TAKARAZUKA STAR|ことばの力
【月組・礼華はるさん】プロフェッショナルとは、自分のすることをしっかりできる人【宝塚スター|ことばの力】
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TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力
2023.12.21
気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?
月組
礼華はるさん
今の自分を作ったことば
「プロフェッショナルとは、どんなときでも、周りがどんなでも、自分のすることをしっかりできる人」
Haru Reika
Haru Reika ・Profile
2015年、宝塚歌劇団に入団。月組に配属される。二度の新人公演主演を経てバウホール公演主演も経験。178㎝という高身長にスラリと伸びた手足、圧巻のスタイルと凛とした上品な舞台姿で、存在感を高める男役スター。
言い訳をせず、できることを積み重ね
色鮮やかな舞台人になりたい
Haru Reika
「子どもの頃の私は物静かな女の子でした。というのも、3歳上の姉がとにかくパワフルで、私はいつも姉の陰に隠れがち。家ではよくしゃべる姉の話を聞いているうちに一日が終了。大人になってから姉に“子どもの頃のあなたの声の記憶がない”と言われたことがあるのですが、私自身も自分の声を思い出せないくらい、本当に物静かだったのです(笑)」
幼少期の自分を一言で表現するなら「無」。感情の起伏があまりなく、発言や自己表現も苦手で、当時は「自分が舞台に立つことになるなんて想像もしていなかった」そうです。そんな礼華さんの人生を大きく変えたのが、小学生の頃、宝塚ファンの幼なじみと訪れた東京宝塚劇場。客席降りの場面で娘役さんが自分の近くに来たとき、ビリリと稲妻に打たれたような衝撃が走ったそうです。
「そのときはまだ“憧れ”でしかなかった淡い思いが、“入団したい”という強い思いに変わったのは友達の家で観た一枚のDVDがきっかけでした。それは月組のトップスター・霧矢大夢さんの退団公演で。ショーでは霧矢さんをはじめ、龍真咲さん、明日海りおさんが歌い踊り……その華やかで煌びやかな世界を目にしたとき2回目の稲妻に打たれてしまったんです。そして、私はこの世界の一員になりたい! 今挑戦しなかったら絶対に後悔する!と。学校帰りに宝塚音楽学校の願書を買いに行き、すぐに送付したんです。親には何も言わずに事後報告で(笑)」
それまでは物静かな女の子だったからこそ、突然のその行動力に周りの人は大いに驚いたそう。でも、誰よりも一番驚いていたのは実は自分自身。「自分にはこんな感情があったんだ、こんな一面もあったんだって。宝塚に出会い、宝塚の舞台に立つようになってからはそんな新たな気づきと驚きの連続なんです」と礼華さんは笑います。
「入団当初は真っ白だったキャンバスにいろんな人との出会いや経験が色をつけてくれている、今の私はそんな感覚で。周りの人からいただく色鮮やかな言葉や学びをスポンジのように余すことなく吸収できたらいいなと思っています」
日々、進化していく礼華さんですが今も昔も変わらずにずっと大切にしている言葉があります。それは中学生の頃、テレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』を観たときに心に残った、バレエダンサー岩田守弘さんの“プロフェッショナルとは、どんなときでも、周りがどんなでも、自分のすることをしっかりできる人”という言葉です。
「身長が高すぎるがゆえにバレエの教室で劣等感を抱いていたときも、宝塚の初舞台を目前に怪我をしてしまったときも、コロナ禍で気持ちが落ち込んだときも……思い出したのはこの言葉でした。うまくいかないことを誰かや何かのせいにして言い訳をしない。どんなときも自分にできることはある。焦りそうになったり、不安になることもあるけれど、コツコツと今できることを積み上げる。それは必ず自分の糧になる……。この先も、この言葉を大切にしっかりと前を向いて歩いていけたらいいなと思っています」
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礼華はるさんに3つの質問!
1
「礼華はる」はどんな人ですか?
