はじめて安房直子さんの作品に触れたのは
遡ること小学校の国語の教科書で習った「きつねの窓」。
きつねに染めてもらった
青い指でこしらえたひし形の窓から見える景色が切なくて
その当時の私は小学生ながら
じわりと心に押し寄せるものがありました。
匂いだったり、色だったり、空気や風を感じるのが
安房さんの作品に共通する素晴らしさだと思います。
みどりのスキップ
満開の桜の中に住む
薄いさくら色の着物を幾重にも着ている
花の精の花かげちゃん。
みみずくは花かげちゃんの顔を
一度きりしか見たことがないけれど
花が散ったら消えてしまうことに怯える
花かげちゃんのために
雨が降らないように
風が吹かないように
わるものが忍び込んであの子をさらっていかないように
そして花の季節が決して終わらないようにと
花かげちゃんを守ることに決めたのです。
心がふわっとさらわれるような感覚に
誰も、この桜が満開の森へ侵入してこないよう
ときどき、きつねの奥さんが淹れてくれる
苦いコーヒーを飲みながら寝ずの番をするみみずく。
それでもトット トット トット トット と
否応なしに心地良いリズムに乗ってやってくる
みどりのスキップ。
ちょっと乱暴な物言いのみみずくだけれどその懸命さや
季節の雨や風といった自然の営み、
そして淡く美しい季節が巡る様子に
胸がいっぱいになります。
日本の移ろう季節の美しさを感じさせてくれる絵本です◎
幾度目かの春に
初めてこの本を娘に読み聞かせた時は
みどりのスキップがなんであるかわからなかった娘も
何度目かの春を迎えたある日、
「みどりのスキップって」
「新緑とか若葉のことなんだね」と。
本を通して娘の心の成長の瞬間に
立ち会うことができた喜びといったら!
叙情的な表現の豊かさ
日本語で花の終わりを表現する言葉はそれぞれ違っていて
桜は「散る」、梅は「こぼれる」、菊は「舞う」、
牡丹は「崩れる」、椿は「落ちる」。
この本を読む度に日本語の表現の豊かさと
言葉の持つ美しさを感じずにはいられません。
出久根さんの描く、桜満開の木の枝をしっかりと足で掴み
ギロッとこちらを見つめる一羽のみみずくの表紙の絵。
安房さんの描写と相まり素晴らしい一冊になっています。
puketti
40歳/夫・娘(8歳)/手づくり部・美容部/シンプルなもの、上品なもの、特に器やインテリアが好きです。日々の小さなしあわせを大切に暮らしています。
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