中村倫也さん『君のクイズ』公開記念インタビュー
【中村倫也さん】「若い頃は選択する権利すらない状態。全てをやってみて、成功も失敗も、褒められたことも罵倒されたことも全部含め、自分の血肉になっている」
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折田千鶴子
2026.05.13

飄々と歯切れの良い中村倫也さんに惚れ惚れ!
俳優としての活動のみならず、どんな場でも中村倫也さんが登場すると楽しさを爆上げしてくれる、“打てば響く”というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。どんな球が来ても的確(それ以上)に打ち返してくれる安心感と、ちょっと斜めからくすぐって場を沸かしてくれるワクワク感をいつも与えてくれる中村さん。最近は、そこに大人の余裕も加わって、どんな相手をも包み込んでしまう包容力も感じさせます。
今回は、映画『君のクイズ』をはじめ、そんな中村さんの思考回路を少しでも解明すべく、いろいろと聞いてみました!

ナイーブ男子から狂気の男まで変幻自在に演じる
中村倫也
Tomoya Nakamura
1986年生まれ、東京都出身。2005年に俳優デビュー。主演舞台「ヒストリーボーイズ」(14)で第22回読売演劇大賞を受賞。本作の吉野耕平監督の長編初監督作『水曜日が消えた』(20)に主演以降、『ハケンアニメ!』(22)、『沈黙の艦隊』(23)に出演。近年の出演作に、映画『ミッシング』『ラストマイル』『あの人が消えた』(すべて24)、『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』(声の出演・25)、舞台「ライフ・イン・ザ・シアター」(25)、ドラマ「Shrink-精神科医ヨワイ-」(24)、「DOPE 麻薬取締部特捜課」(25)、「DREAM STAGE」(26)、Prime Video「ベストフレンドハウス2」(26)などがある。
吉野耕平監督のデビュー作『水曜日が消えた』に主演して以来、すべての作品に重要な役で起用されています。本作で4本目ですか?
「4本目ですね。監督とは雑談はたくさんしますが、あまり仕事の話はしないので定かではありませんが、僕は “知り合いがいると安心するな” 要員じゃないかな(笑)。監督はとてもシャイで照れ屋なので、それこそ頭の中にある構想も、言葉ではなくイラストなどで表してくれることが多かった。ご一緒してきて感じた変化と言えば、以前よりも言葉で説明してくれることが増えたかも、くらいかな(笑)。それも、あくまで個人的な印象ですが」
そんな吉野監督と再びご一緒するにあたって、脚本を読んで感じたことを教えてください。
「本作は同名原作の映画化ですが、僕はクイズプレイヤーって、とっても物知りな人たちの早押し勝負だと思っていたんです。そうしたら、物知りであるのは当然ですが、その上でどういう戦略を立て、どういう思考を巡らせて競技に臨んでいるのか、この物語で初めて知ったのですが、それがまず面白かったですね。
映画化にあたっては、企画書とともに吉野さんが描かれた絵コンテが1枚添えられていました。それを見た瞬間、既に面白いアイディアが色々と浮かんでいるんだな、と確信して。台本に書かれたト書きだけでは、どうなるのか分からない映像表現も多々あるというのが“吉野組あるある”ですが、“やっぱり面白いことを考えるな”と思いながら台本を読んでいましたね」
『君のクイズ』ってこんな映画
優勝賞金1000万円を賭けた生放送のクイズ番組の決勝戦で、クイズ界の絶対王者・三島玲央(中村倫也)と、彗星のごとく現れたカリスマ・本庄絆(神木隆之介)が一騎打ちに。同点で迎えた最終問題の早押しクイズで、本庄は問題が1文字も読まれていない状態で早押しし、正解する。果たしてヤラせか、不正か? 三島は呆然としながらも、不可能な「0文字解答」の謎を解明すべく調査に乗り出す。原作は、本屋大賞にノミネートされた小川哲の同名ミステリー小説。
絶対王者・三島を演じるにあたって、どのようなことを考えましたか。
「すごいストイックな奴だな、と。原作は三島のモノローグで進むので、もう少し機微が見えやすく、思考のリズムも分かりやすいのですが、脚本では“何を考えているのか分からない奴”という印象がある。その理解でいいかと監督に聞いたら、『いいと思う。クイズのために色んなことを削ぎ落とし、それこそ(クイズに身を)捧げるような人だと思うから』と言われ、“なるほど”と。だから僕としては、彼のストイックで分かりづらい部分と、とてもナイーブで柔らかい部分、双方を丁寧に摘み取って三島という人間の中に存在させていかなければ、ということを考えました」

