LEE読者がティーンの頃に通ってきた(?)さまざまなカルチャーが今またブーム! そこで「あの頃の映画」にガツンと影響を受けた皆さんのおすすめ名作をご紹介! 一度見ている作品も、年齢を重ねて、親の目線で見るとまた違う魅力に気づくはず。
お話を伺ったのは
映画ライター 折田千鶴子さん
映画配給会社勤務を経て’00年より映画ライター。LEEやLEEweb(連載はこちら)のほか、雑誌、週刊誌ほかで執筆中。’80~’90年代マイベストは『グラン・ブルー』『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』『恋する惑星』。14歳の双子男児の母。
Twitter:Chizuko_Orita
人生初胸キュン映画から、人生の厳しさの洗礼まで
宇宙や宝探しなどワクワクが詰まったハリウッド大作の大ヒットと並行し、ミニシアターが次々開館、世界中の映画が日本にどっと流れ込んできた’80年代。好景気を反映した大作は、華やかで楽観的で明るい未来を予感させ、大いに気分をアゲてくれました。M・ライアンやJ・ロバーツ以降、ヒロイン映画と呼びうるロマコメも隆盛し、“稼げる女優”の台頭も印象的。
一方で各国からやってきたアート系作品はストイックな表現に貫かれ、厳選された映像と会話は哲学的でもあり、若者たちをしびれさせました。どこかズレた笑いや厭世的な空気をたたえつつ、こんな小さな存在や運命もあるのだと、“個”から“世界”をのぞかせてくれましたね。子どもと一緒にワクワクしながらエンタメ作品で愛と勇気をチャージしたら、たまにいろんな国の異なる価値観にカルチャーショックを受けるのも一興です!
甘酸っぱさで胸いっぱい! 人生初の胸キュン映画
’82『ラ・ブーム』
「13歳のヴィックはブーム(パーティ)でマチューと出会い、惹かれ合うが……。ソフィー・マルソーのデビュー作。後ろからヘッドフォンをつけられ、『愛のファンタジー』が流れて踊るシーンはキュンMAX! “恋に恋する”状態に陥った人生初の胸キュン映画。フランスの13歳って本当にオシャレでオマセ!! しかもアムールのお国柄らしく、大人も子どもも衝動的だし。でも“好きでどうしていいかわからない”焦燥感は世界共通。
今よりも大らかだった時代の空気にもなごめるし、ヴィックの両親の心模様も描かれているので、親の視点であらためて見ても新鮮! 日本と違う家族観、恋愛観について親子で話すきっかけにも」(折田千鶴子さん)
アクションに大興奮、可愛いドジに大爆笑
’84『プロジェクトA』
主演・監督・脚本・武術指導もジャッキー・チェン。イギリス統治下の香港、いつもヘマをする水上警察のドラゴンは陸上警察といがみ合っていたが、協力して海賊退治することになる。「ジャッキーだけでなくユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポーら、香港スターが全身全霊で体を張ったアクションと爆笑を仕掛けてきます。敵同士に友情が芽生え、大団円的なハッピーな後味もゴキゲン。後のアクション映画に影響を与えたアイデア満載のアクションの数々にも明るいズッコケ具合にも、子どもは大喜び必至!」(折田千鶴子さん)
厳しい運命を乗り越える、しみるスウェーデン映画
’88『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』
兄は意地悪、父は不在。母の病状が悪化し、12歳のイングマルは遠い町の親戚に預けられる。ラッセ・ハルストレム監督作。「自分を“スプートニクに乗せられたライカ犬よりマシ”と慰める少年。状況的には不幸のどん底そうだけど、やんちゃで楽しく過ごす子どもの適応能力って素晴らしい。彼が感情を爆発させる後半はいたたまれないけれど、いろんな人生の機微が詰まっていて、最後は希望も。かじりつきで見ていた能天気な息子たちも、言葉少なにしみていた様子。性の目覚め云々もあるので高学年向き」(折田千鶴子さん)
1980
『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(シリーズ2作目)、『クレイマー、クレイマー』。
1981
『典子は、今』『ねらわれた学園』など薬師丸ひろ子らが主演の角川映画アイドル全盛期。
1982
『E.T.』などS・スピルバーグがヒット作を連発。『愛と青春の旅立ち』がヒットし、同系統の恋愛映画がブームに。
1983
『フラッシュダンス』『ステイン・アライブ』などダンス映画が大ヒット。『アウトサイダー』主演のトーマス・ハウエル、トム・クルーズなど“ブラット・パック”と言われる若手俳優たちの人気沸騰!
