子どもの思いを尊重したいけど・・・
以前、「親子間ルール」(=3つのR)について取り上げましたが、なかなか守れないという声が届いています。その時々で変わる子どもの思い。「なるべく尊重してあげたいけど、それでは、「わがまま」を助長するのでは?」そんな葛藤が聞こえてきます。そこで導入したのが、最低限の決まりとして「親子間ルール」をつくる、ということでした。今回は、この「親子間ルール」について、「4つのE」(※)から捉え直してみます。
(※)① expectation (期待する)② education (教育する)③ encourage ment(励ます)④ evaluation (評価する)
Q:シンシアさんのアドバイスを参考に、小2生の娘と「おもちゃの買い方ルール」を決めました。1週間のお小遣いを500円と決め、加えて、お手伝いをしたらその度に50円のお駄賃をあげましょうというルールです。お小遣い帳をつけることも約束しました。最初は、喜んでやっていましたが、先日、ショッピングセンターに行ったら、たまたま友達が持っているのと同じポシェットを見つけ、買って買っての大騒ぎ。「それはお小遣いを貯めて買ってね」と言っても、週末にお小遣いをもらうと、すぐに他のものに全額買ってしまってお金を貯められないんです。どうすればいいでしょうか? (36歳 女性)
一度決めた「ルール」は、意地でも守る。めげないで!
A:話し合うだけでも難しいと言われる親御さんが多い中で、娘さんと相談してルールを決められたのは、素晴らしい! まずは、最初の一歩を踏み出せたことを喜びましょう。しかも、あなたは娘さんがぐずるのをなんとかしのいで、ルールを続行させていらっしゃいます。これもまた、素晴らしいと思います。というのは、この段階で親がめげてしまい、図らずも子どもの言うことを聞いてしまうケースが多いからです。
私は、いったん親子でルールを決めたら、意地でも守り通すと心に決めていました。めげませんでした。もし、親である私が子どもの駄々に根負けしてルールを破ってしまったら、子どもは、ルールなんてそんなものかと思ってしまうからです。
子どもは、親を試すんですよ。娘も5歳くらいの時、ある決まり事を守らずに駄々をこね、挙句に私の靴に噛み付いて抵抗したことがありました。私は、靴を娘に噛みつかせたままにして脱ぎ、さっとぐずる娘のそばを離れ、外に出てしまいました。娘は、泣きながら私の後を追いかけてきましたが、小さな子どもにとって、ぐずることが自己主張の大切な手段。簡単には手放しません。子どもも必死なんですね。それに負けないように(笑)。
同じような場面は、何度もありました。そのたびに、私も疲れたし、くじけそうになりました。だって、私が折れる方がずっと楽なんですから。でも、そうして場数を踏んでいくうちに、ぐずってもママには絶対に通用しないんだということが、娘にもだんだん分かるようになっていったんです。最後は、私の粘り勝ちです(笑)。
ねだられたら、買ってしまったほうが早いし、親子ともに疲弊もしません。でもね、めげてしまっては、この先ずっと同じことが続きます。時間はかかりますが、ぐっと堪えてください。必ず、ルールが定着する日が訪れますよ。
どうしてもうまくいかない場合に打つ手が、「4つ目のE」
ただ、親子で相談して決めたルールでも、やってみるとどうしてもうまくいかないということは、確かにありますね。一度決めたことだから、守りたい。でも、内心は葛藤だらけ。
このルール、もうやめてしまいたい。ねだられたら、その場で買ってしまいたい。周囲に迷惑をかけるし、みっともないし。精神的にまいっちゃう……。
こんな風に行き詰まってしまった場合は、冷静にルールそのものを見直してみましょう。
ルールは、「3つのE」で出来ています。つまり、① Expectation (期待する)② Education (教育する)③ Encouragement (励ます)ですが、これらは、適切だったかどうか。それを検討するのが、4つ目のE(evaluation)でした。
例えば、相談者の「お小遣いルール」でお子さんに期待したことは、何だったのでしょう? 「買いたいものを我慢して、お金が貯まったら買う」というのはお母さん側の期待で、娘さんにとっては、まだそれを守るのが難しいのでしょう。
つまり期待値が高すぎたのです。何ができるようになって欲しいのかを、娘さんの現在のキャパシティーをよく見てはっきりさせておくと、不要なイライラもなくなってくると思います。これはあくまで、「現在のキャパシティー」ということです。将来的には、少しずつステップアップしていけばいいので、今からハードルを上げる必要はありません。
お小遣い帳が続かないというのも、期待が高すぎたのかもしれません。続けられないようなら、まずは、使った金額だけでも、紙に書く、ということを習慣づけてはいかがでしょうか。
さらにお金を貯めてから欲しいものを買う、というのはもっとハードルが高いと思います。我慢させるのは限界があります。私だったら、遊び感覚で金利制を導入するかもしれません。100円貯まったら、10円あげる。1000円貯まったら、もっと利率をあげて150円あげるとか(笑)。楽しみながらできる工夫をしてはいかがでしょうか。
高い目標も、小さな目標の積み重ねの上にあります。ですから、いきなり難しいゴールを目指すのではなく、ちょっと頑張ればできる、という目標を掲げましょう。少しずつクリアしていくことで達成感も得られるでしょう。そうなれば、好循環が生まれて、親子のコミュニケーションも円滑になると思います。
サイズに合わない靴を履いていると歩きづらいように、ルールもそれが親子ともに合わなければ、窮屈になってしまいます。もう一度、ルールを決める目的に立ち返り、最初の3つのEを見直してみましょう。子どもの性分や状況に合っているかだけでなく、あなた自身がそれを続けられるかどうか?
苦しいなら躊躇なくそのルールを手放して
ルールとは、いくらか無理を強いるものです。けれども、そのルールにどれほどの妥当性があったとしても、親子ともにつらいと感じるほどの無理をする必要はないのです。ルールの内容を見直して、もし、これは子どものキャパシティーを超えていると判断したら、そのルール、潔く手放して、違う方法に変えるのも一つの手です。
それから、もう1つ大切なこと。我が家では、ルールは、多くても5つまでと決めていました。多すぎると、縛りがきつくて、ただただ親子で疲弊してしまいます。一つの習慣が定着したら、ルールから外す。必要に応じて、更新していけばいいんです。
4つ目のEは、リトマス紙のようなものだと思います。常に心に留めておいて、どこか変だな、うまくいかないなと思ったときに、4つ目のEを取り出してチェックしてみる。思うようにならないと悩む前に、自分の子育てを客観的に見直すことが、あなたを落ち着かせてくれるはず。
子どもは日々成長しています。家族の暮らしも変わっていくでしょう。社会だって変わります。変化に合わせ、子育てにも4つ目のE (Evaluation)を駆使して、柔軟に変えていきたいですね。
構成/鵜養葉子
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薄井シンシア Cynthia Usui
17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」からラグジュアリーホテル勤務を経て、現在は大手外資系企業で働きながら、講演活動や出版活動も行う。著書に『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたかママ・シンシアの自力のつく子育て術33』(KADOKAWA)、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。
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