クイズ王であることに関しては、どのような準備をされましたか。
「競技クイズ大会の映像を見漁ったり、資料を読んだりしました。解答の仕方にも、プレイヤーそれぞれの個性や人間性が如実に出るんです。やたら押す人、とにかく早い人、堅実な人。また獲得ポイントの状況によっては、次の問題でリスクを冒さないといけない場合もあるなど、仕組みや戦略が一問一問にあることを知りました。しかも、それを極限の緊張状態の中で判断していく冷静さも必要だと、とても勉強になりました。最も“おぉ~‼”と腑に落ちたのは、本作にも出演されている伊沢拓司さんの著書『クイズプレイヤーの思考』を読んだとき。先日、別件で楽屋に初めてご挨拶に行ったら、『ありがとうございました』と言ってもらえて。本物のクイズプレイヤーからお墨付きをいただけたな、と安心しました(笑)」
神木さんが演じた天才・本庄と絶対王者・三島の、対照的な天才2人の対決が見ものです。
「いや、三島は天才ではなく、積み重ねていく質実剛健タイプです。それに対してクイズ歴の浅い本庄という天才が現れたから、クイズ業界が騒然としている、という構図で始まります。その本庄をリュウ(神木隆之介)が演じると決まった瞬間、“すごい佇まいで解答席にいるんだろうな。目つきなんて一段階イッちゃってるんだろうな”と想像できたんです。案の定、現場で相対したら、こっちがニヤニヤしたくなるくらいの本庄ぶりだったので、心の『いいね!』ボタンを押しまくりました(笑)。そういうところでも、リュウとは言葉のいらない関係だと感じました」
穏やかな役を演じることが多い神木さんだけに、その落差が効いています。
「原作を読んだ方からすると、僕とリュウの配役のイメージが逆らしくて。でも、そんな方にこそ、リュウが演じる本庄を楽しみにして欲しいですね。神木隆之介という役者は、広くみなさんに思われているより、ずっと(化ける幅や実力や毒が)あるんだぞ、と実感していただけると思います」

それこそ、解答ボタンの押し方から、正解した時のリアクション、カメラ目線やコメントに至るまで、三島と本庄は対照的です。そこは当然、意識されて役作りもされたのでは?
「おっしゃる通り。しかも三島と本庄という役を演じながらも、解答席に立った時は通常時の彼らとまた違う三島と本庄になっているわけです。真剣勝負をしている緊張感の中で、相手が不正解したとき、あるいは相手が正解した時、どんなリアクションを取るのかなど、刻一刻とポイントが拮抗して競り合ってく中で変化しつつ、そこに、それぞれの人間性がにじみ出てくる。三島はテレビ映りなど考えずにクイズに特化していますが、本庄はちゃんと客を楽しませようとする、その差もある。そうした一つ一つのふとしたニュアンスを、役作り+αで出せたらいいなと思いながらやっていきました。無意識か有意識か、無自覚か自覚ありかも含めて、非常に作業量は多いけれど遣り甲斐のある、そして噛みごたえのある役作りでしたね」
中村倫也×神木隆之介×ムロツヨシ
原作から大きく膨らんだ存在のTVプロデューサーを、ムロツヨシさんが演じています。彼の憎々しさが、抜群のスパイスとなっています。
「本当にムロさんは人を食った芝居が上手ですよね。僕は本作を“ムロツヨシ史上1番のハマリ役”だと宣伝していこうと思っているくらいです。ムロさんとリュウという、大いに信頼できる2人がそれぞれ緊張感を持ちつつ、今回は真ん中に立つ僕に向けて的確な矢印を飛ばしてくれて、本当にありがたかったですし、“さすがだな”と思いました。2人と対峙するシーンはみな、台本を1人で読みながらイメージしていたものとは明らかに違う、完全に超越するものになったと思います。2人との共演は、本当に楽しかったですね」

