今回のゲストは、アスリートフード研究家の池田清子さんです。LEEweb「暮らしのヒント」でも、アスリートフードやプラントベースの魅力を紹介する記事を執筆しています。
「私のウェルネスを探して」は、心身ともに健やかに過ごしQOL、自分自身の人生の質を上げることの大切さにいち早く気づき、様々な形で発信を始めた方々の「ウェルネスを探す旅」をたどるインタビュー連載です。(この記事は全2回の1回目です)
トレイルランは、ストレス発散のご褒美時間
池田さんの夫は、マウンテンバイクのプロアスリート池田祐樹さん。祐樹さんと結婚した2013年にアスリートフードマイスターの資格を取得、夫を食事面で支えながらアスリートフードの研究やプラントベースダイエットの紹介など、健康的で強く美しくなるための食事について発信してきました。池田さん自身もプラントベースの食事をしながら、日々トレーニングを実践しています。
朝は5時起床、自宅で筋トレやストレッチを行った後、朝食後にランニングをするのがルーティン。山の中を走るトレイルランニングと、街中を走るロードを週1、2回、それぞれ5〜6kmを走ります。暑さが厳しくなる夏場は朝がもっと早くなり、トレイルが多めになるそう。急勾配の山道のランニングはきつそうに見えますが「上りが好きなんです」と嬉しそうに池田さんは言います。
「トレイルランニングは季節や気候の変化が肌で感じられます。訪れるたびに違う一面を見られるので飽きないんですよ。雨の後は地面や木々が濡れて空気がしっとりしていたり、鳥のさえずりが聞こえたり、花や木の香りがただよってくることも。今は参加するレースが決まっていないので、ストイックに走っていません。走ることで血行を良くしたり、毎日パソコンやスマホを見ているので遠くを見ることで目を休ませたり。コンディションを良くするために走っています。私にとって山は疲れを取りに行く場所、ストレス発散のごほうびみたいな場所なんです」(池田さん)
夫がレースで初優勝、プラントベースの力を確信
池田さん夫婦は昨年3月に渡米し、拠点をアメリカに移す予定でしたが、コロナで渡米が中止に。「日本でトレーニングができる拠点を作ろう」と、トレイルランニングができる青梅市にガレージ付きの新築賃貸物件を見つけ、ガレージをトレーニングルームとして使う新居での生活を始めました。
仕事面では夫婦で共有する知識が多いため、執筆した記事をお互いにチェック。池田さんが監修に携わるテレビ番組の打ち合わせに祐樹さんが同席するなど、二人三脚で行うことが多いそう。昼食時には、トレーニング内容や仕事について話し合います。
渡米に向けて英語も勉強中。毎朝6時半から7時まで英語のラジオを聴き、7時半からはフィリピンの先生とオンラインレッスン。夜は、英語でネットフリックスのドラマ鑑賞。ウィークリーの英字新聞を定期購読し、世界情勢や人権問題、気候変動など世界のニュースをチェックします。
食事はプラントベース(菜食)で、朝食はフルーツやパン、昼食はごはんものや麺がメイン、夜はサラダが定番です。取材で訪れた日の昼食は、ココナッツミルクを使ったカレーとデーツあんこのデザート。色とりどりの野菜を手際よくカットし、根や種も可食部はできるだけ丸ごと使います。
食べてもらうだけではアスリートの気持ちは分からない
池田さん夫婦がプラントベースの食事法を始めたのは2014年。祐樹さんの遠征先で、チームメイトから勧められたのがきっかけでした。マクロビオティックを学んだ経験もあり、気軽な気持ちで始めた3カ月後、祐樹さんが100マイルのマウンテンバイクのプロレースで初優勝します。
「変えたのは食事だけでした。疲労回復の早さ、胃腸の軽さ、スタミナ切れがないなど、途中から効果は感じていましたが、優勝したことで確信しました。テニスのノバク・ジョコビッチ選手やF1レーサーのルイス・ハミルトン選手を始め、海外のトップアスリートでもプラントベースを実践する人が増えています。日本のアスリートでも私たちを含め、徐々に増加しています」(夫・祐樹さん)
さらに「食べてもらうだけではアスリートの気持ちは分からない」と池田さん自身もトレーニングを開始。祐樹さんのサポートを受けながら、24㎞のマウンテンバイクのヒルクライムレースに参加し、夫婦で優勝しました。
「彼女のポテンシャルには驚きました。あまり練習していないのに優勝してしまうので正直驚きましたし、悔しさもあります(笑)」(祐樹さん)
「プラントベースと、良きアドバイザーがそばにいたおかげだと思います(笑)。プラントベースの食事法はとても簡単で、新鮮な野菜や豆類、全粒粉穀物、きのこ、海藻、ナッツ、フルーツなどをシンプルな調理法でバランスよく、なるべく丸ごと食べる。流行りのダイエットや食事制限と異なり、いつも食べている身近な食材で実践できるため、無理なく続けられるライフスタイルの一つだと思っています」(池田さん)
日本はプラントベースがやりやすい環境
池田さんが住む青梅市は、自然が豊かで野菜畑や直売所も多く、新鮮な地の食材が手に入りやすい環境です。駐車場の隣には畑があり、野菜をおすそ分けしてもらうことも。生ゴミは畑に設置してあるコンポストに入れさせてもらい、肥料として再活用されています。 地産地消の考え方は、プラントベースの食事法に通じると言います。
「プラントベースは、食材をなるべく丸ごと食べること、そして未加工(生)であるほど良いことがポイント。そのために地の新鮮な食材が手に入りやすいのはありがたいです。日本は大豆を使った納豆や豆腐などの食品が豊富で、一汁三菜など野菜中心の食事が昔から根付いているので、プラントベースが始めやすい環境でもあります。
野菜が高いから・果物が高いからプラントベースが実践できない、と言われることもあります。でも、私たちの体は食べたものでできているので、全身の細胞を作る材料に多少お金がかかっても費用対効果は高い。それを体感しました。また、加工品にはお金をかけるけれども、食材となるとお金をかけない人もいます。5000円のケーキは買うけれど、5000円のメロンは買わないと言ったような。何を隠そう私が以前、そうでした。手を加える価値も勿論あるけれど、加工されていないものにも価値がある。その価値観がだいぶ変わって、お金の使い方にもかなり影響しました。完璧でなくとも、基本は新鮮なプラントベースを維持して、たまのハレの日に嗜好品を嗜むくらいが良いと感じています」(池田さん)
プラントベースの予想外のメリット
プラントベースの食事法を始めてパフォーマンスが上がったことはもちろん、夫婦で花粉症の症状が軽減。祐樹さんの喘息の症状が治まり、風邪をひきにくくなるなど予想外のメリットもありました。
「アスリートがレース後の飛行機で風邪をひいてしまうのはよくある話で、体を酷使すると免疫が下がり、風邪をひきやすくなります。風邪で体調を崩しトレーニングが遅れてしまうのは、アスリートにとって致命傷にもなり得る。体を早く元の状態に早く戻すこと、レースで実力が出せる状態にすることが私の仕事です。とはいえ、仕事で夫以外のアスリートにアドバイスをすることもありますが、普段は家庭内で行っていること。みなさんが食事で家族の健康をサポートしているのと、変わりはありません」(池田さん)
「プラントベースの食事法を始めて物足りないとか我慢していると感じたことは一度もないですね。肉や魚を食べていた時より食材の品目は確実に増えていますし、カラフルで五感も楽しめます」(祐樹さん)
味覚が研ぎ澄まされ、コンプレックスを魅力に
食事に加えて、毎日のトレーニングも欠かせません。室内での器具やマシンを使ったトレーニングでは、鍛えたい部分や目的に応じて道具を使い分けます。池田さんの力強くしなやかなボディは、ただ筋肉質なだけでなく、女性らしい魅力が溢れています。プラントベースの食事とトレーニングを続けた結果、身体にも変化があったと言います。
「食事を変えてから味覚が研ぎ澄まされ、酸化した油にも敏感になりました。肌は潤いが増して、日焼けからのターンオーバーもスピードアップしたように感じます。トレーニングを続けたことで体力はついたと思いますが、痩せることを目的にせず、ボディラインを整える意識で続けています。以前は毎日体重計に乗っていましたが、測るたびに一喜一憂してしまうので(笑)最近は1週間に1度だけ。体脂肪率は23%前後をキープしています。
理想は、弾けるような体でしっかり走れる体。私は幼児体型でお尻が大きいのがコンプレックスでしたが、それを逆手にとってトレーニングで更にお尻を鍛えるようになりました。コンプレックスをチャームポイントに変えたおかげでタイトスカートも履くようになり、鍛えた成果を見せつけています(笑)」(池田さん)
池田清子さんの年表
0歳 | 千葉県船橋市に生まれる |
---|---|
8歳 | 児童館の子ども料理教室にはまる |
17歳 | 高校時代に観劇にはまる |
18歳 | 大学入学 |
19歳 | 大学に通いながら、劇団に所属 |
21歳 | 大学卒業。就職せず、劇団で活動しながらバイトに明け暮れる 並行して料理教室にも通う |
25歳 (2004) |
劇団を退団。モデル事務所で働き始める |
27歳 (2006) |
マクロビオティックの教室に通い、資格を取得 |
33歳 (2012) |
高校時代の同級生だった祐樹さんと再会 |
34歳 (2013) |
事務所を退職。祐樹さんと結婚 |
35歳 (2014) |
アスリートフードマイスターの資格を取得。プラントベースの食事をスタートする。24kmのヒルクライムレースで夫婦揃って優勝 |
37歳 (2016) |
ビオトープ(株)を設立 |
38歳 (2017) |
青梅マラソンで青梅市民の上位に入り、女性選抜1名に選ばれる。モデル事務所を設立 |
41歳 (2020) |
渡米のため、モデル事務所を閉所。コロナで渡米が中止になり、青梅にトレーニングと暮らしの拠点を構える |
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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