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作家・新川帆立さんの健やかな執筆生活を支える「元同級生の夫」「7時間睡眠」「月1カウンセリング」

  • LEE編集部

2023.01.28

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新川帆立さん

引き続き、新川帆立さんのインタビューをお届けします。

小説家として活躍する新川さんですが、実は東京大学法学部出身で弁護士として働いていた時期もありました。弁護士で小説家と聞くと、かなり固い印象がありますが、ご本人はいたって穏やかで物腰柔らかな雰囲気です。「帰国して一番に食べた食べ物は?」と聞くと「うどんです(笑)。ずっと食べたかったんですよ」と嬉しそうに話してくれました。

後半では、新川さんがどのような幼少期を過ごし、弁護士そして小説家になったかを聞きます。出版と同時にドラマ化された『競争の番人』(講談社)の制作裏側から、イギリスでの執筆活動を支える夫についても語ってくれました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む

小さい頃から、ずっと反抗期なんです(笑)

新川さんは、アメリカのテキサス州生まれ。医師の父親、専業主婦の母の元に生まれ、生後間も無く宮崎に移り住みます。三姉弟の真ん中、小さい頃は本を読んだり、家の中で遊んだりが好きな子だったと言います。

「母に言わせてみれば、私が一番生意気で育てるのが大変だったそうです(笑)。手はかからないけど、口が達者。口癖は『でも』『だって』、何かを伝えると、いつも言い返すタイプで、なかなか苦労したようです。私からしてみれば、“なぜ大人はいつもこんな偉そうにしているんだろう”と思っていて。小さい頃から、ずっと反抗期なんです(笑)」

小学校では周囲を俯瞰するクールなタイプで、一人だけ違う行動をすることもあったそう。「女の子って、友達同士でつるむみたいな子が多いと思いますが、そういうのがちょっと苦手で。もちろん友達はいましたが、集団行動が苦手でした。そんなこましゃくれた態度でしたから、先生からはいじめられましたね。学校がとにかく嫌いでした。あと、教科書を読めばわかることを、1時間かけて説明することもつまらないと思っていましたね。みんな横並びにされている感じも嫌いでした」

新川帆立さん

塾に通い始め、中学生になった頃からは学びが楽しみに変わりました。父親が茨城県に単身赴任することが決まり、高校は茨城の高校に進学しようと決めます。

「父と私、2人だけでしたが、とにかく県外の高校に進学したいと思って。茨城県には進学校もあったので、より学べる環境に行きたいと思いました。高校は、小学校や中学校よりも自由な雰囲気で、先生も高圧的ではなかったので、のびのび過ごせたように思います」

夢は小説家。現実的な仕事として弁護士になるものの

高校時代は囲碁部に所属。部員たちが麻雀をしていたのを機に、新川さんも麻雀にもハマるようになります。また、幼少期から変わらずに好きだったのが読書でした。小学生の頃には、『ハリー・ポッター』シリーズにどハマりして、何度も読み返しました。高校生の頃に小説家になりたいと思うようになりましたが、まずは現実的な仕事として、父親と同じ医師を目指します。しかし医学部は不合格。後期試験で医学部以外はどこでも入れる枠で東大に合格したため、法学部を選びました。

「父親的には浪人して医師を目指してほしかったのかな、と思いましたが、とりあえず目の前にある選択肢から決めようと思いました。小説家になりたい夢は変わりませんでしたから、仕事として何かあればいいと思って。正直言うと、なんでも良かったんですよね。ただ、法律の勉強はとても楽しかったです。大学時代が学校生活の中では一番楽しかったですね」

新川帆立さん

その後大学院まで進み、卒業後に司法試験に合格。しかし、弁護士になってからが苦労の連続でした。弁護士事務所で働き始めたものの、「事務作業がとにかく苦手でした。その上、人から何かを依頼をされて行動することが向いていなかったようで。弁護士は情熱がないとできない仕事だと気付かされました」。



『競争の番人』は小説の刊行とほぼ同時にドラマ化

弁護士として4年ほど働いた後、作家活動に専念。作家名は、以前、東京の中央区新川に住んでいたことがあった縁から苗字を“新川”、名前は本名に“帆”の字が使われており、漢字を伝えるときに「帆立の“帆”です」と説明していたのがきっかけで“帆立”と決めました。29歳で『元彼の遺言状』(宝島社)で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビュー。翌年『競争の番人』を出版、どちらもドラマ化され注目を集めました。とりわけ、『競争の番人』は、小説のリリースとほぼ同時にドラマ化されるという異例の展開で進みました。

「『競争の番人』は、小説を書く前に企画書を書いて編集者さんに提出をしたんです。すると“これは映像化できそうだ”ということで、ライツ(版権関連)の部署の方が動いてくださって、映像化のオファーが来たんです。すぐに原稿を書く必要があったんですが、タイミング良く海外から日本に一時帰国しており、帰国後2週間の自宅隔離中だったんです。その2週間で原稿を書き上げました。書いた後も、編集部やテレビ局、俳優の所属事務所に確認してもらったり、改稿を繰り返しながら、並行して『小説現代』にも掲載してもらって。速いスピードで進んでいきました」

新川さんの最新刊『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』(集英社)執筆裏話はインタビュー前編で読めます!

