LIFE

私のウェルネスを探して/大井美代さんインタビュー後編

セレクトショップオーナー大井美代さんが「乳がん治療」と「娘3人の芸能活動サポート」を両立しながら得た気付き

  • LEE編集部

2026.11.08

この記事をクリップする

大井美代さん


引き続き、セレクトショップ『HOEK』オーナーの大井美代さんに話を聞きます。撮影は引っ越したばかりの大井さんの自宅で行われました。「まだ片付いていなくて」というリビングには、温かみのある洗練された家具や小物類が並び、まるでインテリアショップのように心地良い空間です。家には在宅で授業を受けていた次女がおり、撮影の合間には和やかな時間が流れていました。

後半では、2年前に発覚した乳がんの体験談、今も続いている治療や負担の大きさについて話を聞きます。病気を経て感じている生活習慣の改善、フル活用しているAIの上手な使い方も教えてくれました。(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読む)

エコー検査に映るしこりには血管が張り巡らされ、“ドクンドクン”と脈打つ様子がとても怖かった

2024年、大井さんは乳がんが発覚します。きっかけは寝落ちした子どもをベッドに運んだ時、ベッドのポールが左胸に当たったことでした。何か硬いものが当たるのを感じ、手で触ってみるとしこりがあることに気づきます。

「実はその2年前にしこりには気づいていました。触るとちょっと痛くてコロコロしている。三女が卒乳する時期だったので胸が張っていたこともあり、マンモグラフィ検査ができないと言われてエコー検査だけしてもらいました。その時は“乳腺炎”と診断されました。だけど今回は触ったことのない感覚でしこりが動かない、しかも硬い。違和感を覚えました」

大井美代さん

市区町村の乳がん検診まで待つことも考えますが、どうしても気になり2日後に乳腺外科を受診。エコー検査に映るしこりを見ると、血管が張り巡らされ“ドクンドクン”と脈打つ様子がとても怖かったそうです。

「心の中で“何これ……見たことない”と思った瞬間、先生の表情が一変して深刻になりました。焦り、緊張感というか。エコーで何度もいろいろな角度から見た後に“針検査(針生検)しますね”と言われて、すぐに検査してもらうことに。先生の説明によると“悪性のもののまわりには血管が張り巡らされることが多くて、ちょっと怪しいかな”ということでした。検査結果が分かるまでの2週間、本当に気が気じゃなかったです」

一番強く感じたのは、ここまで続けてきたことや頑張ったことがなくなってしまう悔しさ

2週間後に結果を聞きに行くと「残念ながら悪性でした」と伝えられます。

「“ああ、そっか”とはなりましたが、泣いたりすることはなかったですね。すぐに病院の紹介状を書いてもらって再検査をすることになりました。予約を取れたのが1カ月後、そこでCT、MRIなどの検査を行いました。すると肝臓、そして心臓と背骨の間あたりにも影があり心臓の裏のほうは調べられない場所で、そこががんならステージ3、肝臓ががんならステージ4と言われました。そこからまた検査があり、検査結果を1カ月待ったのですが、その時間が一番きつかったです」

息苦しさ、寝ていてもすぐに目が覚める。朝が苦手なのに不思議と早起きしてしまう。空気が薄く息苦しい感じが続いていたそうです。“これからどうなっちゃうんだろう”“子どもがまだ小さいのに”“ここで終わってしまうのかな”というさまざまな感情が押し寄せます。

大井美代さん

「不安、死んだらここにいられなくなってしまう寂しさ。説明できないいろいろな感情があったように思います。一番強く感じたのは、ここまで続けてきたことや頑張ったことがなくなってしまう悔しさでした。『Netflix』のドキュメンタリー『死後の世界を探求する』を見て、意識の生まれ変わり、死後の世界はあるのかもしれないと思って少し気持ちが楽になりました。子どもに伝えるのは辛くもありましたが隠さずありのまま話しました。“治療で髪がなくなるんだって”“おばあちゃんが手伝いに来るから手伝ってあげてね”と。でもせわしない日常の中ではお互い深刻さが抜けて、ついいつも通りのテンションで“私、がんなんだけど(笑)ちゃんとしてよー!!“みんないつかは死ぬんだし死んだらそこのファミマの上で待ち合わせしようね!!”くらいに笑って話せる瞬間もあり、気楽な雰囲気だったのは良かったと思います」

