まずは年に1度、預金口座や証券口座などをチェックして、「家の資産は今年いくらで、前年と比べて黒字か赤字か」の確認を。家計管理には短期、中期、長期の3つの視点があります。短期は支出を管理する家計簿の視点。年に1度の資産チェックは中期の視点。長期は将来設計の視点です。中期に問題があったら短期、将来に不安があるなら長期についての話しあいを。
夫婦で資産運用をすれば、家計はもっと潤いますか?
今の家計を補う目的での投資は危険。10年手をつけないお金がいくらあるか、まずは夫婦で話しあって
資産運用というと、お金が増えるイメージがあるかもしれませんが、投資には値動きがあり、お金が減ることも。今足りないお金を短期間で増やして補塡するために投資を始めるのはやめましょう。ただ、値動きがある場所に長期間お金の置き場を変えることで、将来的にお金の価値を保つことができるかもしれません。まずは10年以上手をつけないでいいお金があるか、夫婦で把握し、無理のない範囲で運用を検討してみましょう。
ライターTのその後
いくつかある家族の口座をすべて見える化に成功
夫も含めて友人家族と食事をした際に、今回の仕事を理由に友人夫婦はどんな家計管理をしているかを聞き出しました。その日の夜、夫にも貯金の話を振り、夫婦で連携できるアプリを取り入れることに。子どもの口座も含め、家全体のお金を一括管理できるようになり、大きな収穫でした!
Staff Credit
撮影/柳 香穂 イラストレーション/miho miyauchi 取材・原文/佐久間知子
こちらは2023年LEE12月号(11/7発売)「夫の貯金、知らなくて大丈夫…?」に掲載の記事です。
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