私のウェルネスを探して/大井美代さんインタビュー前編
セレクトショップオーナー兼三児の母が、我が子の芸能活動サポートに注力。大井美代さんが明かす「子役とステージママのリアル」
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LEE編集部
2026.11.07

今回のゲストは、セレクトショップ『HOEK』オーナーの大井美代さんです。大井さんは2015年にセレクトショップ『HOEK』(フーク)を東京・表参道にオープンしました。2019年に神宮前に移転、今年5月に実店舗はクローズしオンラインショップのみとなりました。 ショップ経営と並行して三姉妹の子育て中ですが、お子さんたちは芸能の仕事をする子役としても活動中です。
前半では、お店をオープンするまでと実店舗からオンラインショップにシフトした理由、芸能の仕事をするお子さんのサポートについて話を聞きます。芸能の仕事をする子どもの母親を“ステージママ”とも呼びますが、ステージママならではの苦労や葛藤、喜びについても語ってもらいました。(この記事は全2回の第1回目です)
大手セレクトショップ勤務時代の同僚だった夫と「ちょっと変わったものが好き」と意気投合
大井さんは京都府生まれ、長崎県育ち。東京の服飾系専門学校への進学を機に上京、ファッションやインテリアのセレクトショップ勤務などを経て、2015年に夫の大井智史さんと『HOEK』をオープンします。
「夫とはセレクトショップで出会い、お店でVP(ビジュアル・プレゼンテーション)の仕事を一緒にすることが多く会話をするようになりました。そこで彼のセンスや好きなものを知り、お互いにちょっと変わったものが好きだと判明しました。付き合っていた頃には“いつかお店をやれたらいいね”と話していたのもきっかけの一つです」

大井さんは高校時代からファッションやインテリアが好きで、“将来はファッションの仕事に就きたい”と思っていました。しかし親からは大学進学を勧められ、衣食住を学べる地元の短大へ進学。その後ファッションへの志を忘れられず、卒業後に東京の服飾系の専門学校に進みました。個性豊かな才能のある仲間とクリエイティブなことに関われる幸せを感じ、毎日がとても刺激的で楽しかったと言います。
『HOEK』はインテリアやアパレル、アクセサリーなど生活にまつわるものを取り扱います。都会的でありながらどこかぬくもりがあり、シンプルながらアクセントもある。機能的かつ素材やデザインにもこだわったものばかりで、一つひとつに物語を感じるアイテムが揃います。さまざまなブランドや作り手と一緒に販売イベントなども行ってきました。
夫婦でセレクトショップ『HOEK』実店舗を10年間継続。コロナ禍を期にオンライン一本に
プライベートではお店をオープンする前年に長女が誕生、オープンの翌年には次女が誕生したため、大井さんは育児がメインに。智史さんがお店全般を担当するようになります。そんな中2020年からコロナ禍の影響でお店が休業、打撃を受けます。その後営業再開し順調に続けていたものの収支に不安があったため、税理士をしている大井さんの妹に相談しました。
「妹によれば、お店の売り上げは順調に伸びているけれど、コロナ禍で借りたお金やお店を保つための固定費が重くのしかかっている。それが負のサイクルになっているからお店を手放すと健全かもしれない、と言われました。お店が無くなることに寂しさもありましたが、これまで実店舗を10年続けてきたおかげでブランディングもでき、お客様への認知も広がってきた実感がありました。そろそろ手放してもいいのかもしれない、とも思えました」



それまで店舗運営に関しては夫がほぼ一人で続けてきたことに対して「孤独だったと思います」と大井さんは言います。土日は営業、休みは平日になるため、ゆっくり子どもと過ごす時間が取れませんでした。実店舗中心だったためオンラインショップにまで手が回らなかったことも気になっていました。それらを踏まえ、今年5月に実店舗をクローズ。オンラインのみの営業として再スタートを切りました。
「そのような変化の中でも、どのブランドも変わらず取り引きさせてもらえることになりました。それもこれまで良い関係性を築けていたからで『HOEK』で扱わせてもらうことにメリットを感じてくれたからだと思います。ありがたいです」
今後は、オンラインショップにアイテムを増やしながら、オリジナルウェアやグッズの展開、目的別ギフトの提案など、新たな取り組みも始める予定です。
三姉妹全員が芸能活動中。お金も時間もかかるので「やるからには真剣に取り組もう」
大井さんは三姉妹の子育てをしながら、子どもたちの芸能活動を支えています。長女は中学生になり、基本的に一人で現場へ行けるようになりましたが、次女と三女にはまだ親の付き添いが必要です。オーディションやレッスンのスケジュール管理から撮影に向けた体調管理まで、親の役割は少なくありません。
「子どもが芸能の仕事を始めたきっかけは、長女が興味を持ったことでした。未知の世界なので悩みましたが、周りに意見を聞きながら体験レッスンに参加したりして、まずは習い事感覚で始めました。お金も時間もかかるので、やるからには真剣に取り組もうと話していました。当時は私がワンオペで子育てをしていたこともあり、次女と三女は不可抗力で一緒に始めた感じですね」

