イカのお刺身に、納豆1パックにお塩をぱらり。バジルを3〜4枚ちぎってのせて、オリーブオイルをたらりと1まわし。イカイカ、言っていると食べたくなりました。どんな味なのか想像しづらいですが、とってもおいしいです。

「イカゲーム」シーズン2を早速観賞した今井さんからの唯一のアドバイス…とにかくシーズン1を見てから2を見てほしい！

今さっき、「イカゲーム」シーズン2を見終わった私。


ソファからやっとの思いで立ち上がり、のろのろとPCの前に移り、この原稿を書き始めています。いやあ……すごかった……。この余韻をずるっと引きずりながら、まとまらない気持ちを綴っていこうと思います。
 
「イカゲーム」は公開当時に大きな話題を呼んでいましたが、私はまだ見たことがなかったのです。ぜひ2を見てみたいですとお願いして、まずはシーズン1からと、見始めたのがつい2週間前。1を見終わって、すぐにシーズン2を見始めたので長い旅にずっと出ていた気分です。もう情緒の揺れ幅ったら。


私の唯一のアドバイス。とにかくシーズン1を見てから2を見てほしい！

まずはシーズン1のおさらいから。「だるまさんがころんだ」——ゲームに負けた者にただちに与えられるのは「死」


まず基本的なことからお話していきましょう。「イカゲーム」は舞台が韓国のNetflixオリジナルシリーズです。


主人公の中年男性ソン・ギフンは、借金まみれで仕事もろくにせず、いまだに生活も金銭的にも母親に頼りっぱなし。ギャンブルから抜け出せず、金銭感覚も皆無。離婚をして離れて暮らす娘の誕生日にも、まともにプレゼントを準備できません。見ていて悲しくなってくるほどの「ダメ男」なのです。

そんなある日、彼は謎のゲームへの招待状を受け取ります。ゲームに勝つと一獲千金を狙えると聞きギフンは参加を決意します。ヤクザからの厳しい借金の取り立てでギフンは窮地に陥っていたのでした。

このゲームこそが「イカゲーム」。同じように賞金を目当てに集まった人の数は、456人。参加者は同じジャージに着替えさせられて、運営チームのマスクの監視員たちからは名前でなく番号で呼ばれます。ギフンは「456」になりました。

彼らはゲームのルールを知らされないまま、「だるまさんがころんだ」に参加させられます。わけもわからず、なつかしい子どもの遊びに興ずる参加者たち。しかし、ここでおぞましくも異常なことが起きたのでした。

「だるまさんがころんだ」——その瞬間、うまく止まれずに動いてしまった人々を射殺する監視員たち。
 
ゲームに負けた者にただちに与えられるのは「死」。このイカゲームは勝利か、命を落とすか。そして死者の数だけ、賞金が増えていくという悪夢のようなゲームだったのです。
 
つまり最終的に賞金を手にするためには、455人の命が犠牲になるということ。
 
牧歌的な子どものゲームを舞台に、彼らは文字通り命がけで戦うことになったのでした。

強き者を良しとする男性社会から排除される弱者たち。「イカゲーム」は現代社会の縮図を描いている

ポップで印象的なビジュアル、そしてセンセーショナルで過激な描写が話題になった本作ですが、実際に観ると「イカゲーム」は現代社会の縮図を描いていることがわかります。


イカゲームの運営は、ゲームの場では「皆が平等であること」をモットーとしています。彼らの主義は徹底しており、平等でない行動をした者、ルールに反して不正を働いた者は身内であれ運営から処刑されていきます。しかしそれはあくまで運営側からの目線での「平等」と「公平」でした。


集められた人々は老若男女。ときに彼らはゲームに参加するためにチーム分けをするシチュエーションがあります。子供の遊びを思い出してみてください。ほとんどが体力勝負や力勝負のものが多いですよね。そんな目論見もあるのでしょう。男性ばかりで固まってチームを作り、女性や老人たちを排除しようとする場面があります。
 
