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映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

ムロツヨシさんが超絶口の悪い赤ちゃんに!?  映画『ボス・ベイビー』で声優主演デビュー!

  • 折田千鶴子

2018.03.20

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初のアフレコに挑戦した感想は?

今や誰よりも忙しいと言われる俳優のムロツヨシさんが、な、何と“見た目は可愛い赤ちゃんなのに、中身はおっさん”の役で、声優初にして主演に挑戦されました! 皆さんも既にCMなどでご存知かと思いますが、世界中で大ヒット(世界興収540億円超え!)した『ボス・ベイビー』です。

実はLEE本誌4月号でも、最後の最後まで『リメンバー・ミー』と『ボス・ベイビー』、どちらを紹介するか悩みに悩んだのです。結局、本誌での紹介を泣く泣く諦めた『ボス・ベイビー』ですが、今回 “ボス・ベイビー”をアフレコされた、ムロツヨシさんにお話を伺えることになり、もう狂喜乱舞です!!

 

ムロツヨシ  1976年1月23日、神奈川県出身。東京理科大学を3週間で中退し、俳優養成学校に。 99年より単独で舞台活動を開始。『サマータイムマシン・ブルース』(05)で映画デビュー。08年より脚本・演出・出演を務める舞台「muro式」を定期開催。近年の映画出演作に、『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』『DESTINY 鎌倉ものがたり』(すべて17)など。公開待機作に、『50回目のファーストキス』(6月1日公開)、『空飛ぶタイヤ』(6月15日公開)など。 ヘアメイク:灯(ROOSTER)   スタイリスト:森川雅代(FACTORY1994)     撮影:中澤真央

ムロさんと言えば、アクの強い役を絶妙に演じられ、「放送中なんですけど?」とツッコミたくなるほどの超絶アドリブで知られていますが、ご本人は……それはもう楽しくて楽しくて、動画でインタビュー風景を流せないのが悔しいほど、軽妙なトークでこちらが楽しませていただいちゃいました。

ハリウッド女優も撮影したことのあるカメラマンの中澤さんは、「これまでで一番緊張した! だってムロさん、オーラがすごいんだもん!!」と息も絶え絶えの感想を漏らしたほどです。

そんなムロさんに、『ボス・ベイビー』の魅力をたっぷり語っていただきましたよ!

 

子供の頃って時間がゆっくり流れていましたよね!

<STORY>7歳のティムの元にやってきた弟の赤ちゃんは、普通じゃない。黒いスーツにブリーフケースを抱えている。ところが何とこの赤ちゃん、極秘任務を抱えていたのだ! それは……世界の愛情シェアを拡大する「子犬」たちから、「赤ちゃん」への愛情を奪還するという任務だった!

『ボス・ベイビー』
3月21日(水・祝)全国公開
©2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.
配給:東宝東和

――まずは、映画の感想を教えてください。

「特に前半の子供たちの喧嘩のシーンが、大好きなんです。というのもそのシーンで、確かに子供の頃って、時間がすごくゆっくり流れていたな、と感じて。子どもたちのやり取りから、何となく昔を思い出せる、振り返れる映画なんだな、と思いました。本当に子供って純粋で、色んなものを怖がっていたし、色んなことを喜んでいたな、と思いました。僕、“作り物くらいにいいお話”が大好きなんですよ。まさに『ボス・ベイビー』は、何ていいお話なんだろう、何ていい映画なんだろう、と思いました。しかも大人が観ても楽しめる作りになっているのが、素晴らしい

――赤ちゃんであるボス・ベイビーを演じた、面白みはどこに?

「赤ちゃんなのにおっさん、というところが、まずもって面白いですよね。普通の役者としてのお芝居では、やれる仕事や役ではないのが大きな魅力でした。難しいというよりも、赤ちゃんになる、ということは、やり甲斐の方が大きかったですね」

――でも、いつもの芝居と勝手が違った点は少なからずありますよね?

「例えば「痛がる」「腕を組んでフンと言う」等々、普通のお芝居は実際に肉体を動かして演じますよね。動きと一緒に出る“声や音”は、アフレコではやっぱり少し難しかったです。多少、その場で体を動かしても、そうするとリアクションが少し遅れるとか。まだまだ経験や技術が足りないな、と思いましたね」

 

アドリブなんてやったことありません……嘘です(笑)。

――声優の仕事って、絵の口に合わせてセリフを言わなければならないですよね。普段のお芝居では、アドリブを連発されるムロさんですが……。

「確かに絵が喋っているコマ数に合わせ、口の動きに少しでも近い考え抜かれたセリフを言う、という忠実さが一番必要でした。でも、これだけは言っておきたい。アドリブ好きに見えるようですが、そんなことは決してありません! だって僕がやった芝居の台本、読んだことないでしょう? すべてアドリブに見せかけているだけです

「いつものお芝居も常に一字一句、しっかりと台本を読み込み、セリフを覚え、アドリブでやっているかと思わせるくらいに自然になるように、会話の妙を僕は作り上げているわけです。…………嘘です!! ごめんなさい

「アフレコでちょっと遊べたのは、痛がるところ、転ぶところ、叫ぶところ、くらいでしたね。そこでは色々とやってみて、半分不採用、半分採用という感じ(笑)。加えてボス・ベイビーが背中を向けた瞬間は、口の動きが見えないので、こっちのもんですからね。チャンスとばかりに色々と考え、採用・不採用で闘いました

聞いているスタッフさん等々、周りはドッカンドッカンの大爆笑の中、すました顔で軽快にうそぶくムロさん。本当に会話の妙が素晴らしいのです。

 

 



赤ちゃん返りって、よくある話なんですってね!

兄弟のお子さんをお持ちの皆さんは、誰もが経験していることでしょうが、ムロさんは“赤ちゃん返り”に素直に驚いていらっしゃいましたよ!

――7歳のティムが、赤ちゃんを認められない物語に、思わず共感しますよね。

「とってもいいお話。でも、本当にあるんですってね。弟や妹が生まれた時、上の子が赤ちゃん返りするって。さっきスタイリストさんやヘアメイクさんの話を聞いていたら、まんま『ボス・ベイビー』の話かと思いましたよ! ティムがボス・ベイビーに対してジタバタするのって、赤ちゃん返りに近い物語ですからね。すべてはティムの妄想であり、彼が弟である赤ちゃんを受け入れるまでの妄想の話ともとれる。子供の成長、通らなければいけない道、その痛み、みたいなものを描いているこの映画、スゴイですよ!」

――赤ちゃんが生まれてくる前の“赤ちゃんの製造工場”も素晴らしいですよね。生まれる前の記憶がある人って、いるようですが。

「一切、僕にはその頃の記憶ってないんですよ。3、4歳頃の記憶として、両親が喧嘩してお母さんがトランクに荷物を詰めている、ってドラマのような記憶しかないですからね。すみません、いい話じゃなくて(爆笑)ハハハハハ! 朝から刺激的な話をしちゃって、すみません。でも事実ですから~」

お腹をよじらせて笑いながら、ムロさん、止めてください~!と悲鳴を上げたいくらい、絶妙なぶっちゃけトークを、ボケとツッコミを自らされて繰り広げられるムロさん。何かショーを見ているような気分さえしてきました!

 

これまで“声の芝居”を避けてきました

――今回のアフレコを通して、役者として何か生かせるものはありましたか?

「実は、声だけのお芝居って、これまで避けて来たんですよ。演劇をやって来た者からすると、声に頼ってしまうと、頭でっかちのお芝居になってしまう恐れがあると言うか。例えばテレビなどのお仕事の場合は“カット割り”と言って、映されている部分でのお芝居もありますよね。でも舞台は、常に全身をどの角度からも見られていると考えなければならない。声よりも、“ただそこに居るという状態”を作るお芝居というか」

 

 

「でも今回、声だけの仕事を経験してみて、逆に声だけでは伝えられない、その力が自分にまだない、と感じました。セリフをどう言おうかあまり考えたことがなかったのですが、それを考えるきっかけになりましたね。それを今後のお芝居に重ね合わせていくかは、まだ分かりませんが」

――とにかく多忙な今、仕事をどのように選ばれていますか?

「基本、いただいた仕事はすべてやりたいです。スケジュールが重なって、やむなくお断りをすることもありますが。ただ、福田(雄一)さんの作品には「出続ける」と決めていて、以前も通行人A、あるいは電車でただ乗り合わせただけの人、という役で出たこともありました。もう戦友なので、そこは僕の中で決めているだけです」

「ただ、方向性としては、少し偏った役が多い感じもするので、そこは今後、考えていきたいですね。例えば、今後もアニメの仕事をやらせていただけるなら、もうイヤなくらいに“いいお父さん役”をやってみたいです。だって、そんな役、僕に来ないですから。あれ、笑ってますね~。普通は“そんなことないですよ”と言うかと思ったら、あれ、笑ってるよ~

またも真顔でツッコんで下さるムロさんに、映画スタッフ等々20名近く、その場に居合わせた人が大爆笑の渦です!!

 

スパゲティが食べたい。味覚は赤ちゃんのまま

――さて、本作では“赤ちゃんvs子犬”の愛情争奪戦を描いていますが、目の前に今、可愛い赤ちゃんとワンコが居たら、ムロさんのハートを掴むのは、さてどっち?

「えー、今? うわー、だって、母親が居ない状態(独身)で赤ちゃんを選ぶわけにはいかないし、責任感じちゃうから、やっぱり犬を選びますよ。犬だったら、同伴OKの飲み屋に連れて行って、レモンサワーかっくらえますが、相手が赤ちゃんだと、そんなこと出来ないし。それに仕事の間、もし飼うなら預かってあげるよ、って飲み屋のお母さんが言ってくれているので。実はちょっと、犬飼いたい願望あるんですよ。やっぱり一人で夜が寂しいですから。きっと散歩もするようになる、って目論見もありますが」

 

――この作品を経て、父親願望は芽生えましたか?

「これまで結婚願望は「ない」と即答していましたが、今は「ある」とは言えないまでも、即答はなくなりました。むしろ結婚願望より、父親願望の方が強いですね。だって今、友人がみな父親になっていて、誰かの家に遊びに行くと必ず子供たちがいて、そろそろ“ムロ君!”って懐いて来てくれ始めたので、いいな、と」

――では最後に“赤ちゃんなのに中身おっさん”に引っ掛け、ムロさんの今でも赤ちゃんの部分、おっさんな部分を教えてください。

「僕は昔から、それこそ20歳の頃からおっさんだったからなぁ。一人でテレビのある居酒屋を探し求め、テレビを眺めながらお酒を飲む、って相も変わらずおっさんです」

「赤ちゃんなのは……結局、スパゲティが食いたいんですよ。ハンバーグが食いたい、カレーが食いたい、カツが食いたい、ステーキが食いたい。ずっと変わらず味覚は幼稚園児みたいです。今すぐスパゲティ・ナポリタンが食いたいです!」

打てば響くというよりも、アホなことを質問しても自ら響いて返して下さるムロさんのお人柄に、惚れ惚れです! そんなムロさんが絶妙に“おっさん赤ちゃん”を演じられる『ボス・ベイビー』は、3月21日(祝・水曜)から全国ロードショーされます。ぜひ劇場で、赤ちゃん化したムロさんの毒舌を楽しんでください!

『ボス・ベイビー』公式HP  http://bossbaby.jp/

 

 

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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