性差別をしているつもりはなくとも、日常の中で、つい、口にしてしまったり、考えてしてしまう「男の子だから」「女の子だから」。
その言葉にはどんな気持ちが隠れているのでしょうか?
ジェンダーに詳しく、東京都男女平等参画審議会委員(第5期)などを務めるフリージャーナリストの治部れんげさんと、現役ママ3人が"男の子"女の子"の子育てについて話し合いました。
この記事は2020年1月7日発売LEE2月号の再掲載です。
多様性を大事にしたいけれど…
"男の子"女の子"戸惑い子育て座談会
Kさん 5歳の女の子、1歳の男の子ママ。娘が、教えていないのに、ピンクやキラキラなもの、ネイルなどに興味を持つことが不思議……。 |
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Oさん 9歳の男の子、6歳の女の子のママ。自身がかわいい服装が苦手で性差別に抵抗しつつ、娘には女の子らしい習い事をすすめる一面も。 |
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Nさん 2歳の女の子のママで、第2子を妊娠中。第1子の妊娠中に義母に性別を聞かれた際に「男の子だと思ってたのに」と言われモヤモヤ。 |
女の子はピンクが好き?色でジェンダーを考える
治部 わが家には11歳の男の子、8歳の女の子がいるのですが、娘が年中ぐらいのときにピンクが大好きになったんですね。ズボンもシャツも、時には靴まで全身ピンクなんてことも。「女の子らしすぎる」と思う一方で、本人の自主性も大事にしなければと複雑でした。皆さんはそういった経験はありますか?
K まったく同じで、娘が2歳頃にピンクやキラキラしたものなど、かわいらしいものに興味を持ち始めたんです。私自身は、妊娠中に性別は聞かずに、赤ちゃんの間は白や黄色など中性的な色を選んで着せていたのに。不思議でした。
N 私も「女の子は赤いランドセル」のように、性別で色が決まるのはどうなのかなとずっと疑問。
O うちは9歳の息子がランドセルを選ぶときに「赤がいい」と言ったんです。戦隊ものが好きなので、リーダーの赤がかっこいいと思うみたいで。
でも「男の子で真っ赤なランドセルはちょっと」と私が思ってしまって、黒に赤いステッチが入ったものをすすめました。自由に選ばせてあげたいけど、親になるといろいろ考えてしまって……。
治部 どこまで尊重するか、悩みますよね。色のことはジェンダーについて考えやすいと思います。新潟県の女性財団が作った冊子のように、「男だからピンクはダメということはない」などと子どもと一緒に学べるものも。行政でもこういった取り組みは増えていて、社会も少しずつ変わってきているなと感じますね。
N なるほど! 最近は、学校でもジェンダーについて教えてくれるのですか?
治部 先生にもよるみたいですが、私の息子の学校では、第二次性徴の授業の際に「男だから、女だからと決めつけない」という話があったそうです。ほかにも、名簿が男女混合になっている学校も増えてきました。以前よりもダイバーシティや個性が尊重されつつあると思います。
男女差なく育てたいと思っても、親として葛藤も…
治部 それはよくわかります。私も子どもたちが夏に素っ裸でいたりすると、息子は許容できるのに、娘には「早くパンツをはきなさい」と言っちゃいますからね。
K 自分の身を守ることを教えなければ!と焦っちゃって。
治部 これはジェンダー“差別”ではなく“区別”に入ると思います。残念だけど仕方がないことですよね。「女の子だから」の一言だと子どもも納得できないと思うので「女の子のほうが変な人が寄ってくる確率が高いから、早くパンツをはいて、スカートのときは足を閉じてください」と、うちではわりと長々と説明しています。
O なるほど。理由をきちんと話してあげたほうがいいんですね。
K 私は正直、娘より息子の将来について心配になってしまうんです。私の妹が音楽家なのですが、経済的に不安定で。娘が同じ道に進みたいと言ったら応援できるけど、息子だと考えてしまう……。
O しっかり働くことも大事だけど、私は息子に家事をしない男性になってほしくない! 今は夫が転勤族で私が働いていないので家事を担っていますが、本当は夫にもっと家事をやってほしいし、息子にその姿を見せておきたい。
治部 いくらジェンダー差をなくしたいと思っていても、子どものことになると葛藤がありますよね。私も、将来息子が私とは正反対の伝統的な価値観の女性を好きになったらどうするかな?と考えたりします。
結局は、子どもは親の思いどおりにはならないし、普段から、先入観なく、ジェンダーについて子どもと話しておくことが大切なのかもしれませんね。
学校のポスターにも男女差?息子とジェンダー採集
N 治部さんは、どんなふうに子どもとジェンダーの話をしているんですか?
治部 テレビでも本でも、ジェンダーの問題や気になる表現ってあふれているので、それを見つけては息子と「これジェンダーだよね」と話しています。息子も自分で気づくようになり、「消防少年」という学校のポスターで、男子は消防士、女子は救急箱を持って応援している絵柄を見て、報告してくれました。まるで昆虫採集のようにジェンダー採集をしています(笑)。
O おもしろいですね! 息子ともやってみよう。
治部 ジェンダーの問題は根深いですよね。テレビや本の話ならまだいいけれど、身近な義父母などの発言にはモヤモヤするはず。いつも怒って戦っているとつらくなってしまいます。家庭の中では、ジェンダー採集ぐらいの感じで、うまく笑いの要素を入れるのがいいかもしれませんね。
ただ、最近は子どもたちのネガティブな発言も増えているんです。娘が男の子がうるさいと「これだから男子はいや」とか、息子のクラスで女の子同士で物を隠す陰険な嫌がらせがあって「女はめんどくせえな」とか。今はまだ見守っていますが、明らかに差別的な発言や扱いがあったら、親がしっかり言ってあげることも必要かと思います。
K “区別”と“差別”の違いが難しいですね……。成長するとそういう機会も増えそうですが、現段階だと、5歳の娘は男女ごちゃまぜで、楽しそうにおままごとをして遊んでいます。男の子が料理をして、女の子が「私、今日警察官なの」と言って出かけたり。
治部 私も、医大の入試で、女子の点数が下げられた問題が衝撃で、息子に聞いてみたんです。息子は「そんなのクソだね」と。大人になると男性、女性の役割を必要以上に意識してしまいますが、子どものほうがフラットに考えている。
N なるほど、勉強になります!私も子どもが大きくなったら意見を聞いてみたいな。
治部 これをいいと思う人も悪いと思う人もいるけどどう思う?と質問を投げかけてみて。自分が抱えるジェンダーのモヤモヤを、子どもと共有するのはおすすめです。
撮影/齊藤晴香 イラストレーション/久保夕香 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年1月7日発売LEE2月号『言ってませんか?「男の子だから」「女の子だから」』の再掲載です。
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