うららかな日差しのもと、久しぶりにオープンカフェでひとり時間を楽しんでいると、お隣の会話が不意に耳に入ってきました。どうも二人組のうち片方が、この春から一人暮らしを始めたばかりのようす。
心配事を挙げています。「ゴキブリが出たらどうしよう?」「はいすいこうを、触るのが怖いんだけど、どうしよう?」。
ああ。確かに「はいすいこう」が無闇に恐ろしかった時代、私にも、ありました……。ぬめぬめ、ドロドロ、謎のブラックホール「はいすいこう」のお掃除。
実は大人になっても、まだ苦手だという方、案外少なくないのではないでしょうか?
「はいすいこう」のお掃除について、一度おさらいしてみませんか?
記事でcheck! Ⅰ「はいすいこうを詰まらせる原因」と「おそうじの基本」
- キッチンの場合
- 浴室の場合
- 洗面所の場合
- 洗濯機の場合
- トイレの場合
Ⅱ「日常の詰まり予防法」
排水溝? 排水口? 「はいすいこう」って、いったい?
スマホやPCで「はいすいこう」と打ち込むと「排水溝」か「排水口」と変換されますね。
「排水溝? 排水口?」
「はいすいこう」って一体どこの何? 確認しておきましょう。
・排水口(はいすいこう)=排水を流すために開いた、穴
・排水溝(はいすいこう)=排水を流す、通路
しかしいささか、ややこしい「排水溝」。
これは、元は家の外の、雨水などが流れる道路の側溝(U字溝、いわゆるドブ)などを指す言葉だったのですが、近年では屋内の「排水管」に近い、排水口の奥の「排水トラップ」部分などを指すような意味も持つようになっています。
確かにひとつなぎの「はいすいこう」。「口」だけ掃除すれば済むわけにいかず、その「奥」までリーチしないといけないケースも多々。「はいすいこう」とは、厳密にどこというものではなく、<排水「口よりの、溝(通路)」>というフンワリした捉え方が現実的なようです。
「はいすいこう」が汚れることで引き起こされる、悪いことって?
汚れた「はいすいこう」のイメージ。ぬめぬめ? ドロドロ? 臭い? 詰まり?
そう、「詰まり」。
「はいすいこう」周りで一番恐れ、避けなければいけないのは、実は「排水詰まり」のトラブルです。
詰まったものの状況によっては、排水管そのものが破損する恐れもあり、そうして家の内外に排水(汚水)が漏れ出てしまうことが、もっとも避けなければいけない事態です。
汚水が漏れると、戸建てでは建物の構造が傷んで腐ったり、集合住宅の場合などは階下のおうちへの賠償問題に発展する可能性も。詰まりは決して軽視できません。
「はいすいこう」を汚し詰まらせる、主な要因
そんな「はいすいこう」を汚し、詰まらせかねない要因は、普通に暮らしている中で日々生じているのです。すでに知っていて気をつけていたこともあれば、まるで思いもよらなかった原因もあるかも知れません。よくあるものを挙げますので、ぜひ参考にし改めて注意してみてください。
キッチンの場合
・ラップなどの包装
・誤って流した調理器具など
・食べ物の欠片やカス
・食器や料理などの油分やタンパク質
・うどんやパスタの茹で汁のデンプン
・汚れや水分をエサに繁殖した細菌のかたまり(ぬめり)
浴室の場合
・毛
・石鹸やシャンプー、リンスなどによる石鹸カス
・身体の汚れ、皮脂や石鹸成分と水分をエサに繁殖した細菌のかたまり(ぬめり)
・衣類や靴やペットを洗った時などに出る泥土
洗面所の場合:洗面ボウル
・毛
・歯磨きなどの際に口から出た食べ物のカスや痰
・誤って流したヘアピンや綿棒、ヘアゴムなど
・マウスウォッシュの成分
・細菌のかたまり(ぬめり)
洗面所の場合:洗濯機
・排水ホースの接続部分に溜まった毛(繊維)クズやぬめり
トイレの場合
・排泄物
・トイレットペーパー
・掃除用シート
・誤って落下させ流してしまった何か(生理用品や使い捨てカイロなど)
「はいすいこう」掃除の基本
トイレや洗濯機部などは異なりますが、キッチンや浴室、洗面などの「はいすいこう(排水口)」の構造は、概ね上から順に、以下のようになっています。
↓ゴミ受け(網やネット、バスケット、ヘアキャッチャーなど)
↓排水トラップ(椀、ドラム、S字やU字管など)による封水
↓排水管
一番大切なことは、とにかく「ゴミ受け」に乗った大きなゴミは、こまめに速やかに除去することです。髪の毛や繊維クズなどももちろん、「これくらい流しちゃえ」のないようにします。何よりこれが大切です。
排水管の先にある下水から、直接空気が家の中に上がってこないように水で封をしている(封水)部分が「排水トラップ」です。ここには誤って流してしまった大きなモノが引っかかっていたり、排水の油分が固着していたり、細菌のかたまり(ぬめり)が育っていることがあります。
多くの場合、椀トラップまでは手を入れて外し、自力でケアすることが可能です。ぬめりや臭いが気持ち悪いかもしれませんが、ゴム手袋をし、換気をよくして、手で取れるゴミは取り、固着油やぬめりはボロ布で拭き取るか、ブラシなどで擦り落し、ネットなどで濾しとりながら洗い流すようにしましょう。界面活性剤を含んだ弱アルカリ性の洗剤を使うとよく落ちます。
トラップの奥部について、ラバーカップ(スッポン)など使用したり、髪の毛などを溶かすほど強力なアルカリなどの薬剤(パイプクリーナー)を投入し、自力で詰まりを解消すべしというイメージがあるかもしれませんが、前述したように汚水漏れを起こさない事こそ最優先させなければいけません。
すでに何かが詰まってしまっているような場合には、やみくもに手をつけず専門業者に対応してもらったほうが安心です。
排水管の奥の詰まりにも専門業者の高圧洗浄が必要になります。
普段からできる「はいすいこう」の詰まり防止アクション
今は詰まっていないという状態でできる、日々の詰まり防止作業に、「ゴミ受けのゴミをこまめに取る」ことのほか、排水口やトラップ部分に「細菌のかたまり(ぬめり)を育てない」があります。
具体的には、塩素系の薬剤を使います。
・1日1回、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤(アルカリ性)を排水口に軽く流すかスプレーし、10分ほど置いて流す
・週に1回、次亜塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウム主成分としたパイプクリーナー(アルカリ性)ジェルなどを排水口に適宜垂らし、15分ほど置いて流す
・月に1回、塩素化イソシアヌル酸ナトリウムなどを主成分とした発泡性の排水口洗浄剤(中性)で洗浄泡を排水口やトラップに行き渡らせ、30分ほど置いて流す
これらのアクションは汚れに触れずに行えるので、これだけなら続けられるという人もいるのではないでしょうか。
ただどうしても強い薬剤は使いたくないという場合には、こまめにゴミ受け、トラップの掃除を手作業で行う前提で、週に1回カップ1杯の重曹を排水口にふりかけ、温めたカップ1杯のクエン酸水(5%)を流し入れて発泡、ぬめりを緩めるという方法も、エコ寄りで挙げられます。ただし、強力な効果はありませんので、念のため。
ともあれ、見ないふり、触らないのを続けるほどに、恐ろしくなる「はいすいこう」。
「詰まらせない!」を合言葉に、できるところからケアして行きましょう!
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
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藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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