いわゆるアドリブ的なことも?
「それはないです。僕とムロさんは、とかくアドリブ好きだと思われがちですが、中でもみなさんが話題にされる福田(雄一)組でよく言われるアドリブも、いわゆる予定調和ですから。事前にある程度どういうことをやるか、現場で互いに提示しているので。別にアドリブが好きな2人ではなく、強いて言えばアドリブがあまり好きではない2人です(笑)」
(笑)それはさておき、ストイックという言葉が最初に飛び出した三島ですが、そんな彼を演じた時間はどんな感覚でしたか?
「緊張感がずっとありました。予告映像を見るだけでも、撮影の日々を思い返して不思議と疲れるくらいです。三島を演じる際に少しでも気を抜いたら、 “ラフで楽したがりで、すぐオフにスイッチが切り替わってしまう中村”が映ってしまうのではないか、と(笑)。そうならないよう、ずっと気を張っていました。ピリピリではないですが、三島として(セリフを)言える張り詰めたモードは、常にキープしていましたね」
映画にはないシーンですが、原作に三島が正解を探し切っていないのに、思わず解答ボタンを押してしまった後、無意識で正解するシーンがあります。それを読んだとき、俳優の無意識の演技にとても近いのではないかと思いました。頭よりも先に身体が反応する、みたいな。
「ありましたね、シンボリルドルフという解答ですね! ただ、それは俳優だけでなく、きっと多くの方が経験していると思うんです。経験値で乗り越えられる、ということですから。昔は何度かつまづいたけれど、気づいたら頭なんか使わなくても出来てる、みたいなことってありますよね。やっぱりどんな経験でもハウツーを蓄積していて、その反射の連続で組み立てていければ乗り越えられるのだと思います。ただし芝居に関しては、反射ばかりに頼ると精度が下がるんですよ。かといって決め込んだものだけ提供して作っていくと、本当につまらなくなる。だから僕は演じる上では、ちゃんと物語なり“演じる”という意識を持ちつつ、ハンドルに遊びの部分を持たせておきます。現場で柔らかくブレられるような準備の仕方をしていますね」




柔らかくブレられる、というのは言いえて妙ですね!
「そうすると、それが現場で相手との芝居を通して、反応でポッと思ってもないものが出たりする。それこそが、やっぱり楽しいことですから。お芝居って、相手があって互いに作用し合っているものなので、自分も(相手から)そういうものを引き出せたらいいな、と思いながらやっています。ただし、きちんと準備をしてきて、監督やカメラの狙いを理解しているという、しっかりした土台があった上で、その場のライブ感や鮮度のある反応をしていけるかが重要です」
中村倫也という“人”について、あれやこれや
三島はストイックで、ご自身は“楽したがり”とおっしゃいましたが……。
「もちろんストイックな部分もありますが、自分は当たり前に楽をしたい人間です。ただ、少しでも後で楽ができるように準備するタイプなんです。だから小学校の夏休みの宿題も、夏休みが始まるとすぐに終わらせるタイプでした。あるいは、端から『これはやらない』と決めてしまう。今もそうですが、例えば水回りの掃除にしても、水垢も溜まると(汚れが)頑固になって研磨剤で磨かないといけなくなるな、だから今さっとやっておこう、という感じです。それって几帳面ともストイックとも言えますが、後で楽がしたいだけ。仕事も現場で苦労したり後悔したくないから、事前にやれることはやっておく、というだけの気がします」
大舞台では緊張するタイプですか?
「今はしないですね。小さな頃は、親戚の結婚式で花束渡す役でも、ピアノの発表会でも合唱コンクールの指揮でも、いろんな場面で緊張しましたが。この仕事を始めた頃には、あまり緊張しなくなっていました。だから逆に、『あれ、緊張するのか、俺?』という状況がたまに来るとワクワクしちゃいます。でも緊張って、人前で失敗したくないとか、(他人に)よく見られたいとか、テスト等々でいい結果を出さなきゃとか、そういうことで力が入るからするものだと思うんです。

