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私のウェルネスを探して/山脇りこさんインタビュー前編

人気料理家・エッセイストの山脇りこさんが「電子レンジレシピ」の研究を始めた理由

  • LEE編集部

2026.06.29

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山脇りこさん

今回のゲストは、料理家でエッセイストの山脇りこさんです。山脇さんは2010年から料理教室『リコズキッチン』をスタートし、旬の食材のおいしさやうまみを引き出す家庭料理を教えながら、たくさんのレシピ本を出版してきました。旅好きとしても有名で台湾の旅のガイド本や料理本を執筆、2023年には旅エッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)がベストセラーに。昨年は『歩いて旅する、ひとり京都』(集英社)も出版しました。
 
前半は、最新著書のレシピ&エッセイ『生きていく、軽やかごはん 道具ひとつでずっと好きな味』(集英社)について。ウェブサイト「OurAge」(2026年5月にクローズ)で5年半続いた人気連載をまとめたこの本は、連載スタート時がちょうどコロナ禍でした。「ステイホームで、料理を3食作ることになった人の悲鳴が聞こえた」という中で始まった連載では、当たり前にやってきたプロセスを見直し、使う道具はひとつに限定。山脇さん初のレンジレシピも紹介しました。料理を好きになれたらなってほしい、家族のために料理を作り続けて“料理疲れを感じている人”にこそ”私のためのレシピ”として活用してほしいという思い、娯楽や生きがいにもなり得る料理の可能性についても伺いました。(この記事は全2回の第1回目です)

コロナ禍を機に「道具ひとつで作れる」レシピを紹介するように

連載がスタートしたのはコロナ禍の2020年。緊急事態宣言が発令され、お店が臨時休業となり仕事は在宅に。食事は「家で」が基本、誰もが突然のステイホームに戸惑った時期でした。

「料理家の仕事の現場も大きく変わった時でした。撮影時の試食はNG、マスク着用を徹底、撮影が終われば即解散。どこかみんなの中に不安な気持ちがいつもあって。そんな中“料理をしなくちゃ”“3食作らないといけないから大変”という悲鳴? 泣き? がまわりから聞こえるようになってきました。“自炊”という言葉がよく使われるようになり、SNSやウェブサイトでレシピ紹介が多く見られるようになったのもこの頃かもしれません。そんな中で始まる連載だったので、道具ひとつで作れる、洗い物をとにかく減らせるレシピを紹介しよう、ということになったのです」

山脇りこさん

『生きていく、軽やかごはん 道具ひとつでずっと好きな味』では連載時に読者から多くの支持を集め、サイトの人気記事ランキングを独占してきた140超のレシピを厳選し、テーマ別に再編集。冒頭には歴代閲覧数ベスト7となったレシピが紹介されています。

「1位は“紫キャベツの甘酢漬け”、紫キャベツって手に入りにくいと言われる食材なので1位は驚きました。彩りのきれいさ、調味料が塩・砂糖・酢だけというシンプルさもよかったんだと思います。私はこれにゆで卵を添えて、軽いひとり晩ごはんにすることも。その提案がよかったのかな。作り置きにもいいしお弁当のおかずにもおすすめです。2位の“えのきとオクラ、鶏むね肉のヘルシーキーマカレー”も意外だったんですよ。レンジで作るカレーですがノンオイル、小麦粉を使わずに作れるので軽やか。カレーは実はレンジ向きなんです」

『生きていく、軽やかごはん 道具ひとつでずっと好きな味』より

野菜のサブおかずにたんぱく質もしっかり摂れるメインおかず。野菜たっぷりのスープやレンチンカレーなど、掲載された52レシピは、主食もスイーツも含めどれも軽やかで身体が喜ぶものばかり。その中のほとんどを野菜を使った料理が占めています。

「私が野菜好きなのが一番の理由かな? でも、野菜料理って案外お手間なのかもしれません。お肉はパックから出して焼くだけとか、お魚も切り身が多いので、包丁も使わなかったり。お刺身が一番売れるとも聞きます。一方、野菜は? ということで、できるだけシンプルに、おいしく食べるレシピをご紹介しています。野菜はなんといっても旬を感じられる、っていう魅力があるので、連載ではそこも大切にしていました。季節を強く感じる野菜って、あまり手間をかけなくても、切るだけ、焼くだけ、それだけで贅沢だなと思うので」

