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上紙夏花

「刺繍はセラピー」趣味が仕事になった、刺繍作家nanaさんインタビュー

  • 上紙夏花

2020.11.21

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子どもが幼稚園に行っている間に広がった、趣味の世界

 

いま、人気を集めている立体刺繍! まるでぬいぐるみのようにかわいらしい、動物モチーフの刺繍が得意な作家、nana_embroidery_worksさん(以下、nanaさん)にインタビューしてきました。nanaさんは2019年『キルトコンテスト&ステッチコンテスト』にて入選。2020年マガジンランド主催の『手芸&クラフト展』に出品、最優秀賞を受賞し、副賞として『小さくてキュートな立体刺繍 nana`s stitch』を今年の夏に出版した実力派の作家さんです。でも、実は特に刺繍をどこかで習った経験もなく、趣味としてやってきたのだそうです。

 

nanaさんの著書、マガジンランド『小さくてキュートな立体刺繍 nana`s stitch』。実際に表紙撮影に使われた刺繍を見せていただきました。立体感がたまらなくかわいいです!

 

ご主人のお仕事の都合でニューヨークに住んでいた2012年。当時、娘さんが幼稚園に通っている間、何かできないかな?と思ったnanaさんは、自宅近所にあった生地問屋さんへ出かけます。そこでいくつかの生地を買い、Amazonでブラザーのミシンを購入して洋裁をするようになったそうです。日本の手芸本を取り寄せたり、日本人の先生の洋裁教室に通ったりして、子ども用の洋服を作り始めました。この頃はまだ、刺繍に興味をもっていなかったのだとか。

 

「子どもたちが幼稚園に通っている間、洋裁を習いました。帰国後、洋裁をもっと本格的に学んでみようとしたことはあったのですが、ミニマムにできる刺繍が私には合っていました!刺繍ならば、大きな布を広げる必要もないし、小さな枠の中に詰め込む楽しさがなんとも言えないんです。

 

刺繍は私にとって〝セラピー〟

 

 

刺繍はどんなきっかけで始めたのでしょうか?「娘が年長のときに帰国したのですが、幼稚園の謝恩会で、保護者会から先生たちに刺繍入りの手作りエプロンをプレゼントをすることになったんです。それが私と刺繍の出合いでした。それ以来、刺繍のとりこになっています! 家事を最短で終わらせて、いかに刺繍の時間を作るかという挑戦をしています」

 

以前はご主人の書斎だったというお部屋を、刺繍の作業部屋として使っているそうで、そこがnanaさんの基地になっているのだとか。

 

 

「私にとって刺繍は〝セラピー〟なんです。無心になって手を動かしていると、すごくスッキリして心の安定につながるんです。洋裁をもっとやってみようかと思ったこともあるんですけれど、刺繍って〝燃費がいい〟っていう感覚なんですよね。作業も場所をとらないし、出来上がったものたちも幅を取りません。このミニマムさも気に入っているポイントです。

 

好きなことって、どんどんこなしていくから、上手にできるようになるじゃないですか。それが、自信にも繋がって、セラピーのような効果を出してくれていると感じます。

 

みなさんにもオススメしたいのは、プロでなくても、刺繍は上手い下手が関係ないし、絵を描かなかった私でもできたので、挑戦しやすいと思うんです。始めたばかりの頃は誰かに見せるためではなく、ただただ刺繍をさしたいという気持ちだけでした。もし、手芸に興味があるという方は、刺繍に挑戦してみてほしいなと思います!」

 

 

 

3年前から始めたインスタグラムはフォロワー1万人超

目にするたびに、元気づけてくれるメッセージが!このセンスが人気のひとつでもあります。

 

2017年にインスタグラムを始めて、また世界が広がったというnanaさん。いまではフォロワーが1万人を超えています。周りにいるお友達に刺繍が好きな人がいなかったこともあり、ほかの人の作品も見られるインスタグラムで刺繍仲間に出会ったそうです。自分の作品を見てもらうこともできて、さらに楽しみが広がります。

