LIFE

私のウェルネスを探して/くどうみやこさんインタビュー後編

「子どもがいない人生」=「孫のいない人生」に。くどうみやこさんが模索する「親」「おばあちゃん」という肩書きを持たないシニアとしての生き方

  • LEE編集部

2026.07.19

この記事をクリップする

くどうみやこさん

引き続き、くどうみやこさんに話を聞きます。くどうさんの取材は初夏の美しい緑と明るい日差しが清々しい鎌倉エリアで行われました。古都ならではの雰囲気に加え、海のそばで開放感もある最高のロケーションでした。移動しながら「このお店おいしいんですよ」「ここの和菓子はおみやげにおすすめです」とさすがトレンドウォッチャーとも言うべき高感度で教えてくれるくどうさん。鎌倉がとても好きで、この地に訪れることがウェルネスだと話してくれました。

後半では、子どものいない女性を応援するプロジェクト『マダネ プロジェクト』を15年近く続けてきた中での社会や周囲の変化、活動を続けるエネルギーの源について聞きます。“親”“おばあちゃん”という肩書きを持たないシニアとしての今後の生き方、自身のウェルネスについても伺いました。(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読む

日本はおひとりさまが暮らしやすい国だけど、人生後半戦になってくると不安を感じる場面が増える

くどうさんは夫と愛犬と湘南エリアに暮らしています。以前は横浜住まいでしたが結婚後に自然豊かな現在の場所へ。1日で一番幸せを感じる時間は、朝から出かけてモーニングを楽しむひとときだと言います。

くどうみやこさん

「海が近いので自転車で海辺のカフェまで出かけ、海をながめながらモーニングをいただく。そんな時間がとても贅沢に思います。朝から活動すると気分も爽快で、その日一日を前向きに過ごせるんです。たまに愛犬を連れて海へ散歩に出かけることもあります。一方で年齢を重ねるにつれ夜遅くまで動くのが苦手になったり疲れやすくもなりました。そんな変化も受け入れながら無理せずに過ごすようにしています」

くどうさんはおひとりさま時間を過ごすのが好きだそうです。朝思い立って日帰り旅に出かけたり、行ってみたいお店を訪れたりとひとり時間を満喫しています。著書『誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方』(主婦の友社、2017年)でも触れていますが、日本は世界的に見ても、おひとりさまが暮らしやすい国だと言います。

くどうみやこさん

「欧米はカップル文化なので1人で外食しづらいと言われていますが、日本はおひとりさま市場が成熟しているため、1人でも入りやすい店が増えています。外食もしやすいですし、コンビニやお弁当店など、1人でも使いやすい店がたくさんあります。子どもがいないと時間に制約がないため、自由におひとりさま時間が楽しめますよね。ただ、人生後半戦になってくると老後が見えて心配事も出てきます。全国でおひとりさま向けの終活支援事業が広がりつつありますが、行政サービスや社会の仕組みは家族単位を前提としたものが多いんです。シングルの人や子どもがいない人にとっては不安を感じる場面も多く、まだ社会が追いついていない部分が多いと感じています」

子どものいない人といる人の上手な付き合い方には「想像力」は必要不可欠

インタビュアー(40代・二児の母)が個人的に気になっているのが、子どものいない人といる人の上手な付き合い方。ライフステージが変わるにつれ生活が変わるため、どうしても生活の時間帯が異なり会うことや話すことが難しくなってきます。どのようにコミュニケーションを取るのが良いのでしょうか。

「ライフステージが変わるとライフスタイルが変わるのは当然です。互いを尊重し思いやりながら、ゆるくつながるのが良いのかなと思います。いきなり“会わない?”と声をかけるより“久しぶり、元気?”“どうしてる?”と連絡してみて、“会いたいね”という言葉が返ってきたら、“今度お茶しようよ”と誘うのもいい。もし今は会いたくなければ返事がそっけないこともあるかもしれません。

例えば不妊治療をしている人に子どもの話題は控えたほうがいいかもしれませんし、それ以外の共通の話題があったほうが話しやすいと思います。想像力を働かせて互いが嫌な気持ちにならないような配慮ができるといいですよね。それがうまくいかない場合には“心の境界線”を引いて、価値観は人それぞれ違うことを理解したうえで、自分にあった付き合い方を考えればいいのではないかと思います」

昭和生まれ世代と平成生まれ世代では「子どもがいない人生」に対する価値観が違ってくる

くどうさんが『マダネ プロジェクト』の活動を始めたのが約15年前。年号も平成から令和へ。時代が変わり価値観も変化する中で、世代間でも意識の違いをよりはっきりと感じるようになったと言います。