紫キャベツの甘酢漬け


材料(作りやすい分量)

  • 紫キャベツ … 1/2個(約300g)
  • 塩 … 小さじ2(材料の約3%濃度が目安)
  • (A) 砂糖 … 大さじ2
  • (A)酢 … 大さじ3

作り方

  1. キャベツを千切りにする。キャベツ、塩、キャベツ、塩という順でポリ袋に入れ、しゃかしゃかと袋を振って塩を全体に回す。
  2. ポリ袋の上部を結んで閉じ、外側からもむ。そのまま10分ほどおく。
  3. ②がしんなりしたら、結んだところを開けて中の水気を出す(袋の下から上にややしぼるようにすると、水気が出る。全部しぼり切らず、出てきた水分を抜けばOK)
  4. ③に、Aを加えて、外側からやさしくもみ、そのまま30分ほど味をなじませる。

※冷蔵庫で3日間保存可能。
※好みでゆで卵を添えて。


思うように料理ができなくなってきた母を見て、電子レンジの必要性を感じるように

この連載で山脇さんは初めて電子レンジを使ったレシピを紹介しました。

「母は料理が大好きで、今思えば生きがいでもあったと思います。それが80代になって、台所にずっと立つのがしんどくなり、火への不安もあって、だんだん思うように料理ができなくなった、と悲しそうに言うようになりました。私が帰ってお惣菜を作り置きしていっても、鍋やせいろで温めていて、それも大変そうで。見ていて『レンジが使えたら楽なのに』と思ったんです。私の母世代である今の80代以上の方たちが家族にたくさん料理を作っていた時代には、まだ電子レンジが今のように普及していなかった。だからレンジを使い慣れていない人も多いですよね。

山脇りこさん

その娘世代である、今の50代、60代も、そんな親の元で育っているので、レンジ下手が多い気がします。私もその一人です。いつか私も母と同じように70代80代になったとき、料理が大変になるだろうなと思いました。母を見ていて、これは今のうちにレンジの練習をしておいた方がいいな、と感じました。 できれば死ぬまで自分の好きな味を、自分で作って食べたいな、と思って。それで、それまで調理には全く使っていなかったレンジの研究を始めました」

“食べることは死ぬまで続く”。もし歳を重ねて、いろいろ不自由になっても、仮に家から出られない状態になったとしても、かんたんなものでも料理ができれば、それは生きる楽しみ、死ぬまでそばにある娯楽になるかもしれないと山脇さんは言います。

「85歳の叔父が78歳でひとりぐらしになったんです。それまでほとんど料理をしなかった叔父が、今は作った料理の写真をよく送ってくれるようになりました。もちろんレトルトとか簡単なものを食べる時もあるようですが。“昼に冷やし中華を作ったよ”とか。もともと旅好きで、私の旅の先生だったのですが、ままならなくなり、今は料理が楽しみになっているみたいで。ほんとうによかったな、と思います。料理は家の中でできて、達成感もあるし、自分の好きな味が食べられるし、一石四鳥くらい? 年々おっくうにもなるけど、発想を変えたら、最後まで楽しめる娯楽になると思うんです」

誰かのための料理ではなく、”私”のための料理をして”私”がいただく時間を楽しむ

とはいえ、料理が苦手だったり献立を考えることにストレスを感じている人もいます。40代50代になると“今日は疲れて何もしたくない”と思う日もあるのは当然で、そんな人たちにこそ『生きていく、軽やかごはん 道具ひとつでずっと好きな味』を活用して欲しいそうです。レシピに加えて、食べることや人生後半の生き方について、自身の戸惑いや葛藤を交えながら綴ったエッセイもしみわたる内容です。本書の帯には以下のようなチェックリストが掲載されています。