1984
『ゴーストバスターズ』『グレムリン』『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』。『風の谷のナウシカ』がヒット、スタジオジブリの快進撃につながる。
1985
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ランボー怒りの脱出』『ビバリーヒルズ・コップ』。マイケル・J・フォックス、エディ・マーフィが人気に。
1986
『トップガン』でトム・クルーズがトップスターに。『ナインハーフ』のミッキー・ローク、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』のジョン・ローンがセクシー俳優の代名詞に。
1987
『プラトーン』『アンタッチャブル』が大ヒット。チャーリー・シーン、アンドリュー・マッカーシーら青春スターが人気に。『ラストエンペラー』で坂本龍一がアカデミー賞作曲賞を受賞。『男たちの挽歌』で“香港ノワール”、チョウ・ユンファが人気に。『マルサの女』『私をスキーに連れてって』も話題に。
1988
『危険な情事』『ウォール街』が大きな話題に。’85年公開の『アナザー・カントリー』と合わせ『モーリス』などイギリスの耽美的同性愛映画が静かなブームに。『ベルリン・天使の詩』がミニシアターでロングラン大ヒット。
1989
『ダイ・ハード』『バットマン』。『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』などシリーズものがヒット。『恋人たちの予感』でメグ・ライアンがロマコメの女王に。『ブラック・レイン』で松田優作らがハリウッド映画に出演。『ニュー・シネマ・パラダイス』がミニシアターで大ヒット。ジム・ジャームッシュ『ミステリー・トレイン』に永瀬正敏、工藤夕貴が出演。
ジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダースなどがアートシーンを席巻
1990
『プリティ・ウーマン』『ゴースト ニューヨークの幻』。ジュリア・ロバーツが不動の人気に。
1991
『ホーム・アローン』、アカデミー賞7部門を受賞した『ダンス・ウィズ・ウルブズ』が大ヒット。ティム・バートン『シザーハンズ』でジョニー・デップ、ウィノナ・ライダーの人気沸騰。
1992
『ボディガード』『氷の微笑』『アダムス・ファミリー』。L・カラックス『ポンヌフの恋人』公開。L・ベッソン、J=J・ベネックスとともに“BBC”と呼ばれ鬼才を発揮。ウォン・カーウァイ『欲望の翼』公開。レスリー・チャン、トニー・レオンらが人気に。周防正行『シコふんじゃった。』がヒット。
1993
『ジュラシック・パーク』。リバー・フェニックス急逝、世界に衝撃が走る。北野武『ソナチネ』公開。カンヌでも上映され、“世界のキタノ”に。
1994
『スピード』でキアヌ・リーブスがトップスターに。『パルプ・フィクション』でクエンティン・タランティーノが時代の寵児に。
1995
『フォレスト・ガンプ/一期一会』『マディソン郡の橋』。『恋する惑星』がミニシアターで爆発的大ヒット。日本でウォン・カーウァイ人気が沸騰。『Love Letter』で岩井俊二が注目を浴びる。
1996
『ミッション:インポッシブル』『セブン』。ブラッド・ピット人気が最高潮に! 『トレインスポッティング』が人気爆発、ユアン・マクレガーがスターに。周防正行『Shall we ダンス?』がヒット。
※製作年ではなく、日本公開年で分類。
80’sフレーバーたっぷりの『ストレンジャー・シングス』も大ヒット!
80’s 90’sのカルチャーがアツい!
’22年に新シリーズが公開されたドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は’80年代が舞台&その頃の作品へのオマージュが随所に。インテリアを見ているだけでも楽しい! さらにシティポップがブームになったり、メタリカやガンズなどのバンドTシャツ、’90年代のストリートを席巻したスニーカーやシャカシャカアウターなどのアイテムが人気だったりと、80’s 90’sカルチャーがミックスされてリバイバル中!
編集ぷーすけの息子(4歳)に『ゴーストバスターズ』が大ウケ!
「息子がアニメ映画を見られるようになってきたので、実写もと見せてみたところドハマり! やっぱりお化け×メカの魅力は最強。ストーリーもちゃんと理解してました。親のほうも、昔見たときには気にしていなかった80’s NYのアーバン感にグッときたり。その頃の名作を子どもともっと見たい!」(編集ぷーすけ)
イラストレーション/SAWAMI 取材・原文/折田千鶴子
こちらは2023年LEE1・2月合併号(12/7発売)「子どもと見たい80’s 90’sの名作映画」に掲載の記事です。
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