1
周りから「木みたいだね」ってよく言われます(笑)
幼い頃に比べるとだいぶ感情が表に出るようになったのですが、相変わらず私の感情の起伏は“低め安定”。喜怒哀楽が激しく飛び出すことがなく、基本的に穏やかでニュートラルだからでしょうか。周りからは「木みたいだね」とよく言われるんです(笑)。今でこそ「マイナスイオンが出ている」とか「癒される」なんて、みなさんにプラスに受け取ってもらえていますが、入団当初は自分の感情表現の少なさがコンプレックスで。初めてお役をいただいたときも、感情の出し方がわからずに、どう演じたらよいのか悩み戸惑ったんですよ。
月組のみなさん、特に普段からお世話になっている風間(柚乃)さんからは悩んでいた下級生時代によい影響をいただいて、「悲しいときは悲しいって言っていいんだ」「喜びは相手に伝わるようにより大きく表現していいんだ」なんて思えるように。宝塚歌劇団で得た「もっと気持ちを出していいんだ」「もっと感情を感じていいんだ」は、私の人生をより豊かに楽しくしてくれています。ただ、根っこはやっぱり“低め安定”なんでしょうね。スイッチがオフになる休日は誰とも一言も喋らずにボーッと過ごしてしまい、まるで幼少期のように「無」になってしまうことが多いんです(笑)。
2
礼華さんが愛してやまない“好きなもの“とは?
2
宝塚、ディズニー、海外旅行。私を非日常の世界に連れて行ってくれるもの
私の家族全員が宝塚歌劇団と同じくらい愛しているのがディズニー作品です。昔から我が家ではいつも当たり前のようにDVD や曲が流れ、それに合わせて姉と一緒に歌ったり踊ったり。もちろん、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーも大好きで。かつては年間パスポートを購入したこともありました。その頃は体力が満ちあふれていたんでしょうね。今考えるとクレイジーだなって思うほど、時間さえあれば行っていました(笑)。ディズニーの魅力は、見たことがない世界、聞いたことがない音楽、感じたことのない感情を届けてくれて、非日常の世界に連れて行ってくれるところです。
ちなみに、ディズニーと同じように“違う世界を見せてくれる”旅行も私は大好きで。同じく旅行好きの父に連れられて、幼い頃から家族と一緒にいろんな国を旅しました。その国ならではの景色や料理や音楽を楽しみ、そして、各国のディズニーランドにもお邪魔(笑)。フロリダ、カリフォルニア、上海、香港のディズニーランドは制覇しました。今、時間ができたら旅したいのはニューヨークです。今まで旅先で見てきた世界は少なからずお芝居にも生きていて。だからこそ、舞台への想いがどんどん強くなっている今は、多種多様な人や出来事と出会えそうな街に行ってみたい。カフェに入って、窓の外をボーッと眺めながら人間観察したいですね。
3
男役9年目、今、どんな時期にいると感じていますか?
3
舞台をちゃんと楽しめている自分を感じています
少し前の私は「ちゃんとしなければ」「ちゃんとやらなければ」と妙に真面目になってしまうところがありました。楽しんでしまったらミスをするんじゃないか、楽しんだらお客様に失礼なのではないかと、舞台を楽しむことも怖がっていた自分がいたような気がします。そんな私にれいこさん(※月組トップスター・月城かなとさんの愛称)がかけてくれたのが「楽しんで」という言葉でした。舞台の上で「これでいいのかな」「これが正解なのかな」と頭で考えるのではなく、稽古に打ち込んだ時間と経験を自信に変えて役として舞台に立つ、それができるようになってきた最近は考えることをやめて舞台を楽しめている自分がいるのを感じています。
役として舞台に立つお芝居とはまた違い、礼華はるとしてお客様の前に立つショーはより自分自身を出す場所。だからこそ、なかなか堂々と胸を張ることができず「自分の武器はなんだろう」と探し続けていたような気がします。今、その武器は何かと聞かれたら、私は「自分の真っ白なところ」と答えます。見る人によっては淡白に見えてしまうこともあり、以前はそれがコンプレックスでしたが、無理なく自然体に表現できることが、自分の良いところなのかもしれないな、と。そう思えるようになったのは少し自信が身についたからなのかもしれません。
NEXT STAGE
ミュージカル・ロマン
『Eternal Voice 消え残る想い』
レビュー・アニバーサリー
『Grande TAKARAZUKA 110!』
舞台はヴィクトリア女王統治下のイギリス。特殊能力を持つユリウスとアデーラ、孤独を抱えた二人がともに事件に立ち向かい愛を育んでいく。主演:月城かなと 海乃美月
宝塚大劇場公演
2024年3月29日〜5月12日
東京宝塚劇場公演
6月1日〜7月7日
Staff Credit
撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2024年LEE1・2月合併号(12/7発売)「ことばの力 vol.10 礼華はるさん」に掲載の記事です。
▼ 「ことばの力」連載一覧はこちら
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