私のウェルネスを探して/川野芽生さんインタビュー後編
【川野芽生さん】自ら選び取った「文学」「ロリータファッション」とともに、自分に噓をつかずに生きる。
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LEE編集部
2026.04.26

引き続き、川野芽生(めぐみ)さんに話を聞きます。川野さんの取材は、神奈川県横浜市にある神奈川近代文学館で行われました。中学高校の6年間を過ごした学校のすぐそば、学校帰りによく訪れた場所です。「下校中の寄り道は禁止されていたのですが、放課後に友達とよく寄っていました。中学生以下は入館料が無料だったのもありがたかったです。周辺の港の見える丘公園や、洋館の並ぶ山手エリアを通ってのお散歩も魅力的です。学校を卒業した今でも、よく遊びに来ます」。
後半では、本好きで言葉を集め続けた幼少期、愛するロリータファッションのエピソード、最近気をつけている体へのケアについて話を聞きます。(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読む)
本を読むこと、そして言葉を収集するのが好きだった子ども時代
川野さんは神奈川県秦野市生まれ。両親と姉・弟の5人家族で育ちます。小さい時から本が好き、自分で物語を作ることも好きで、冊子にしたり紙芝居を作ったりと、本や言葉にまつわる遊びをよくしていたそうです。

「保育園の外で遊ぶ時間も“どうして本を読んじゃだめなの?”と思っていました。幼い頃は周りの人にあまり興味がなくて、小学5年生になるまで友達が一人もいなかったんです。言葉への関心が強く、昔を思い出しても“新しい言葉や知らなかった使い方を知った!”みたいな記憶が多いんです。例えば保育園に、いろんな色で塗装された木製のおもちゃが置いてあったんですけど、ニスを塗っただけで木の地肌の色があらわになっているものを見て、『これは何色と呼ぶんだろう? “木色”と呼んだら“黄色”と区別がつかないし……』と考えていたら他の子がそれを“肌色”と呼んでいたので、『そうか!』と感動したことを鮮明に覚えているんです。言葉へのこだわり、興味が強かったと思います」
両親は研究者で、本が身近な環境でした。当時住んでいた集合住宅には本が収まりきらず、廊下の両側も本棚になっていたそう。週末になると家族で隣接する市の大きな図書館に出かけ、借りられる分の本を借りていました。



「本を読むこと、そして言葉を収集するのが好きでした。『桜色』や『菫色』のように、花の名前が入った色の表現ってたくさんあるな、と気付いたら、それをメモしていってリスト化したり、意味の似た複数の言葉について、これとこれはどう違うんだろう? と考えてみたり」
短歌、小説、エッセイを書き、文学を研究。とにかく文学が好きで、いろいろな角度から文学に取り組んでいきたい
小さい頃の夢は研究者と作家。中学生になり文芸部と文学同好会に入ったことで、自分が作った小説や詩を初めて人に読んでもらうきっかけができました。高校3年生の時に短歌に興味を持ち、大学では短歌サークルに入ります。川野さんが書くものは短歌に小説、エッセイとさまざまですが、どれも書くときのスタンスは大きく変わらないといいます。

「いろいろなことをやってるんですねって言われることもあるんですけど、全部文学なんですよね。研究対象も文学で。とにかく文学が好きで、いろいろな角度から文学に取り組んでいきたいと思っています」
たくさんアウトプットをするためにたくさんインプットをしているのかと質問すると、そうではないと言います。
「読むのも書くのも好きなので、アウトプットしようとかインプットしようといったことは考えていません。言葉の世界から言葉を受け取り、そこに少しだけ返していくみたいな感じです」
ロリータファッションで理想の「かわいい」を追求。しかも「かわいい=男受け」ではないことが一目瞭然
川野さんがいつも着ているのはロリータファッション。幼少期から可愛いものが好きで、フリフリした服に憧れていましたが、実際に着る機会はほとんどありませんでした。ロリータファッションを初めて着たのは28歳のとき。はじめての歌集を出し、原稿の依頼をもらえるようになったのはいいものの、同時期に〆切が立て込んでしまい、慣れない原稿生活の忙しさとプレッシャーから“これを乗り越えたら原稿料でロリータ服を買うんだ!”と決意して買ったそうです。

