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折田千鶴子

斉藤工さん×水上恒司さん ドラマ『犯罪者』配信記念対談

【斎藤工さん×水上恒司さん対談】ドラマ『犯罪者』共演で「今この時期に出会えて良かった」と語り合う真意、そして得たもの

  • 折田千鶴子

2026.07.17

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斎藤工さん 水上恒司さん

『エゴイスト』の松永大司監督のもと豪華キャストが結集!

Prime Videoで7月17日(金)より世界独占配信されるPrime Originalドラマシリーズ『犯罪者』に出演された斎藤工さん、水上恒司さんにお話をうかがいました。

主演の高橋一生さんを加え、3人とも映画にドラマに引っ張りだこで、どの作品でインタビューを申し込むか迷ってしまう活躍ぶりですが、この『犯罪者』の脚本を読んだ瞬間、思わず前のめりで「是非!」と手を挙げていました。後半はもうページをめくる手がもどかしくなるくらい、鼓動が爆速になるクライム・ミステリーです。

さらに演出を務めるのが、国内外で高く評価された『エゴイスト』(23)などの松永大司監督というのも大きな注目ポイント。どんな現場だったのか、どんな緊迫感だったのか、お聞きしたいことが山盛りです!

斎藤工さん

落ち着いた大人の佇まいに色香が漂う

斎藤工

Takumi Saito

1981年8月22日生まれ、東京都出身。俳優/フィルムメイカー。主な出演作に『シン・ウルトラマン』、『マジカル・シークレット・ツアー』、Netflix『新幹線大爆破』、『This is I』、ドラマにNetflix「極悪女王」、「誘拐の日」など。また『キングダム 魂の決戦』(7月17日公開)『存在のすべてを』(2027年2月5日公開)の公開が控えている。初長編監督作『blank13』は国内外の映画祭で8冠を獲得。企画・プロデューサーを務めるドキュメンタリー映画『大きな家』は、第34回日本批評家大賞ドキュメンタリー賞を受賞。永尾柚乃初監督作品『LITA』でもプロデュースを務める。全国の被災地等での移動映画館「Cinéma Bird」主宰、「Mini Theater Park」、白黒写真家など、活動は多岐にわたる。

水上恒司さん

益々逞しく力強い存在感になっていく

水上恒司

Koji Mizukami

1999年5月12日、福岡県出身。ドラマ『中学生日記』(18)で俳優デビューし、瞬く間に注目を集める。『弥生、三月-君を愛した30年-』(20)で映画デビュー。同年は、ドラマ『MIU404』や『いとしのニーナ』、映画『新解釈・三國志』(全20)など多数の作品が公開。近年の代表作に、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(23)、『本心』(24)、『九龍ジェネリックロマンス』(25)、『火喰い鳥を、喰う』(25)など。現在、『TOKYO BURST-犯罪都市』(26)が公開中。公開待機作に『本当にあった話(の話)』(2026年10月2日公開予定)など。



『犯罪者』ってこんなドラマ

白昼の駅前広場で、無差別の通り魔事件が勃発。巻き込まれた繁藤修司(水上恒司)は、唯一の生存者として病院に搬送されるが、見ず知らずの男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。男女4人を刺殺し、修司と格闘した末に逃走した犯人は死亡したはずなのに……。事件を追う刑事の相馬(高橋一生)は、修司の背後に何かあると感じ取り、友人で元テレビマンのフリーライター鑓水(斎藤工)に修司を匿ってもらうことに。刑事、ジャーナリスト、事件の生存者と立場の違う3人は、それぞれ事件の真相を追い始める。やがて警察組織、政界、巨大企業が複雑に絡み合う陰謀が浮かび上がる――。原作は、『相棒』シリーズで脚本を手がける太田愛の同名小説。

脚本を読みながら心臓がバクバクし、鳥肌が立ちました。現場で「すごいものを撮ってるぞ」という実感はありましたか?