□ 重たい料理が食べられなくなってきた
□ 自分のための料理が面倒
□ 外食、中食と続くのがつらい
□ 野菜とたんぱく質が足りているか心配

『生きていく、軽やかごはん』

書店で出版記念イベントを行った際、参加者の皆さんに上記のうちどれが当てはまるのか聞いてみたところ、“自分のための料理が面倒”という声が一番多かったとか。

「もし、これまで以上に自分の時間が持てるようになったとしたら、久々に?〝私”のための料理をして、“私”がいただく時間を楽しむのもありかなぁと思います。誰かのためじゃなくてこの本に載っているような、自分の食べたいものを作る。書き下ろしたエッセイでは好きなこと探しや、2拠点生活を前に、本当に必要な道具は何かを見直した〝台所のダウンサイジング〟について書きました。重い鍋や調理道具を思い切って手放したのも、死ぬまで自分の味が食べたいからです。おかげで、たくさん道具があった時よりも料理が快適で楽しくなりました」

自分と、読者と、旬の食材と向き合い生み出してきた”私”のために作りたくなるレシピ。今なら夏の食材を使った“トマトとスイカ、ミントのサラダ”、“ピーマンと豚のポン酢煮”、“アスパラと塩昆布の春巻き”が山脇さんのおすすめです。

「暑さで疲れが出る時、例えばスイカのサラダやピーマンのポン酢煮は朝作っておいて冷やしておけば家に帰るのが楽しみに。疲れていても作れるシンプルなレシピばかりですが、一品だけでも先に作ってあれば心強いですよね。夏は火を使うのもおっくうになりますが、そんな時こそレンチンレシピやボウルで混ぜるだけ、ポリ袋ひとつで作れるレシピを活用してもらえたら嬉しいです」

『生きていく、軽やかごはん 道具ひとつでずっと好きな味』より「ピーマンと豚のポン酢煮」

ピーマンと豚のポン酢煮


材料(2人分)

  • ピーマン … 4 個
  • 豚肩ロース肉切り落とし … 150g
  • (A) 酒 … 大さじ2
  • (A) ポン酢しょうゆ … 大さじ4
  • (A) 水 … 大さじ2
  • しょうゆ … 小さじ1

作り方

  1. ピーマンはヘタの部分をぎゅっと指で押して、ヘタと中の種を取る。
  2. 豚肉にしょうゆをもみ込む。
  3. 鍋にAを入れて①のピーマンを入れ、蓋をして中火にする。ふつふつしてきたら火を弱め、10分ほどピーマンがくたっとするまで煮る。
  4. ②の豚肉を加えて、汁気が足りなければ酒少々(分量外)を追加して、煮汁になじませながら煮る。豚肉に火が入れば完成。少し冷ましてから器に盛る。



お腹が空いている時に食べ、食べたいものを作る

エッセイで、若い頃から痩せ信仰に悩まされてきたと語っていた山脇さん。ふだんの食生活はとてもシンプルです。気をつけているのは“3食食べる”でも“栄養バランスに気をつける”でもなく、“お腹が空いている時に食べる”だそうです。

「私は自分にルールを課すのが苦手で、運動やら、ダイエットやらも、悲しいかな、なかなか続かないタイプなんです。今は、食事で唯一意識しているのが『お腹が空いたら食べる』です。これは案外良くて、空腹だとみんなおいしい(笑)。朝、昼と、夫の分の食事は作りますが、私自身はお腹が空いていなかったら食べないかなぁ。ただ、晩ごはんは一緒に食べるようにしているから、そこで空腹になるように調整はしています。

山脇りこさん

あとは、私がその日、食べたいものを作るようにしています。何が食べたい?と夫に聞くこともありますが、基本は私が食べたいものを作っています。だから、料理が好きで楽しいと感じていられるのかもしれません」

(後編につづく)

山脇りこさん

座右の銘は「ごきげんは七難かくす」

山脇りこさん

RIKO YAMAWAKI

料理家、エッセイスト

長崎市の日本旅館の一人娘として生まれ、四季折々の料理に触れながら育つ。旬や素材を大切にしながら、作りやすくモダンでおしゃれな料理が得意。旅好きで書き下ろしエッセイ『50代からのごきげんひとり旅』(大和出版)がベストセラーに。代表的な著書に『いとしの自家製』(ぴあ)、『明日から料理上手』(小学館)、『野菜のたのしみ~私の野菜料理133~』(小学館)、『おいしいものを手軽に少量で 50歳からはじめる、大人のレンジ料理』(NHK出版)、『ころんで、笑って、還暦じたく』(ぴあ)など。

山脇りこさん

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
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