強き者を良しとする男性社会から排除される弱者たち。これは現実の光景と同じと言えるのではないでしょうか。

ギフンの「善良」な人柄が彼自身を助けることになるも、そんな彼でさえも「死」の淵に立つと正義を捨ててしまうことも…

参加者には様々な事情がありました。ある者は母親の治療費を捻出するため、北朝鮮から逃げてきた若い女性は残してきた母を脱北させるため、国に残した家族の生活費のため。それぞれの理由があり、大金さえ手に入れられれば今の生活がリセットできると考えています。彼らは命を持ってはいますが、現実社会ではその命をどう使っていいのかわからず途方に暮れています。貧困や格差からどうやっても抜け出せない人々の現実の暮らしこそ、また「地獄」の世界であるのです。
  
一度は投票によって、おぞましい殺戮のゲームから解放された参加者でしたが、現実社会はまた辛く苦しいものでした。結局彼らは、外の世界で生きていくことの難しさにも絶望するのです。そしてルールを知ってしまったその後も、自らの選択で再度命懸けの「イカゲーム」に戻ってきたのでした。勝利を手に入れて、もう一度自分の人生を生き直すために。

物語が進むに連れて、ダメ男のギフンが今のように落ちぶれてしまった原因である労働問題も描かれます。そして彼は「善良」な人間でした。自らの命が窮地の時でさえも、困っている人や、他人を放っておくことができないのです。

結局彼のそんな人柄が、彼自身を助けることになるのですが、そんなギフンでさえも「死」の淵に立つと正義を捨ててしまうことも。最後の最後で抗えない利己、無念さに、心が痛みました。


最終話、最後の勝者は途方も無い大金を手に入れます。つまるところ、それは敗者455人分の命。絶望の札束なのです。


衝撃的な描写に眼を覆い、巧妙な伏線とメタファーに唸り、時折はさまれるユーモアやのどかさに笑ったり、登場人物に感情移入して涙を流して、もうおなかいっぱいよ……と迎えたシーズン1の最終回。

シーズン2のイカゲーム参加者は1に比べ、わかりやすい「ワル」が少なく「ふつう」に見える人が多く、今の世相を反映しているよう

そして私は、そのままシーズン2に突入。
 
ここからは、もう冷静ではいられません。ネタバレはしたくないのですが、もうキャストは発表されていますよね。そうなんです。彼が再度イカゲームに挑むのです。


初回からぐんぐん進んでいく想像を超えたストーリー展開！　今回は運営側の人物が並行して描かれていくので、緊張感はさらに高まります。単純にゲームの勝負だけではないのです。


しかし私は、「イカゲーム」という設定を理解したせいか安心して「イカゲーム」シーズン2を見始めていたのです。不気味で不穏な空気たっぷりのシーズン1より、随所にちりばめられたコメディテイストも多く、思わず笑ってしまうことも。しかし、そうやってニヤニヤみていると……「しまった！　これイカゲームだったんだ！」という急展開と絶望。まったく油断できません……。
 
そしてシーズン2のイカゲームに参加する人々の個性もこれまた豊か。前回より若者が多く、仮想通貨で借金を抱えてしまった人も。前回よりわかりやすい「ワル」も少ない印象で「ふつう」に見える人が多いのです。これも今の世相を反映しているのでしょうか。

イカゲームを絵空事のように眺めながら「この救いのない世界にもしかしたら自分が加担しているのかもしれない」と気づく

1の序盤では参加者の人間性にあまり感情移入できることがありませんでしたが、2は登場人物の個性がよくわかる設定にされており、思わずこちらも観客として「生き残って！」とゲームを応援する熱が高まります。

しかし、ふと自分の残酷さに気づきました。
 
どちらにしても敗者には「死」への道しかありません。それなのに、感情移入できるかどうかだけで、ゲームをしている人々に対して、傍観するか、前のめりになるか……あろうことか私自身が命の重さに対して知らず知らずの間に順序をつけていたのでは。
 
イカゲームを絵空事のように眺めながら、この救いのない世界にもしかしたら自分が加担しているのかもしれないと、気づきました。
 
ギフンはただただ純粋な正義感で、預かっている命を使おうとします。人は誰かの犠牲の上で生きている。それならば、また誰かの犠牲に私たちはなれるのでしょうか。

イカゲームの世界にどっぷりハマり、みんなの考察を読み漁る。年末年始の素晴らしい楽しみ方のひとつとしておすすめします。
 
ええ！　あの人が！？　と、早く誰かと語り合いたい！

（『料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」（ミニレシピ付き）』は毎月第4金曜日更新です。次回をお楽しみに！）