斎藤「脚本では主要登場人物が3人にプレイヤーが増えた分、複雑になったきらいはありますが、終盤にむかって心拍数はどんどん上がっていきますよね。ただ現場で僕は、(自分が演じた)鑓水という人間に向き合うことで精一杯でした。1シーン1シーンを無事に撮り終えようとする以外の余裕はなかったですね。それでも振り返ると、そんな余裕がなかったことが、本作においては正解だった気がしています」

水上「僕はインする前に抱いていた台本の印象より、撮影、いやリハーサルが始まってからの方が、衝撃も密度の濃さも増したように思いました。もちろん撮影中は『視聴者が面白がってくれるのでは』という期待も感じましたし、『自分がどんな風に演じられるか』と自分への期待もありました。今は撮影中に感じていたそんな密度の濃さが、ちゃんと画に映ってくれていたらいいな、視聴者が喜んでくれたらいいなと思っています。映像関係者たちもそう思ってくれたら、それこそ万々歳です!」

©PROTX

斎藤「(原作者の)太田先生にお話を伺ったところ、『構造を描きたかった』とおっしゃっていました。いろんな事件が起こる背景には、個人的なこと以前にまず社会構造がある、と。例えば企業にとっては正義であるものが、個人にとってはそう(正義)ではない――そこから抑圧が生まれることも、実際にニュースを見聞きしている我々が感じることもありますよね。とかく被害者/加害者がフォーカスされがちですが、その奥にある社会的な構造が変わらない限り、こうした事件は起こり続ける、と。そんな“巨悪”を大きな組織に対して突きつける作品は、配信というプラットフォームでないと映像化し得なかったと思います。そういう挑戦的な作品を書かれた太田先生自身、『出版されるあてもなく7年間も書き続けちゃった』とおっしゃっていたくらいですから」

撮りながらゾクゾクしたなど、印象的なシーンを挙げるとすると?

斎藤「監督から『カット』が掛かった後、監督やスタッフのリアクションで、今の(演技)で良かったんだなと思えるシーンは多々ありましたね。特に監督の『これを撮りたかったんだ!』という表情を見たり、時にそれを言葉にして下さったのを聞くのは嬉しかったですね。今回は監督から、とてもポジティブな言葉が多かったように思います。というより逆に、捨てシーンがほぼなかったんじゃないかな。いい意味で、監督にとっては全部がサビみたいな感じだったのではないでしょうか。普通はそれでは疲れちゃいますが、本作に限っては、本当に細やかに全てに血が通ったシーンを撮られていたなと思います」

水上「松永監督の『はい、オッケー』『カット! オッケーイ!』という言い方がいいんですよね(笑)。そんな中で僕は、リハーサルを経て初めて3人一緒にカメラの前に立つ、3人が初めて相まみえる鑓水の部屋のシーンが思い出深いです。鑓水の部屋のシーンは3日間くらいで集中的に撮りましたが、あの辺りは痺れました。僕としては、ある意味そこからやっと役作り出来る、という部分もあったりしたので。監督も、『どんどんベクトルが変わっていく――2対1になったり、1対1対1になったり、3対0になったり。それが本当に面白い』とおっしゃられていて、『なるほどな』と思いながら撮影していたことが、とても面白くて印象に残っています」

斎藤工さん 水上恒司さん

確かに鑓水が登場して主要人物が3人になって以降、エンジンが掛かる感覚がありますね。

斎藤「鑓水には、潤滑油みたいな役割もあったと思うんですよね。加えて印象深かったのは、多分、僕ら3人のラストシーンになるであろう、というシーンです。詳細は伏せますが(カメラ)アングルを含めて、だいぶ監督がこだわっていらして、とても面白かったです。まだ撮影は1ヶ月くらい残っていたのに、監督も『すべて撮り切ったような気持ちだよ』とおっしゃられていました(笑)。3人のラストシーンにもご注目ください」

松永大司監督に会えて良かった!

松永監督作品は、お2人とも初めてですよね? 監督との出会い、監督の過去作をご覧になられていたかも含めて教えてください。

斎藤「僕は監督のデビュー作『ピュ~ぴる』(11)というドキュメンタリー作品が強く記憶に残っていますね。というのも松永さんの軸にあるもの、演出も含めた松永カラーは、そのドキュメンタリーから始まったと感じられるからもあって。今回の現場に立って、そんな“作家性”を一層強く感じました。ダルデンヌ兄弟がお好きだとお聞きして『なるほど』と思いましたし、同時にその反面、『グーニーズ』的なエンタメ色豊かな映画を目指したいとおっしゃっていたのも分かる、というか。そういう両極にあるものが共存する作家性を感じましたね。だからもう松永監督に対しては信頼しかない、という感じでした」