子役が活躍する現場は映画やドラマ、CM、舞台、声優など、さまざまなジャンルがあり、求められるスキルも違います。レッスンは演技とダンスから始まりますが、オーディションに呼ばれやすいように歌やバレエ、ジャズダンス、タップダンス、日本舞踊、ピアノなど、さまざまなことに挑戦してきました。
「挑戦できることがたくさんあるのは面白さの一つです。一方で時間もお金もかかり、一時は自由に過ごせるのが待ち時間と移動時間くらいというストイックな生活でした。大変なことも多かったですが、発表会やコンクールで成長した姿を見られることが励みにもなっていました。後編でお話ししますが、私が病気になってしまったことでこの生活は一旦終了。今は無理のない範囲でできることを続けています。身近にもできることが実はたくさんあるんですよね。本を読むことや作品を観ること、学校の勉強や友達と遊ぶ時間も大事です。演技に関してはとにかく経験がすべて生きてくるから面白いですよ」
オーディションは落ちることのほうがずっと多いし、流れや縁のようなものがある
子役に限らず、芸能の仕事といえばオーディションを受けて役をもらうのが定番です。「オーディションには夢があります。ただ、落ちることのほうがずっと多いんです」と大井さん。挑戦を重ねる中で、結果との向き合い方も変わってきたそうです。
「呼ばれたからには受かるつもりで臨みます。一つの役に選ばれるのは、基本的には一人。最初の頃は“ここまで進んだのに”“あんなに準備したのに”という喪失感がとても大きかったです。それでも少しずつ結果につながり、今では“あのオーディションに落ちたから、この仕事に出会えたのかもしれない”と思えるようになりました。仕事には、流れや縁のようなものがあると感じます。緊張に向き合う力や気持ちを立て直す強さも着実についているように思います。私自身、中学生時代に人前に立てなくなった経験があるので、そうした成長を見るとうれしいです」

大井さんは中学生時代、居場所づくりがうまくいかず辛い3年間を過ごしました。感の鋭さから傷つくことが多く周りに弱音を吐ける場所がなかったため、気持ちを溜め込んで“学校がストレスの場所”になっていたこともあったそうです。
「先生に当てられると声が震えたり過呼吸気味になってうまくしゃべれなかったり。先生にお願いして“授業中に当てないでください”と直談判したこともありました。自分が自分でいられない辛さに耐えかね、中学3年になり初めて親に打ち明けました。当時の記憶はあまりないのですが、ずっと胃が痛かった記憶だけがあります。もし私が子どもたちのような体験ができていたら、少し違った過ごし方や対応ができたかもしれません」
「対価をいただいて演じる責任」「現場で学ばせていただいていること」を理解し仕事に向き合う姿は、我が子ながら尊敬
オーディション合格の知らせには親子で喜ぶ一方、仕事が決まったことへの責任や緊張も伴います。
「台本の中には、人生経験の少ない子どもには理解が難しい内容もあるので一緒に考えながら取り組みます。仕事を終えるまでは家族にも独特の緊張感がありますね。最後は本人が向き合い、乗り越えていくしかありません。経験を重ねることで、長女と次女はずいぶん自立してきたと感じます。対価をいただいて演じる責任と現場で学ばせていただいていること、その両方を理解して仕事に向き合う姿は、自分の子どもながら尊敬しています。これまで“辞めたい”という話が出たこともありますが、続けているのは本人たちがやりがいを感じているからだと思います」

子どもが芸能の仕事に携わることの喜び、楽しみを聞いてみました。
「私自身、映画や音楽などのエンターテインメントに何度も勇気をもらってきました。作品には、人を勇気づけたり、立ち直るきっかけをくれたりする力があると思います。それが一番の魅力かもしれません。子どもたちがさまざまな役を通して自分とは違う人生に触れ、緊張感の中で役を生きることは、間違いなく貴重な経験の一つです。完成した作品の中で、その姿を見られることは親としても感慨深いですね。作品はもちろん宝物ですが、そこに至るまでの過程や学び、仕事で出会った方々や応援してくださる方々との関わりも大切な財産になっています。子どもたちの経験を通じて、初めて知る世界があることはとても新鮮でした。私自身やりたいことはまだいくつもありますし、いつか子どもたちがそれぞれ巣立ったら、お店のことも自分自身のこともまたいろいろと挑戦できたら幸せだなと思っています」
子どもを守りたいし一番の味方でいたいけど、何でも許すこととは違う。「ダメなものはダメ」と伝えるのが親の役目
大井さんが、子育てで大切にしていることは「人を馬鹿にしたり見下したり傷つけたりしてはいけない」。『ダメなものはダメ』と伝えるのが親の役目だと感じています。

「子どもを守りたいし一番の味方でいたい。でも、何でも許すこととは違います。自分の子どもだからこそ、いけないことは“いけない”と伝え、真正面から話し合うことを大切にしてきました。親しい相手には肯定するほうが楽なこともあります。でも大切な関係だからこそ本音で話したり、意見を出し合ったりすることも必要だと思うんです。子どもたちには、おごらず人を思いやり、自分を振り返ることのできる人になってほしい。大人だって完璧じゃない。私自身も同じです。人間『死ぬまで勉強』といいますが、今は子育てを通して色々と気付かされる日々です」
(後編につづく)
My wellness journey
私のウェルネスを探して
大井美代さんの年表
1979
京都府生まれ
1981
長崎県に移住
1997
高校卒業後、長崎の短大へ進学
1999
短大卒業後、ファッションを学ぶために文化服装学院(夜間部)に進学
2002
卒業後、セレクトショップ『ユナイテッドアローズ』、アパレルブランドのデザイナー、長野のヴィンテージ家具ショップ『haluta』などで働く
2007
夫と結婚
2014
長女を出産
2015
『HOEK』を表参道にオープン
2016
次女を出産
2019
『HOEK』を神宮前に移転。三女を出産
2020
三姉妹揃って芸能事務所に所属、活動開始
2026
実店舗『HOEK』をクローズ。オンラインショップのみの営業に

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