「初めて袖を通した時、“ああ、私は初めからこれだった”“これを着て生まれてきたんだ”と思いました。内面と外見が一致した感じですね。中高時代はほとんど制服で通していたのもあり、自由に洋服が選べるようになったのは大学生になってからです。その頃はいわゆる『ガーリー』系というかフリフリしたかわいい系の服を着ていましたが、『女の子らしい』とか『いいお嫁さんになりそう』とか、ステレオタイプに晒されることが多くて複雑でした。だからといってボーイッシュな格好をするのも違うというか、それでは『可愛い系の服を着ている人は「女性らしさ」の規範にのっとっている』というステレオタイプに従うことになってしまうなと思っていました。ロリータファッションを着るようになり、周囲の視線に負けずに自分の理想の『かわいい』を追求する楽しさに加えて、『かわいい=男受け』ではない、ことが一目瞭然なのも良かったです」
撮影時に着ていた服は『HoshibakoWorks』、ソックスは『Morun x Muuna Stoik』、指輪は『rubyBlossom』。ロリータファッションはアイテムが細かく分かれており、ワンピース、ジャンパースカート、スカート、ブラウス、パニエ(ドレスやスカート下にボリュームを持たせるように履くアンダースカート)、ドロワーズ(スカート下に履くボトム)など、それらを組み合わせて着こなします。

「ロリータファッションのブランドは各商品の販売点数が少なく、買い逃すと再販されることも少ないため、ほしいものは出会ったときに買わなきゃ、と思ってしまいますね」
目下の目標は博士号取得。最近やっと自分へのモニタリングができるように
目下の目標は、博士論文を完成させて博士号を取得すること。その次にやりたいことを聞いてみました。
「今後の予定として短編集の刊行がありますが、翻訳など新しいこともしてみたいです。画家の方や写真家の方とコラボして作品を作ったことがあるのですが、他のジャンルの方とコラボするのは楽しいですし、自分一人ではできないところへ作品を広げていくことができるので、またやっていけたらと思います。ミュージシャンや俳優の方とコラボして短歌や小説を朗読するパフォーマンスというのもやっていて、博士論文が終わったらまたやりたいですね」

最近の変化として、多少体を気遣うようになってきたという川野さん。去年の目標を“よく食べること”にした結果、体調を崩しにくくなったそうです。
「ずっと、魂のことばかり考えてきたんです。魂が濁らないように生きることが一番大事で、それ以外は二の次だと思っていました。でも、自分には体もあるし心もあるんだ、ってことをちゃんとわかっていないと、心身が疲れているというだけのことを、魂レベルの問題であるかのように誤認してしまうことがあるなって気付いたんです。最近やっと自分へのモニタリングができるようになり、これは忙しいんだなとか、疲れているんだなということが分かるようになりました。じゃあ具体的に何か体を気遣うようなことをするようになったかというと、『ちゃんと食べる』を意識するようになったくらいかもしれませんけど。子どもの時から食が細くて、食事が億劫だったんですが、最近は食事をしっかり摂ると疲れにくくなるものなんだなと感じています」
My wellness journey
川野芽生さんに聞きました
心と体のウェルネスのためにしていること
「自分に嘘をつかないことです。そのためには自分と対話する、どういうことが自分にとって心地よいのか、喜ばしいのか、望んでいるのか、何が苦痛なのかを知る必要があります。人は他者の欲望に流されがちなので、自分がほんとうに欲しいものを手に入れるためには自分がほんとうは何を欲しいのか、よく考える必要があります。だから自分の気持ちに耳をふさがない。嫌だと思ったら、その理由がはっきり分からなくてもその気持ちに従うようにしています。
どうしたら自分に嘘をつかずに生きられるかって聞かれると、積み重ねなんじゃないかと思います。自分の考えや選択に基づいて行動することで、自分への信頼が積み重ねられていきます。人に流されて選択したことは後悔するけれど、自分で考え行動したこと、自分がこうだと思ったことに従って生きることは自分への信頼につながると思います。そうして少しずつ、自分と対話できるようになっていくんじゃないかなと思います」

インタビュー前編はこちらから読めます
Staff Credit
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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