水上「僕が初めてお会いしたのは、2年前の日本アカデミー賞の授賞式。監督は『エゴイスト』の監督として登壇されていらっしゃって。そこで、今度『犯罪者』でご一緒するとご紹介いただきました。斎藤さんがおっしゃられたように監督はドキュメンタリー作品から出発されていますが、監督は人間として面白い着眼点をお持ちだし、かつ面白い人生を生きている方だな、面白い作品を作れる方って人としても魅力的なんだな、と演出を受けながら肌で感じました。本当にこのタイミングで松永組と出会えて、色々な勇気をもらいました」

斎藤「僕も今回の現場で、作品の作り方においても人生が変わるような衝撃を受けました。一生さんを含めた3人のシーンも、各々個別シーンも、エチュードを含めたテスト/リハーサルを何度もやらせていただいて、そこで生み出されるものが確実にあり、『これが松永印なんだ』と思わされましたね。他の俳優さんたちも今回の現場で監督とそのやり方に魅せられ、新たな自分と出会われている姿を見て、本当にいいタイミングで松永大司監督に出会わせてもらえたと思いました」

求められた“引き算の演技”とは!?

現場で監督は、俳優たちの演技に引き算を求めたそうですね。引き算の演技の難しさ、そんな感情表現について感じたことを教えてください。

斎藤「引き算の演技とは、お芝居をしようとしないこと。つまり役と自分が同化していくことだと言えると思います。構えて準備して現場に持ち込んだものって、芝居のための芝居になってしまうことがある。そういうものが一切通用しないと、リハーサルを重ねるたびに感じました。オン/オフで言うと、“オフの部分の自分”を持ち込むような不思議な感覚がありましたね。そういう演出の仕方って、芝居がかった演技を嫌いプロの俳優を起用しなかったロベール・ブレッソン(代表作に『スリ』『ラルジャン』など)の文脈に近いのかもしれません。僕自身、監督の端くれとして感じるのは、オーディションや衣装合わせ時に俳優が見せる普段の魅力と、劇中で演じていただく役の魅力と、時として普段の方が魅力的だと思うことがあるんですよ。だからこそ今回は、普段のままの自分をいかに本番に持ち込むかを考えました。同時に、それが僕の中でひとつ腑に落ちました。もちろん作品によっては、急に何かを被るような演技が相応しいこともありますが、本作はそうではない作品であり、オンとオフが逆になったような不思議な感覚を受けましたね」

水上「引き算の逆が何算になるのか僕には分からないですが、それでも引き算をするというのは、よほどの体力と勇気と実力がないと出来ないと思いました。つまり説明的なものを極力抑えながら、観る方には全ての情報を伝えるわけですよね。それってかなり挑戦的だな、と。とりわけ説明過多な作りの番組や作品が多い日本の現状の中で、敢えてそういう作品づくりを突き詰めていく。そんなクリエイターの方たちとご一緒できたことは、僕にとってとても大きなことでした」

『犯罪者』
©PROTX

斎藤「松永監督が司るのは、視覚と聴覚のトーンであり、僕ら俳優の動きや所作、声音などのトーンが、いかにも普段のトーンであることを求められたといいますか。それに加えて、実際にセリフを現場で引いていくことも結構ありました。水上さんがおっしゃるように説明的なものを排除していく、いわゆるコマーシャル的な作りじゃなくても十分伝わると、作品の持つ引力を信じて『これはなくていい』と判断を下すわけです。しかも普通は、(セリフを)残したままのバージョンも一応撮っておく――編集段階で足し引きをする選択肢を残しておこうとするものですが、松永監督は現場で『これ以上は描かない』とジャッジする。周りが『?』となることもありましたが、それも含めてすごく面白かったです」

それは、余計に観るのが楽しみになりますね。

斎藤「だから、今まで見て来たドラマや映画から推測し、安心して答え合わせをしながら見ることは出来ないと思います。それも、松永監督が結末を決めてかかっては作れないドキュメンタリーを撮って来たことが影響していると思います。従来のような描き方をしない、何かカウンター的な演出かなと僕は思いました。もちろん本作は結末に至るまで台本がありますが、それでも全体に漂う“行く先不明な空気感”や、現場でもどう転がっていくのか分からない感覚がありました。僕は基本的に役に対する哲学的なものを持って現場に臨みますが、そこが揺らぐ感覚がありました。そういう僕自身の歪みや揺らぎみたいなものが、作品の必要要素として引き入れられていく感じがして、それも面白かったです」

『犯罪者』
©PROTX

水上「松永監督は、役者によっても演出の仕方を変えられるように感じました。この人には、こういう言い方が効くとアプローチを変えること自体、演出力の高さですよね。またその際に、(監督が)言い方や声のトーンを変えられるのが新鮮で、それがある種、お芝居のようでもあって、とても面白かったです」

初共演の2人が互いに抱いた感想は?