「『マダネ プロジェクト』の参加者は20代から80代までと幅広いですが、中心となるのは40代50代の昭和生まれ世代です。30代は平成生まれが多く、世代による価値観の違いを感じます。昭和世代は“子どもを持つことが普通”“子どもがいることが幸せ”という価値観の中で育ってきた世代ですが、平成生まれは“みんな違っていい”“個性”“多様性” を重視する教育を受けてきたため、“子どもが欲しくない”とはっきり言える人が昭和世代より多く、“子どもが欲しかったけれどできなかった”という人も気持ちの整理が比較的早い傾向にあります。

くどうみやこさん

反対に昭和世代は“子どもが欲しくない”と言いづらく、言葉にすると“人間としておかしい”“不健全”と受け取られてしまうことも多く、本音を言えなかったという声も聞きます。そうした社会的な背景もあってか、子どもができなかったことに長く苦しむ人が多いようにも感じています」

くどうさんがプロジェクトを続ける原動力になっているもの。それは参加者からの感謝の声や“救われた”という心からの言葉です。

「60代で“本音を誰にも言えず墓場まで持っていこうとしていた”という方もいました。マダネに出会えて“すごく楽になれた”“救われた”と感謝されることが多いんです。活動を続けていくことは大変なことも多いですが、こういう喜びの言葉に支えられ力になっています」



60代の“グランマダネ”は道しるべのような存在。それを追いかけ、新しいシニア像を描いていきたい

『マダネ プロジェクト』には“グランマダネ”と呼ばれる、60代の先輩がいます。子どもがいないことに一時は悩んだものの今は仕事に打ち込む人、ボランティア活動に尽力する人、趣味や旅行を楽しむ人など、生き方はさまざまです。そんな“グランマダネ”の姿は、くどうさんたちにとって大きな励みになっています。

「40代や50代はまだ苦しみや悩みの渦中にいる方もいて、“この苦しみからいつ解放されるんだろう”と不安になっている方も多いんです。60代以降になると気持ちの区切りがついてきて、疎遠だった友人関係が復活したり、趣味や旅行を楽しんだりと、人生を楽しんでいる方が多いんですね。子どもがいないけれどジェネラティビティ(次世代の育成や支援に関わること。“生成継承性”“次世代育成能力”と訳される)に関わる方もいます。60代以上は、私たちの世代よりも強い同調圧力を受けながら、その時代を乗り越えてきた方々です。そんな中、活き活きと楽しそうに生きる“グランマダネ”の姿は道しるべのような存在です。灯台のあかり、希望の星ですね。それを追いかけて、私も歳を重ねていきたいです」

トレンドウォッチャーという仕事と自身の経験を重ねて『マダネ プロジェクト』をライフワークとして子どものいない女性たちを応援し続けてきたくどうさん。今後やりたいこと、目指す自身の姿を聞いてみました。

くどうみやこさん

「今後シニア層になっていく中で、子どもがいない女性は“親”という肩書きが持てなかったことに加えて“おばあちゃん”“祖母”という立場も持てません。孫がいない人生になるわけです。以前は孫に囲まれて暮らす老後こそ幸せというイメージがありましたが、実際のデータを見ると高齢者の幸福感は子どもがいる・いないで大きな差はないとされています(『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』p198より)。子どもがいない人生は、自分のしたいことを優先できたり、自分に時間やお金を使えたり、仕事や趣味に全力で打ち込めたりするなどの利点もあります。これからどう歳を重ねていくのか、活躍する“グランマダネ”を追いかけながら、新しいシニア像を描いていきたいと思います」

My wellness journey

くどうみやこさんに聞きました

体のウェルネスのためにしていること

「小さい頃から運動音痴で運動嫌いでした。健康診断で少しずつ検査に引っかかるようになり何か運動を始めないと思い立ち、1年前からヒップホップダンスとヨガを始めました。奇跡的に1年続いています。体は硬いのですが、何もしていないカチカチの頃に比べるとだいぶ柔らかくなりました。ダンスも少しずつ慣れて体を動かすのが楽しくなっています。1週間に1回程度ですが、1年間続けられていることが自信につながっています」

心のウェルネスのためにしていること

「鎌倉を訪れることです。風情のある街並みや素敵なお店が多く、神社仏閣が多いところにも惹かれます。神社仏閣巡りにハマり、鎌倉の神社仏閣は大小を問わずコンプリートしました。1日で訪ねられる場所って、3・4軒くらいなんですよ。行けなかった場所を“また次に行こう”と楽しみにしながら巡っていました。今は、お気に入りの神社仏閣を季節ごとに訪れるのが楽しみです」

くどうみやこさん

インタビュー前編はこちらから読めます

Staff Credit

撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
ファッション、ビューティ、インテリア、料理、そして読者の本音や時代を切り取る読み物……。
今読者が求めている情報に寄り添い、LEE、LEEweb、通販のLEEマルシェが一体となって、毎日をポジティブな気分で過ごせる企画をお届けします!

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

閉じる

閉じる