 

あるとき、「nanaさんの刺繍は何という技法ですか?」と質問されたそうですが、その時はよくわからなかったのだとか。「有名な作家の佐藤ちひろさんが用いている、デンマークの技法、ボタンホールステッチなのかな?でもちょっと違うな……と思っていたところ、フォロワーのチリ在住の方が、私の技法は〝スパイラルトレリス〟だと教えてくれたんです」

 

自分ひとりだとわからないことも、刺繍を通して世界中の人とつながって、学び合えるって素敵なことですね!筆者もnanaさんと同じように子どもがいますが、どうしてもママ友が多くなっています。それだけでも楽しいですが、nanaさんのように同じ趣味のお友達を作ることに憧れます。

 



初めて出品するという緊張感!

 

店頭に並ば予定のアイテムたち。手前のうさぎさん×カモミールのお花は5日ほどかけて丁寧に仕上げているそうです。

 

11月26日から始まる、東武百貨店 池袋店での『期間限定 CHRISTMAS MARKET by ESTARJE』にnanaさんが作ったアイテムが並びます。nanaさんにとって、これが初めての販売。

 

Instagramで刺繍仲間を増やしたnanaさんでしたが、今度は身近なママ友から、書籍を見て声をかけられました。

 

ママ友のIさんは、昔の同僚でバイヤー兼プロデューサーのESTARJE代表の佐藤さんから「素敵な作家さんがいたら紹介してね」と言われていたことをすぐに思い出しました。

 

佐藤さんは以前、大手アパレルメーカーで服飾雑貨の営業と商品企画をしていた方で、今回の東武百貨店のCHRISTMAS MARKETのバイヤーを担当しています。nanaさんの作るアイテムは一流のバイヤーの目にもとまる素敵なものでした。

 

nanaさんは普段主婦をしていらっしゃるので、ご自身のペースで作ることに重きを置かれていたため、初めは出店に躊躇されていました。

みんなの心をクスっと温かくするnanaさんの作品は、きっと生活の中での笑顔の回数を増やしてくれるはず!とお伝えしたところ、ご主人がやさしく後押ししてくださったそうで、ご本人も決意を固めてくださいました」とIさんはうれしそうに語ります。

 

nanaさんは「私の人生、友人に恵まれています! これまで、娘のために……と趣味の範囲で作ってきましたが、今回、百貨店で販売させていただく機会をいただき、ちょっと緊張しています! 細部までていねいに心を込めて作っています。刺繍以外の部分、たとえばバターンを引いて、縫って、パーツの組み上げなどもすべてひとりで完成させました」

 

 

「ひとつ作るのにとても時間がかかるので、数は限られてしまいますが、みなさんの日常を励ますことができるようなアイテムになったらいいなと思っています」

 

刺繍の楽しさを多くの人と共有するため、今後はワークショップにも挑戦してみたいそうです。手芸に苦手意識が強い筆者も、カモミールひとつから始めてみようかな?とやる気が出てきました!

 

東武百貨店で販売されるのは、リップケースやがま口、ほかにもポーチやブックカバーなど、どれもキュンとするようなかわいいものばかりです。写真でも十分かわいいのですが、直接手に取るとまた感動が違うと思います。お近くの方はぜひ出かけてみてくださいね!

 

 

【期間限定 CHRISTMAS MARKET by ESTARJE】

東武百貨店 池袋店

2F 3番地 イベントスペース[ステージT-2]
会期:11/26(木)~12/2(水) 午前10時~午後8時

※ 東武百貨店 池袋店の営業時間の詳細については、下記にてご確認ください。

http://www.tobu-dept.jp/sp/ikebukuro

 

 

上紙夏花 Natsuka Uegami

ライター/ビューティープランナー

1977年、大阪府生まれ。吉本新喜劇の女優を経て、ライターに。現在は化粧品の商品開発やPRを手掛けるほか、ベビーマッサージ講師としても活動している。夫・息子9歳、3歳

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