部分摘出手術、ホルモン療法、薬物療法を経て体調が安定するも、今度は左腕の浮腫に悩まされる

検査の結果、肝臓はがんではなかったため乳がんは「ステージ2か3」と判明。しかし進行性の速いがん(ルミナルB・グレード3)でした。「楽観できる状況ではなかったのですが、医師からの言葉もあり“これは勝負できる”と思えました」。最初の4カ月間は抗がん剤を投与し、1カ月後に手術を行いました。抗がん剤が効いたおかげでがんは見えなくなっていました。

「私の場合、進行は進んでいるものの部分摘出と全摘出の予後に違いがないとのことで部分摘出となりました。左脇のリンパも少なくとも4個以上転移をしていたとのことで、ごっそりとまとめて摘出しました。間隔を空けて25回の放射線治療も受け、その後はホルモン療法を10年間行うことになりました。最初の2年間はベージニオという薬物療法も並行していましたが、ベージニオは熱や嘔吐などの副作用が強く、白血球の数値が半分くらいに落ちました。途中薬の量を変えながら今も続けています」

大井美代さん

術後の体調が安定してくる中、次に問題になったのが浮腫でした。

「自分で症状が気になっていたのですが、かかりつけの大きな病院に専門医がおらず更年期で片付けられてしまって。でも“絶対に浮腫だ”という感覚があり、自分で専門医を調べて診てもらったところ、やはり浮腫になっていました。浮腫は放っておくとその部分がぱんぱんに膨れ上がり一生戻らないそうです。診てもらった時、すでに腕の側面のリンパ管が固まってきていたようで、“今分かって良かったですね”と医師に言われました。すぐに静脈とリンパ管を切ってつなげる手術を行いました。その後1カ月ほどで痛みと腫れは落ち着きました。あの時、本当に自分を信じてよかったと思います。専門医に診てもらうことがどれだけ大切かが身に沁みた一件でした」



手術が終わっても通院や服薬が長年続き、長期的な金銭的負担ものしかかる

がん治療に付随する問題として、治療にまつわる金銭面の負担の大きさがあります。手術が終わっても通院や服薬は続き、治療期間の長さを考えると長期的な負担がのしかかることが分かります。

「治療って実はすごくお金がかかるんですよね。べージニオの薬は1錠8000円ほど、私の場合は朝夕一日2錠服用しなければいけません。放射線治療は1回で5万円ほどかかります。保険適用なので負担は少ないとはいえ、お金がかかるのは事実です。同じ治療をしている人で“治療にお金がかかるので子どもにお金がかけられなくなる”“やりたいことができなくなる”と言っている方がいて、人生が狭まっていく感じがして辛いなと思いました。

大井美代さん

夫の母が保険の仕事をしていたので一時は保険をフル装備で入っていたのですが、義母が亡くなった際に見直したため、病気が分かった時私だけが保険に入っていない時期でした。ちゃんと入っていれば……という後悔もあるので、最低限でいいので保険は入っておいたほうがいいなと痛感しました」

辛い体験をしたからこそ今の私がある。年齢を重ねたことで、色々なことが“大したことないや”と達観できるようになった

大井さんは病気の体験をnoteに綴っています。病気を経て改めて感じたこと、学んだことをこう話してくれました。

「中学校時代誰とも話せない辛い時期があったり、今回の病気も辛い体験ではありました。だけどそれを経験したからこそ今の私があり、理解できることが増えたんじゃないかと思います。いつか人生が終わるということを経験することは少ないと思いますが、改めて時間を大切にしたいと思いました。年齢を重ねたことで、色々なことが“大したことないや”と達観できるようになったことも良かったです。あと伝えたいのは、検診はきちんと受けてください、気になるところがあったらすぐに病院に行ってくださいということですね」

