今、大ブームの韓流エンタメ! "おもしろすぎる"数々の作品から、韓国ドラマや映画にどっぷりの4人に、激推し"社会派エンタメ作"を教えてもらいました。
前回の「韓国ドラマ5選」に引き続き、今回は「映画」編。
ステイホームで60本以上観た(ハマりすぎ!?)、編集ぷーすけの「胸がギューッとなる映画」3本も!
コメディに差し込まれた社会的メッセージに注目
TBSアナウンサー 熊崎風斗さん
急激に韓国エンタメに傾倒、ラジオ『アフター6ジャンクション』であふれるドラマ愛を語ることも。好きな作品は『キム秘書はいったい、なぜ?』ほか多数。スポーツ中継、『Nスタ』出演中。
韓国社会に通じているからこその視点で解説
ノンフィクションライター 吉崎エイジーニョさん
専門は日韓比較文化論・朝鮮半島論・サッカー全般。韓国媒体で韓国語による連載も。長く韓国文化に触れてきたが、ドラマはステイホームから、『愛の不時着』『梨泰院クラス』にドハマり。
愛を通して社会とのかかわりを考える作品にうなります
ライター 石川晴美さん
韓ドラ視聴歴20年、韓ドラコンシェルジュとしても活動。『キム秘書はいったい、なぜ?』の影響でクローゼットはボウタイブラウスだらけに。『サメ~愛の黙示録~』は何度観ても泣けます。
社会の底辺層や弱者の必死な抗いに心寄せて
映画ライター 折田千鶴子さん
韓国映画を追うきっかけは、『接続』『シュリ』。ホン・サンスの軽やかな恋愛映画が大好物です。でも『愛の不時着』『梨泰院クラス』とドラマにドハマりしたのは、『朱蒙』(’06年)以来です!
14歳、生きづらさの中でもがく姿に震える
『はちどり』
’94年、ソウル。集合住宅で暮らす中2のウニは、学校になじめず孤独を抱えている。両親は忙しく、兄はすぐに手を上げる。孤独なウニは、塾の新しい女性教師に心を開くように。そんなある日、ソンス大橋崩落のニュースが飛び込んでくる。
「なぜ世の中は、こんなにも理不尽で不当なの? 問うように、じっと風景――家族、学校、社会を見つめるウニの瞳に吸い寄せられ、胸騒ぎを覚えます。
『絶対に暴力を許しちゃダメ』とウニに諭す女性教師の言葉、そのたおやかさが脳裏から消えません。ウニを抱きしめたいみずみずしい一作です」(映画ライター 折田千鶴子さん)
韓国潜入の北朝鮮スパイの運命は
『シークレット・ミッション』
人気ウェブ漫画を原作に、ソウルの下町で潜伏生活を送ることになった3 人の北朝鮮スパイの奮闘、運命に翻弄されゆく様を描く。『愛の不時着』で引用されたことでも話題に。
「主演は『サイコだけど大丈夫』のキム・スヒョン。バカなフリをしているときとエリートスパイの本性をあらわに敵を倒す姿は、まさにギャップ萌え。
本格スパイアクションでありながら、何気ない日常にこそ大切なものがあると思い出させてくれる。笑って泣いて自分を省みる。この瞬間を愛そうと思わせてくれ、本作に出会えて感謝!」(TBSアナウンサー 熊崎風斗さん)
"格差"から見えた韓国人の人生観
『パラサイト 半地下の家族』
貧困地区の半地下の狭いアパートで暮らす一家が、丘の上の豪邸に住むIT社長一家に、少しずつ入り込んでいく顛末を描いたブラック"社会風刺" コメディ。
「韓国のネット上で’15年から流行っている自国社会の苦しみを卑下するスラング"ヘル朝鮮"の内情を知れます。
どんなに受験や就職準備を頑張っても縁故採用に阻まれ、いい暮らしができない地獄。ただたとえ悲惨な状況に陥っても、この貧しい家庭は"決して一人にはならなかった"点に要注目です。
"孤独が一番の地獄"と考える韓国人の人生観が表れています」(ノンフィクションライター 吉崎エイジーニョさん)
愛は性別や国籍を超えるか
『ビューティー・インサイド』
目覚めるたびに外見が変わってしまう男性ウジン。彼の恋を描く異色のファンタスティック・ラブストーリー。
登場するたび俳優が変わるウジン役には、パク・ソジュン、イ・ドンウク、ユ・ヨンソク、パク・シネらの人気俳優に加え、日本から上野樹里も参加。
「目覚めたら性別も年齢も、国籍も変わっている。そんな彼が一目惚れした女性(ハン・ヒョジュ)との愛の軌跡が描かれますが、そこで"愛する人の姿が変わっても、その人だと感じられるか"という愛の根幹が問われます。映画で答えを探してみてください」(ライター 石川晴美さん)
社会からこぼれ落ちた敗者の復活
『クライング・フィスト』
借金まみれのメダリストの元ボクサー(チェ・ミンシク)と、少年院で初めてボクシングに目覚めた不良少年(リュ・スンボム)。転落した二人が人生の再起を賭け、ボクシングの新人王戦を目指す――。
「"殴られ屋"をするワケあり中年男と愛に見捨てられた不良少年が、ボクシングを通して自分を取り戻そうとする、それぞれの姿が映し出されます。
互いに見知らぬ二人が、双方向から決勝戦に向かって近づいていく展開が、観る者の動悸を速めます。そしてラスト、失った大切な家族への思いを内包する、絶対に勝たねばならぬ重い一撃ごとに、もう涙が止まりません!」(映画ライター 折田千鶴子さん)
民主化に至るまでの長い闘い
『タクシー運転手 約束は海を越えて』
’80年、民主化を求める民衆デモを軍が武力鎮圧。多数の命が犠牲になった光州事件を背景に、事件を伝えようとするドイツ人記者を、危険な事件現場まで送り届けたタクシー運転手の、実話をベースに映画化した大ヒット映画。
「韓流ドラマからもうかがい知れる今のおしゃれな韓国が、"こうして戦った末に生まれた社会なんだ"と再認識できる、韓国近現代史を知るには最適な一作。
"今、負けていても次は勝とう""幸せは戦って勝ち取るもの"といった思いも新たに抱ける作品です」(ノンフィクションライター 吉崎エイジーニョさん)
知的障害と冤罪、そして母
『母なる証明』
貧しいながら母(キム・ヘジャ)と息子(ウォンビン)は幸せに暮らしている。ところが女子高生殺害事件で、知的障害の息子が逮捕される。無実を信じる母は、冤罪を晴らそうと奔走するが。
「母の愛という言葉では収まりきらない、母親というものの業の深さ、善悪を超越したそれに背すじがスッと冷える愛憎サスペンスです。
社会での"知的障害"の扱いに憤慨しつつ、それを逆手に取った結末の怖さに思わず声を失います。すべてのシーンに意味がある、『パラサイト』のポン・ジュノの才能、真に恐るべしです」(映画ライター 折田千鶴子さん)
「観ていて胸がつぶれそうになり、観た後もいろいろな思いがずっと頭を巡る・・・そんな作品です!」(編集ぷーすけ)
ライフタイムベスト級に大好きな一作
『息もできない』
父の暴力の中で育ち、自分も暴力を通じてしか他者とコミュニケートできなくなった借金取りのサンフン(でも甥っ子には優しい)。
ベトナム戦争で心を深く病んだ父、金をせびる弟と暮らす女子高生のヨニ。それぞれの家庭のシーンは息が詰まりそうなほど容赦なく描かれます。
だからこそ、偶然出会った二人が悪態をつきながらも心を通わせ、互いに癒し合っていく過程がとても美しい。きっと今、近くにもいる「幼い頃のサンフン」に、自分ができることは?と考えさせられます。
戦争や思想に翻弄されながら無心にタップを踏む姿に号泣
『スウィング・キッズ』
舞台は朝鮮戦争時の米軍の収容所。対外アピールのために捕虜や黒人下士官を寄せ集めて作られたタップダンスチームが、奮闘する物語。
主人公の北朝鮮兵士を演じるのは大人気アイドル、EXOのD.O.(ディオ)。彼が本当に素晴らしくて、タップを踏み始めると、その姿をいつまでも見ていたいほど。
特に、時代や国や思想にがんじがらめになりながら自由を渇望するように踊る中盤のシーンは、全身が沸き立つように興奮します! 劇中の名ゼリフ「ファ●●ン・イデオロギー」に激しく同意!
「普通」って?「幸せ」って?と問いかけてくる恋愛映画
『オアシス』
国際的に評価の高いイ・チャンドン監督作。交通死亡事故で服役していた社会になじめない青年と、その被害者の娘で脳性まひで四肢が不自由な女性の、ささやかな恋を描く。
(当然と言うべきか)周りからの理解は得られず、それゆえに、二人のいる場所が小さな小さな楽園のように温かく映ります。
周囲の人々はかなり冷たく(ひどく)見えるのですが、でもあなただってそっち側でしょ?と問いを突きつけられているようでもあります。主演の二人、特にムン・ソリの演技は声を失うほどすごい。
取材・原文/折田千鶴子
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。