LIFE

CULTURE NAVI「CINEMA」

いろんな角度から今を映し込んだ個性あふれる七篇

映画『私たちの声』各国の今のムードと現実が映り込む女性映画短編集

2023.09.22

この記事をクリップする

Culture Navi

CINEMA

今月の注目映画情報をお届け!

『私たちの声』

『私たちの声』
©2022 ILBE SpA. All Rights Reserved.

各国の今のムードと現実が映り込む女性映画短編集

アメリカ、イタリア、インド、そして日本。ジェンダーの多様性や平等が叫ばれて久しい中、それでも生きづらさを感じている人は少なくないだろう。そんな“私たちの声”をとらえて発信すべく、世界の映画界で活躍する女性監督&女優が集結、七つの物語を紡ぎ出した。それぞれのお国柄や内情――人種や宗教や政治が絡み、なじみ深い物語から新たな気づきまで。短編ならではの見やすさや軽やかさに加え、各話に作り手の感性や情熱があふれ、見ごたえも十二分!

ジェニファー・ハドソン主演の冒頭作は、刑務所暮らしが長い女性の更生を描く。彼女の過去に胸が押し潰されそうになりつつ、自分の中の悪魔と闘う姿から目が離せない。更生した彼女が女性や子どもを支える非営利団体を創設したという実話、彼女の物語が現実世界で続いていることが、より感動を深めてくれる。

一方イタリアの海辺の町が舞台の一篇は、急逝した妹に娘がいると初めて知った女性の物語。建築家の彼女は、託された姪を育てることを拒絶するが――。母性は誰もが持ってしかるべきか。人生の意義や自分の居場所など、思索が深まる一篇。また、夜間に飼い犬を連れてきた夫婦の妻から、DV被害のサインに気づいた獣医師の奮闘を描く一篇は、心臓が飛び出るほどハラハラ!

そして日本からは、『きみはいい子』の呉美保による“働くママあるある”必至の物語。小学校と保育園に通う姉弟を育てるシングルマザーの奮闘を、杏が好演! 朝から家事やら子どもの世話やらと、てんやわんやで時にイラッとするけれど、子どもは子どもで母を思い、小さな身体で頑張っている。そんな姿に思わずホロッと涙が込み上げる! 日々のささやかな物語だけどとびきりの幸せを感じさせてくれる、掛け値なしにおすすめの一篇だ。

また不思議な体験をするインド篇のほか、友情あり、連帯あり、多様性を謳うアニメーションあり。いろんな角度から今を映し込んだ個性あふれる七篇が、相手を思いやる大切さやその温かさで包み込まれて一作に。心くすぐられる!

全国ロードショー中

公式サイト

『ほつれる』

『ほつれる』
©2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINÉMAS

愛と理性、生理的な感情のままならなさに心ゆれる夫婦物語

夫との関係が冷め切っている綿子(門脇麦)は、友人の紹介で知り合った木村(染谷将太)と頻繁に会うように。だがある日、綿子の目の前で木村が事故に遭い、帰らぬ人に。心の支えを失った綿子は、ただ茫然と日常を過ごしていたが――。心ここにあらずの妻・綿子ともう一度やり直そうとする夫(田村健太郎)の、有無を言わさぬ詰め方がどうしようもなく怖いやら軽い嫌悪を覚えるやら、でも気持ちはわかるやらで、いい具合に心をグイグイ押す。親友役に黒木華。

9月8日より全国ロードショー

公式サイト

▼映画『ほつれる』LEE特別インタビューもチェック



『ロスト・キング 500年越しの運命

『ロスト・キング 500年越しの運命』
©PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

ある主婦の情熱が歴史のロマンを掘り起こした驚きの実話

かのシェイクスピアも冷酷非情な王として描き、歴史上、完全に冷遇されてきたリチャード3世。夫と別居し生活にドン詰まりぎみの主婦が、息子の付き添いで観劇した際に覚えた“違和感”から、不遇の王の真の姿と行方知れずの遺骨という世紀の大発見に至る顛末がスリリングに描かれる。彼女の主張を嘲笑していた専門家や公的機関の“よくある手のひら返し”に憤りつつ、家族の応援、歴史愛好家の絆、歴史のロマン、興味や情熱の純粋な在り様に興奮必至。

9月22日より全国ロードショー

公式サイト

※公開につきましては、各作品の公式サイトをご参照ください。


Staff Credit

取材・原文/折田千鶴子

こちらは2023年LEE10月号(9/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる