薄井シンシアさんの「育児書を捨てよ、子どもを見よ!」

「何で言うこと聞いてくれないの!?」と思ったら…【薄井シンシアさんの「育児書を捨てよ、子どもを見よ!」第15回】

子育てはうまくいかないことの連続

私のところに寄せられる親御さんたちの相談事を聞くにつけ、子育ては、ああでもない、こうでもないの連続だなあとつくづく思います。早く寝なさいと言っても、だらだらと夜更かしをしてしまう。宿題はできたの?と聞いても、ゲームに夢中でのらりくらり。その都度、はぁ〜とため息をついて、「もう、どうすればいいの!?」と。

でも大人の思うように動いてくれないのは、ごく自然で当たり前のこと。何事も身に付いていくには、時間はかかるものだと自分に言い聞かせながら、焦らず見守ってあげてください。

子育てはうまくいかないことの連続です。そんな時におすすめしたいメソッドがあります。私はいつもこれを使って、自分の子育てを見直し、切り抜けてきました。「4つのE」と名付けているのですが、その4つとは、① expectation (期待)② education (教育)③ encouragement (励まし)④ evaluation (評価)です。

期待だけなく「教育」を

最初の3つは、ひとつながりです。1つ目は子どもに「期待」するという意味のexpectation。でも、期待だけして「教育」=education しなければ、期待されている子どもは潰れてしまう。なので、1つできたら、必ず「励ます」=encouragement する。ここまでが「3つのE」です。それでもうまくいかないのであれば、4つ目のEの登場です。自分の行いを「評価」evaluation して修正していく。

最初の「3つのE」は、娘がアメリカへ留学した後、バンコクのインタースクールで食堂のおばちゃんとして働き始めたときに知りました。私が、子どもたちにテーブルのお片づけを指導しているのを見たスクールの学長に、こう指摘されたのです。「シンシアの教え方は、子どもの教育の基本セオリー『3つのE』に基づいていますね」と。

当時、食堂はまさにカオス状態でした。子どもたちは食べたら食べっぱなし、トレイも食器も椅子も何もかもが乱雑に放置されたまま。先生たちは、毎回「きれいに片付けなさい」と声を張り上げるのですが、一向にきれいになる気配はありません。食堂にわぁわぁと騒ぎ声だけが鳴り響いて、私も最初はお手上げ状態だったのです。

でも、観察しているうちに、分かってきたことがありました。この子たちは、きれいに片付けるということ、言い換えると、きれいに片付けた状態が分からないんじゃないか、と。そして、先生たちもまた、子どもたちは、きれいに片付けられるはずだという期待だけがあって、何も教育していていないということも。

私は、まず、子どもたち自身に「きれいに片付けるということがどういうことなのか」を理解させ、それをわかりやすく行動で示すことが必要だと考えました。そこで、私が自らお手本をやって見せたのです。

「ほら、よ〜く見てね。食べ終わったら、自分のトレイにスプーン、フォーク、コップ、ボウルを全部のせてまとめるの。それができたら、ゆっくりと立って、椅子を机の下に押して入れるの。その後に、両手でトレイを持って返却場所に持って行くのよ。さあ、これで、テーブルの上には何もないでしょ。椅子はきちんと並んでるでしょ。これがきれいに片付けるっていうことなのよ。分かったかな? じゃあ、やってみましょう」と。

ここまで具体的に示さなくては、子どもには理解できません。そして、必ず大人がやってみせるのです。子どもたちは、最初はぽかんとしていましたが、すぐに理解しました。一連の動作を毎日繰り返すうちに、確実にできるようになっていきました。

A group of cheerful small school kids in canteen, eating lunch and talking.

「ご褒美」で習慣化を

そして、スタートをして1週間目の金曜日、私は子どもたちに特別なご褒美を用意していました。彼らが大好きなパンケーキのデザートです。それを配膳台に見つけたときの、彼らの笑顔と言ったら! 興奮して、再びテーブルが乱雑になるかと思いましたが(笑)、もちろんそんなことはありません。この日も、子どもたちはきちんと手順どおりに片付け、明るくはしゃぐ声だけを残して食堂を出て行きました。大成功です! 以来、 この「お片づけ」は子どもたちに定着し、習慣になりました。

学長は、この私のやり方のどこを「3つのE」だと解釈したのでしょうか。

1つ目のEの期待するとは、子どもたちにこうして欲しいと期待する「食堂全体がきれいに片付いた状態」のこと。これは、目標値と言い換えてもいいかもしれません。

2つ目のEの教育するは、期待した状態になるように、トレイに食器類を乗せて返却場所に持っていくまでの一連の行動を習得させること。そのために、動作一つひとつを具体的に言葉で示し、実際にやって見せました。

3つ目のEの励ますは、週末の特別デザートのパンケーキです。これは、1週間よく頑張ったねと褒めるのと同時に、次の1週間に繋げるためのモチベーション=励ましでもありました。

どの「E」も、子どもたちに意図が明確に伝わってこそ(片付けるという行動の「見える化」とも言えます)、なし得た成果だったと思います。

それにしても、普段から、私が意識するともなくやっていたことが、教育では基本セオリーの「3つのE」だったとは、驚きでした。もっとも、振り返ってみると、私のやってきた子育てには、確かにいくつも思い当たる「3つのE」があったのです。

そもそも私は、娘が1歳半の時、お片づけのやり方を食堂のケースと全く同じ「3つのE」で教えていました。宿題も、ただ「やりなさい」と言うのでなく、「いついつまでにやろうね」と具体的にタイムテーブルを決め、終わったら、あとは好きにしていいという自由(ご褒美)を与えました。読書習慣も、本の読み方(いつ、どこで、どんな本を読むか)を示し、それが達成できるように環境を整え、娘のモチベーションを持続させる星取表(本を読んだら星をつける表)を取り入れていたのです。

でも、当時の私が「3つのE」を知っていたわけではありません。もしそれが、教育の基本セオリーだと知っていれば、当時、思い悩むことはもう少し減っていたかもしれません。

それでもうまくいかないときは

最後のEは、評価(Evaluation)の「E」です。これは、一言で言えば、「3つのE」でうまくいかなかったときに使う「E」。私が新たに付け加えたものですが、実はこれも、バンコクの食堂スタッフの指導現場で得た気づきでした。

当時、食堂には定期的に衛生局のチェックが入っていましたが、なかなかパスすることできませんでした。スタッフたちは、マニュアルどおり真面目に仕事をこなしているにもかかわらず、です。そこで私は、彼らの動きをつぶさに観察してみることにしました。動作中に、パスできない原因が潜んでいるのではないかと考えたからです。原因は、判明しました。彼らは、味見をしたスプーンを洗いもせず、そのまま使い回していたのです。

そうと分かれば、スプーンの扱い方を変えなければなりません。私は、何度か試行錯誤をして失敗し、ようやく使ったスプーンとこれから使うスプーンを間違えずに区別する方法を編み出して、それを徹底的に指導しました。その結果、無事に衛生局のチェックをパスすることができました。

この見直しこそが、4つ目のE=evaluation(評価)です。それまでやっていた「3つのE」がうまくいかないとき、子どもがやらない(できない)ことを問題にするよりも、まずは自分のやり方の方に問題はないかと見直してみる。そうすると、当たり前(習慣や常識)と思ってやっていることの中に、思わぬ問題が潜んでいるものなんですね。

伝えるときは具体的に

よくあるケースが「伝え方」の問題です。卑近な例を挙げれば、家事をめぐる揉めごとです。夫に洗濯物を干してと頼んだら、しわくちゃのまま干してしまい、喧嘩になったと。でも、もし、シワがつかないように干して欲しい(1つ目のE=期待)のなら、私なら「シワを伸ばして干してね」と一言加えて伝えます。もっと言えば、夫にシワにならない干し方をあらかじめ教えておく(2つ目のE=教育)でしょう。同じ屋根の下に暮らすとは言え、干し方ひとつ、家族それぞれよしとする感覚は違うんですね。

子どもが、親に言われたことを行動に移せない場合も同じで、子どもはそれ自体を理解できていないことが多いのです。遊びに出かける子に「夕方までに帰ってくるのよ」と言っても、夕方には幅があります。「夕方の5時までに帰ってくるのよ」と伝えるほうが子どもにとっては分かりやすい。「宿題やっておきなさいね」と言うのも、私なら「夕食の始まる6時までにやってください」と言います。具体的に伝えるんです。この繰り返しを経てようやく、習慣として子どもの身に付いてくるんですね。

親がこうしてほしいと期待するのなら、少なくとも「いつ、どこで、誰と、なぜ、どのように」の4W1Hをはっきりと伝えてあげてください。それだけで、子どもの頭の中は整理されます。今、何をすべきかをきちんと理解できるのです。

自分のやり方を見直す

「伝え方」を例に挙げましたが、うまくいかないときに、子どもに問題があると考えるのではなく、自分のやり方そのもの=「3つのE」を見直してみると、工夫や改善できることがきっとあるはずです。

私は子育て当時、「3つのE」も4つ目のEもセオリーとしては知らなかったけれど、やっていたことは、まさに「4つのE」でした。知らずに頼りとしていた、子育ての土台でした。ひょっとしたら、あなたもまた、お子さんに生活習慣や勉強を教えるなかで、無意識にやっているかもしれませんね。

こうした子育ての土台があると、心を落ち着かせることができると思います。「言うことを聞いてくれない!」と嘆くよりも、この「4つのE」を早速、行動に移してみてください。大丈夫、今からでも遅くはありませんよ!

構成/鵜養葉子

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Writer Profile

Cynthia Usui

17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」からラグジュアリーホテル勤務を経て、現在は大手外資系企業で働きながら、講演活動や出版活動も行う。著書に『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたかママ・シンシアの自力のつく子育て術33』(KADOKAWA)、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。

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