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【6月のおすすめ映画】『急に具合が悪くなる』同じ名前を持つフランス人女性と日本人女性の魂の邂逅を描く。他3本
2026.06.17
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折田千鶴子さん
映画ライター
いつの間にか双子の息子も高3に。将来の仕事の話になると自分の頃とは時代が激変しているのを実感。
『急に具合が悪くなる』

Heimatfilm – Tarantula – Gapbusters – Same Player – Soudain JPN Partners
同じ名前を持つフランス人女性と日本人女性の魂の邂逅を描く
米アカデミー賞®国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督による最新作。3度目のカンヌ国際映画祭コンペ部門出品作でもある。過去作同様、哲学的な問いや思考が色濃く流れるが、「人間って……」と胸をざわつかせる強烈な興味と同時に吹き出し笑いも引き起こす。難解なようでいて親近感を覚え、さりとて一筋縄ではいかない。本作も196分、なぜ見飽きないのか不思議なほど引き込まれる。
パリ郊外の介護施設のディレクターのマリー=ルーは、人間として一人一人を尊重する介護技術〝ユマニチュード〟を導入しようと奮闘中だ。だが現場は人手も時間も足りず丁寧な対応が困難で、不満を募らせるスタッフも少なくない。ベテラン看護師ソフィは真っ向から反対する。そんなある日、マリー=ルーがソフィを皆の前で断罪し、彼女は辞めると言い出す。スタッフから信頼が厚いソフィに謝罪するよう副ディレクターに促されるが、施設をよくしたいマリー=ルーは納得できない。休養をすすめられた彼女は、一度言葉を交わした演出家・真理の舞台を見に行く。その芝居に感銘を受けたマリー=ルーは、上演後のQ&Aで劇の内容に関連づけ、「本当に不可能なことは可能だと思うか」と質問する。真理は「自分は進行がんで余命半年だが、この物語に勇気をもらえる」と答える。互いに興味を引かれた2人は、外で落ち合い会話を続ける。これまでの人生、仕事、ユマニチュードについて、世界のシステムや世界とのかかわりについて。マリー=ルーは施設から緊急電話を受けるが、別れ難い2人は一緒に施設に向かう。2人の会話は途切れない——。
出会ったばかりなのに旧知のように心安く、離れ難い。心が惹かれても、通りすがりの挨拶で終わるほうが圧倒的に多いこの世の中で、ごく自然に踏み込む2人にときめかずにいられない。同時にユマニチュードの効果や、演劇人である真理が編み出す〝互いの身体に寄りかかる/触れ合う〟療養法、それによる人々の変化に、目を見開き心動かされずにいられない。一方で、真理が演出する一人芝居に、出演する俳優(長塚京三)の重度のASDの孫(黒崎煌代)が奇声を発しながら飛び込んでも、一つの要素のように舞台上で吸収されていく様子にも感嘆させられる。どんな不確定要素も受け入れることで世界が広がり、変容していく新鮮さや喜び、知ることで新たな可能性に気づかされるワクワク感が本作の至るところで湧き出る。2人が歩く夜のパリ、黒くなめらかな映像の美しさ。施設内に吹き始める、洗いたてのコットンのように気持ちのよい風が、やがて訪れる死を予感させながらも、それさえ大きな流れに溶け込む安らぎを覚えさせる。真理を演じる岡本多緒の一挙手一投足、すべてが魅力的。マリー=ルーにヴィルジニー・エフィラ。原作は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が交わした同名の往復書簡。
6月19日より全国公開
『シラート』

S.L.U.,FILMES DA ERMIDA,S.L.,EL DESEO DA,S.L.U.,URI FILMS,
S.L.,4A4
一寸先は闇のごとく予想外の展開が連続。驚愕&呆然の体感型映画
失踪した娘を探すため、父と息子はモロッコの山岳地帯から車を走らせ、砂漠の野外レイブパーティにたどり着く。しかし娘の姿はすでになく、2人は怪しげなグループの後を追って別のレイブ会場へ向かうが……。果たして彼らは信じられるのか、耳をつんざく爆音にまみれながら、運を天に任せるような道行きにハラハラが募る。まさに今の世、いや争いの絶えない人間の歴史が背景ともいえる手探りの珍道中。一歩踏み出すこの〝道=シラート(アラビア語)〞はどこへ続くのか。小さな悲鳴を上げながらくぎづけ必至の、超刺激的な劇薬映画。2025年カンヌ国際映画祭4冠。米アカデミー賞2部門ノミネート。
全国公開中
『アイ・ワズ・ア・ストレンジャー』

国境を越え希望をつかめるか──4カ国5つの家族の運命を描く
独裁政権が長期化し、内戦が勃発したシリア(2011年~2024年まで戦禍が続いた)。国境越えを決意した女性医師とその娘、彼女たちの車を止めた国境のシリア兵。病弱な息子と米国に移住するため荒稼ぎするトルコの密航業の男、彼が斡旋するボートに乗り込んだ詩人。難民船を救助するギリシャ沿岸警備隊長。交錯する彼らとその家族の運命を、5章から編み込んだヒューマン群像劇。異なる立場の者同士でも、愛する家族を守りたい思いは同じ。果たして誰の運命がどっち側に転がるのか手に汗握り、祈るように見つめるしかない衝撃の必見作。ベルリン国際映画祭ほかで多数の賞を受賞。
6月19日より全国順次公開
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配信 CINEMA&DRAMA
『ひとりごとエプロン』

フッと力が抜け、日々が愛しくなるドラマ
あぁ今日も頑張った。一息つきたいな、と寝る前に観たい、1話10分弱の癒しサプリメント的ドラマ。26歳、OLの夏希が仕事や外出から帰宅し、自分のために晩ごはんを作り、一人でおいしそうに食べるまでを、脳内ナレーションとやわらかな音楽を添えて映し出す。気張った料理ではなく、自分用にほどよく力の抜けた調理法、お気に入りの食器や雑貨に囲まれた生活空間、矢野顕子やクラムボンほかの音楽など、すべてが心地よい。思わず「わかる~」と相づちを打ちたくなり心がほぐれていく、幸せな一人時間を味わえる。
YouTube、Prime Video、U-NEXTほかで配信中
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE7月号(6/5発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。
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