単純に大勢の前に立てば、誰でも緊張するのは当たり前。でも、そんなときにも萎縮する緊張なのか、適度な緊張でパフォーマンスを発揮できるのか、分かれると思うんです。適度な方に行ければいいですが、問題は萎縮しちゃう方。それこそやっぱり、“よく見られなきゃ”という思いが強いからだと思っていて。僕は端からそれを諦めているので、今は緊張しないようになったのだと思います。だって出来ること以上のものをやろうとしたら、出来ることも出来なくなっちゃいますから。たくさん準備しておけば、緊張はしなくなるものだと思います」
劇中に、「クイズには必ず正解があるけど、人生には正解がない」という言葉が出てきます。何か選択に迷ったときは、どうされていますか?
「前提として、僕はあまり迷うことがない。頭の中で思考パターンがシステム化されているんですよ。例えばAかBかCかで迷ったとします。そういう時、まずは頭の中の天秤にABCを乗せてみる。第二段階としては、物事にはすべてメリット、デメリットがあると思うので、それを加味した上で、どれに意義や価値を見出せるか。第三段階として、例えば仕事なら見てくれる人がワクワクするものかどうかを考えます。

頭の中のフィルターでろ過したら、自ずと答えがポンっと転がり落ちる感じですね。もっとも、それが出来るようになったのは最近ですよ。若い頃は選択する権利すらない状態でしたから。仕事がない、お金がない、時間がない、許されない、みたいな。だから選択せず全てをやってみて、それをどう自分の栄養素に出来るか、という心持ちでやってきました。選べる今の状況が、信じられないくらい恵まれているなと自分で思います」
選ばずやってきたことが、実になっている実感がありますか。
「成功も失敗も、褒められたことも罵倒されたことも全部含め、自分の血肉になっていると強く感じますね。すべての経験をどう噛み砕いて、どう自分の人生の道を舗装する材料に使えるか。例えば僕と同じ境遇にあった人でも、全く違う人生を歩んでいる人もいるだろうし。どんなものも食い方次第だと思います」
最後に、現在39歳。40歳を目前に、最近のコンディションや変化で思うことはありますか?
「ホヤホヤのがありますよ! 昨日ヒゲに白髪を1本見つけたんですよ。髪の毛にはチラホラありましたが、ヒゲは初めてで。僕が童顔だというのもあるかもしれないですが、年を取ることで演じられる役が増える気がして、なんか嬉しくて(笑)。俳優は年齢によって、やれることも変わる仕事なので、可能性の広がりを感じました。年を取るという変化は、なにも恥ずかしいことじゃないとLEEwebで強く伝えたいですね(笑)! 年を重ねていくこと、正しく老いることって、生き物としてものすごく美しいことだと僕は思うので、LEEweb読者の皆さん、これから一緒に正しく老いていきましょうよ!」

徹頭徹尾、やっぱり“打てば響く”方でした。そして気持ちのいいくらい、すべての質問に歯切れよく答えてくれました。この楽しさが、少しでも伝わればいいのですが。
そして映画『君のクイズ』は、LEE5月号でもご紹介したとおり、“タイプの違う2人の王者に惚れ惚れし、クイズの奥深さにワクワク。(0文字解答の)真相にたどり着くまでの畳みかける展開、流れ込む人間ドラマに引き込まれ、最後は脱帽!”な映画です(自分の書いたものを引用しましたが、決して楽をしようとしたわけではなく……)。
さて、本庄は魔法でもなければ不可能な「0文字解答」をいかに成し得たのでしょうか。中村さんはもちろんのこと、本庄役の神木さんのギラっとしたカリスマぶり、天才ぶりにもゾクゾクさせられますよ。それでは、原作と異なるラストも含めて是非、劇場で楽しんでください!
映画『君のクイズ』
5月15日(金)より全国ロードショー

2026年/日本/119分/配給:東宝
監督:吉野耕平
出演:中村倫也、神木隆之介、森川葵、水沢林太郎、福澤重文、吉住、白宮みずほ、大西利空、坂東工 、ユースケ・サンタマリア/堀田真由・ムロツヨシ
Staff Credit
撮影/菅原有希子 ヘアメイク/Emily (Three Gateee LLC.) スタイリスト/松本ユウスケ (anahoc)
●フーディー
texnh テクネ 35,200円(税込)
【問い合わせ先】canall カナル 03-6861-6190
●ジャケット
HEUGN ユーゲン 88,000円(税込)
【問い合わせ先】IDEAS イデアス 03-6889-4279
●パンツ
HEUGN ユーゲン 59,400円(税込)
【問い合わせ先】IDEAS イデアス 03-6889-4279
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。
