ところで、お2人は初共演ですよね。

斎藤「そうです。僕はかねてから水上さんに、往年の日本映画の黄金期の俳優さんを彷彿とさせる味わいを感じていました。銀幕感がすごくあるな、と。男性像としてシンボリックだなと、デビュー当時から勝手に感じていました。いい意味で現代っぽくないというか。映画って“奥行き”だと思うんですよ。水上さんが映ると、その奥行きが出る。そういう奥行きをお持ちの方だな、と」

水上「ありがとうございます!」

斎藤工さん 水上恒司さん

斎藤「本作に対する向き合い方にしても、それを感じました。一緒にリハーサルをしていく中で、ある種“もがく”というか、不器用さがあって。そういうスムーズにいかない時に、自分と向き合うだけでなく、役同士として共生していくというか――相手にリアクションをするときも、『この人に対して、こんなリアクションをするのか』とか『こんなことを思うのか』という“三角形”を感じながら一緒に作品を作っていく感覚がありました。本作で一緒に過ごした時間は、単なる共演以上の何かがあったと思います。今の水上さんに、この作品で、この間柄で出会えたことが、とても価値あるものだなと思っています」

水上「確かに松永組での今回の出会いでなかったら、それぞれが抱く印象も変わっていたかもしれないと思うくらい良かったです。基本的には一生さんが僕ら俳優の統率を取ってくださり、作品や場面の解釈を言葉にしてくれることが多かったですが、それを斎藤さんが頷いて聞いてらっしゃる姿が、とても印象的でした。僕は変に弁が立つ部分があるので、斎藤さんのそんな姿勢に感銘を受けました。そこから僕は、とにかくすべてを聞いてやってみる、という姿勢を自分に課しています」

斎藤「今回は座長として一生さんが僕らを代表して言葉にしてくれましたし、現場全体に知らしめる意味も大きかったと思います。必ずしも松永監督の思考や演出だけが正解ではないという余白を監督自身が作ってくださっていたので、そうした対話により現場や作品がさらに正解に近づける感じがありました。そのセッションは本当に見ごたえがありましたし、一生さんがいろんなものを背負ってくださっているのを感じましたね。そんな座長ぶりを、『さすがだな』と思いました」

斉藤工さん 水野恒司さん

取材を終えて

ガタイのよろしいお2人が一緒に立たれると、それだけでかなりの迫力でしたが、いつもながら斎藤さんの優しくユーモラスな語り口も、そして水上さんの歯切れの良い発言も、聞いていて気持ちの良いものでした。それだけ『犯罪者』の現場における充実感が伝わってきました。 そこに警察組織の中で浮いている優秀な刑事役の高橋一生さんを交え、3人がぶつかり合いながら、どう共闘していくのか。巨悪にどう挑むのか。是非かじりつきで一気見したいですね!

Prime Original ドラマシリーズ『犯罪者』

7月17日(金)よりPrime Videoにて世界独占配信!

『犯罪者』

出演:高橋一生・斎藤工・水上恒司・ユースケ・サンタマリア・MEGUMI/内野聖陽
原作:太田 愛「犯罪者」(角川文庫/KADOKAWA)
監督:松永大司


Staff Credit

撮影/山崎ユミ スタイリング(斎藤工さん)/三田真一 アシスタント/那須野 スタイリング(水上恒司さん)/能城匠 ヘアメイク(斎藤工さん)/くどうあき ヘアメイク(水上恒司さん)/Kohey

■斎藤工さん着用分
ジャケット ¥226,600、カットソー ¥49,500、パンツ ¥189,200以上全て/ヨウジヤマモト プールオム、シューズ スタイリスト私物
問)ヨウジヤマモト プレスルーム:03-5463-1500

■水上恒司さん着用分
ジャケット¥1,078,000、タンクトップ 参考商品、パンツ¥190,300、シューズ¥214,500/ボッテガ・ヴェネタ
問)ボッテガ・ヴェネタ ジャパン:0120-60-1966

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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