29歳の時には大学の同級生だった夫と結婚。執筆活動をしながら、夫の仕事に伴って、アメリカに1年間住み、その後はイギリスへ。現在のイギリスでの生活は、執筆活動に集中できる理想的な環境だと話します。

「日本と時差があるのがありがたいんですよ。メールを即レスしなくてもいいし、多少遅れてもあまり問題がない。オンラインの打ち合わせもそれほど入るわけでもないので、のびのびと書かせてもらっています。今住んでいる場所は気候も良くて過ごしやすいんですよ」

健やかな執筆生活をために欠かせない、夫のサポート

執筆の気分転換に、近所を散歩することも。住んでいるのはロンドンから1時間ほどの場所で自然も豊か。近くにはりんごの果樹園があり、散歩しながらりんごの育ち具合をチェックするのが日課になっています。健やかな執筆活動を続けるためには、夫の生活のサポートが欠かせないと言います。

「実は夫が家事の9割をやってくれています(笑)。私が家事が苦手というのもありますが、彼は洗濯や料理が得意で、苦に思わずやってくれるんです。夫は朝7時に起床して簡単な朝ごはんを作り、部屋の掃除やゴミ出し、洗濯など、夜型の私が起きるころには一通りの家事を済ませてくれています。本当にありがたいです。私の担当は、洗濯物をたたむこと。乾燥機で乾いた衣類をたたむだけ、5歳でもできるようなことですが(笑)そのくらいで勘弁してもらっています」

新川帆立さん

週末は自転車に乗って、2人で買い物に出かけることも。そんな時も、トイレットペーパーや水、常備品のストックが残っているかどうかをチェックするのは夫の担当。事務仕事、管理全般が苦手な新川さんにとって、自分とは真逆なタイプの夫は相性がとても良いそう。

「私はとにかく面倒くさがりで、トイレットペーパーを平気で切らしてしまうタイプ(笑)。人にやってもらうことも全然嫌じゃないので、私が興味のないところを全部やってくれる夫とは、とても相性が良いと思います。 昔からの付き合いだし、気も使わない。私にとってはとてもありがたい、理想的な夫ですね」

原稿は、夫に一番に読んでもらっています

一方で、作家の夫ならではの特権も。作品を送り出す前の重要な役回りを担当していることを明かしてくれました。

新川帆立さん

「原稿は、夫に一番に読んでもらっています。原稿を編集者さんに送るって、実はとても勇気がいるんですよ。自信がなくて、これでいいのかが分からない。その勇気がもらえる感想が欲しいんですよね。“面白かった”と褒めてほしい。でも、毎回同じ褒め方だと嘘っぽく聞こえるから、それぞれ、どこが面白かったか、どう面白かったかを具体的に褒めてほしいんですよね(笑)。私って、結構面倒臭いやつだと思いますけど(笑)夫には全面的に支えてもらっています」

新川帆立さんに聞きました

心のウェルネスのためにしていること

月1回のカウンセリング

「作家は、売れても売れなくてもメンタルを病みやすい職業だと思っています。メンタルを壊してしまうと、元に戻すのがとても大変です。心のウェルネスを支えているのが、月1回のカウンセリングです。元気がないからお願いするわけではなく、毎月定期的にカウンセリングをお願いしています。自分が気づいていなくても、話しているうちに“これが嫌だったんだ”“悩んでいるんだ”と気付かされる。病みそうになる前に、お医者さんが先に気づいてくれるんですよね。日本にいた頃から同じ先生にお願いして、今はzoomでカウンセリングを受けています。1回5000円くらいでお願いできるので、とてもおすすめです」

身体のウェルネスのためにしていること

睡眠はきちんと7時間!

「とにかく寝ることですね。筆が乗ってくると、ついつい徹夜して書いてしまったり、面白い本を読んでいると止められず読み続けてしまったり。生活のリズムは乱れがちなのですが、睡眠時間はきちんと7時間は取るようにしています。筆が乗りすぎて眠ろうとしても、頭の中でどんどん書き続けているようなこともあります。寝入りに時間がかかっても、大体はそれくらい寝るようにして疲れを取るようにしています。睡眠不足で書き始めても効率が悪くなるだけ、睡眠は大事です」

インタビュー前編はこちら!

元弁護士の作家・新川帆立さんが新作小説のテーマに満を持して「法律」を選んだ理由


撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

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