大井美代さん

noteを書く時に活用したのがAI(ChatGPT)です。自分が伝えたいことを『ChatGPT』にまとめてもらい、それを添削する形で書きまとめました。今では生活に仕事に大活躍、便利で欠かせないツールです。

「数年前から『ChatGPT』は使っていて、ちょっとした困りごとや悩みごと、子どもから“この言葉の意味は何?”と聞かれて分からなかったことを聞いていました。目的地までの行き方や乗り換えの仕方、旅先では翻訳アプリよりも使いやすくて便利でした。もちろん間違ったことを言ってくる場合もあるので整合制が問われることには、きちんと裏付けをとるようにしています。あとは“この返しは相手にきつく伝わるかも”と心配な時はメールの添削をしてもらったり、言いたいことがまとまらない時に要点をまとめてもらったり。人や家族に相談しにくいこと、ただ聞いてもらいたいことを話すのも良いですね。子どもの仕事まわりでは情報の取り扱いを慎重にしつつ個人的な疑問や不安を聞いてもらったり、子どもの出ている作品への反応やニュースを調べるのにも便利です」

変化を受け入れながら、ストレスは溜めずに最小限に、親子でこれまでできなかったことを楽しめたらいい

病気を経て、改めて見直したいと思っているのが生活習慣です。子どもが芸能の仕事をしていると、どうしても生活が不規則になってしまうことが多いそうです。体調面や生活の変化を受け入れながら、ストレスを溜めず規則正しい生活をすることが大事だと実感しています。

「早寝早起き、睡眠をしっかり取る、食事をきちんとバランスよく食べる。生活を改めてきちんと立て直していきたいと思っています。自分を整えることで子育てや子どもたちにも良い影響を与えられるように、もう少し上手に時間を使っていけたらいいですね。

大井美代さん

お店をクローズして引っ越しもして。新しい家では子ども部屋を作れたのが良かったですし、家族で過ごす時間も増えました。車を持ち活動範囲が広がったので家族でのお出かけももっとしたいです。実は抗がん剤治療で髪が抜けた後、髪質が変わってしまったんですよね。直毛だったのがクセが出てパーマをかけたような感じになりました。ヘアスタイルもファッションも変わりましたね。変化を受け入れながら、ストレスは溜めずに最小限に、親子でこれまでできなかったことを楽しめたらいいですね」

My wellness journey

大井美代さんに聞きました

心のウェルネスのためにしていること

「子どもが芸能の仕事をしていると、スケジュール管理が一番大変です。オーディションから体調管理まで、当日元気に行けるようにするのはなかなか大変で気苦労も多いです。Googleカレンダーを活用して子どもごと、案件ごとにタスクを入れて管理していますが、スケジュール管理がストレスなくできるようになるのが目下の課題です」

体のウェルネスのためにしていること

「病気になってから生活習慣を改善しました。それまでは夜中2時に寝て4時に起きたり、寝ないまま子どもの仕事に同行することもありました。夜更かしがとにかくひどかったので、睡眠をしっかり取ること、水分を摂ること、食生活も乱れていたので健康的な食事をするように心がけています。野菜や果物がたっぷりとれるようにジューサーを買って使っています」

インタビュー前編はこちらから読めます

大井美代さん

Staff Credit

撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
ファッション、ビューティ、インテリア、料理、そして読者の本音や時代を切り取る読み物……。
今読者が求めている情報に寄り添い、LEE、LEEweb、通販のLEEマルシェが一体となって、毎日をポジティブな気分で過ごせる企画をお届けします!

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる