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FOOD

料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」(ミニレシピ付き)第10回

韓国で社会現象的人気!料理サバイバル番組「白と黒のスプーン」出演で人生激変した友人シェフの話

  • 今井 真実

2024.11.29

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Yummy!

今月のミニレシピ

料理の本質を問いただしたくなる、柿とキムチのあえもの

今井真実さん 料理の本質を問いただしたくなる、柿とキムチのあえもの

フレンチやイタリアンだけでなく、韓国家庭料理もたくさん登場する本作。ついつい食べたくなったのはやっぱりキムチ。

皮を剥いた柿半分をざく切りに、キムチ20gを載せて、ごま油を小さじ1/2ほどたらり。

ここに、すりごまがいるか、黒胡椒をかけるべきなのか、心の中のアンさんと自問自答を繰り返しながら作ってみてください。

「風の時代」が到来した今、「白と黒のスプーン」を見ながらふと思ったこと

この人たちも星占いチェックしたりするのかしら……番組が進むにしたがって、ふと思いました。

というのも私は星占いがだいすき! LEEwebのコンテンツもこまめにチェックしています。特に最近は、2024年11月20日を機に「風の時代」が本格的に到来したという出来事も話題になっていますよね。私自身は双子座で、どうも今、転機が訪れているのだそう。そう言われると、ついつい気になってしまい、最近では「どれが転機の種なの?」と日々起こる出来事に、戦々恐々しています。

もしかすると何かが変わっていても、その時には気づかないかもしれません。あの時が運命の分かれ道だったのだろうと、後から考えてやっとわかるかもしれませんね。そんなことを「白と黒のスプーン」を見ながら思うのでした。

白と黒のスプーン/~料理階級戦争~
Netflixシリーズ「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」独占配信中

「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」はNetflixが制作した韓国発の番組です。テーマは「料理」。誰もが知っているほど有名で成功を収めたシェフの「白さじチーム」と、巷では話題店だけれども未だ知る人ぞ知るシェフたちの「黒さじチーム」。

「白」対「黒」の階級を越えて、料理の実力を争うという料理サバイバル番組なのです。

今井さんの友人も「黒さじチーム」の「料理する変人」として出演


さて、実は私、この番組を見るためにNetflixを契約したのです……。なぜなら、「黒さじチーム」に友人が出ているのですから!

彼は「オージービーフマイト」としてオーストラリアを一緒にまわった料理の仲間で、ツアー中、初めてみんなで料理をした時も同じチームでした。初夏に韓国に行った時にも、彼のレストランに行き、共通の友人たちとお誕生日のお祝いをしてもらいディナーを堪能。それはそれは彼のお料理は全ておいしかった! 旬の食材とお肉やシーフードとの組み合わせがとてもよく、特にバターを使ったソースが絶品。しっかりとした味付けにワインが進みました。

「料理する変人」の絶品料理!(写真/今井真実さん提供)

「きっと彼なら大活躍するだろう」と、事前に番組と彼の名前を検索しました。しかしちっとも情報が出てこないのです。なぜ?

しかし、番組を見始めてから分かったことが!「黒さじ」チームは番組内では本名を呼んでもらえないルールなのです。なんと最後に優勝するまで、ニックネームでしか呼ばれません。

番組内で、彼は「料理する変人」という名前で呼ばれていました。なんとまあ言い得て妙なことでしょう! 私にとっても、彼はとても個性的な人。第一印象はシャイに思えたけれど、仲良くなるといっつもケラケラ笑って周りを楽しい気持ちにしてくれます。一転、料理を始めた瞬間、まるでダンスを踊るような動きで鮮やかでかっこいい。なのに、耳にはいつもペンがささっていて……。私は密かに「競馬スタイル」と思っていました。そんな彼、うーん「変人」かな……でも愛すべきカリスマ料理人なのです。



正式な「黒さじチーム」として戦えるのは80人中、20人のみ

そんな身内贔屓を理由に見始めた「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」。しまいには、もはや彼だけではなく、出ている料理人みんなのファンになってしまいました。

第1話目、黒さじチームとして80人の料理人が集められました。しかし、彼らは何も知らされていません。ただ料理バトルだということはわかっているようです。突如、番組のルールが説明されて彼らは、自分たちが有名シェフと戦うことを知らされます。そして、もうひとつ。正式な「黒さじチーム」として戦うことができるのは、この中から20人だけと発表されます。つまりこれは予選なのです。



そしてその後、登場したのは2名の審査員。この2人が現れた途端、スタジオは興奮とどよめきに包まれます。中には顔を引きつらせる挑戦者の料理人たちも。ああ、見ているこちらまで胃が痛くなってきそう!

白と黒のスプーン ~料理階級戦争~
審査員のペク・ジョンウォンさん(左)とアン・ソンジェさん(右)。Netflixシリーズ「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」独占配信中

審査員のひとりは国民的料理研究家で、世界中で多数の飲食店を経営しているペク・ジョンウォンさん。彼は屈指の美食家としても知られています。そしてもうひとり。韓国で唯一ミシュランの三つ星を獲得した「モス」のシェフのアン・ソンジェさんです。経験、アイデア全てがずば抜けている完璧主義者のアンさん。

全料理人が尊敬する2人が全ての審査を行います。

「料理名と料理があってない」審査員の重い一言に、挑戦者の立場になって涙が出そうに……

この番組の特筆すべきところは、想像もつかないスケールで進むところ!


第1回戦。巨大なスタジオに現れたのは、なんと80もの最新型キッチン! このキッチンで一人ひとり、自分の得意料理を作り、ペクさんとアンさんに審査されるのです。20人を選抜するためだけに作られたセットは、圧巻としか言いようがなく、これだけたくさんのキッチンが並んでいる光景は初めて見ました。



挑戦者は自分の料理が出来上がったら、ベルを鳴らします。そして、審査員はその場で出来立ての料理を味見をして、その場で、目の前で、彼らに直接合否を告げるのです。これは辛い……! 思わず見ているこちらまで「ひい!」と声が出てしまいます。どうしても挑戦者の立場になって涙が出そうに。

「料理名と料理があってない」「あなたの意図と味が一致していない」「飾っている花の意味は? 本当に必要ですか?」アン・ソンジェさんの審査の一言一言が重く、正しい。審査の言葉から彼の料理哲学が伝わってくるのです。この料理は、考え抜かれて作られたものなのか? 常にそう問われると、すみませんでした! とついつい代わりに謝りたくなっちゃう……。

今井さんのイチオシのシェフは「白さじ」のエドワード・リーシェフ

しかし、これは序章に過ぎませんでした。対決ごとに用意される、考えられないほどの壮大なセットとしかけ。そして前代未聞の過酷なルール。

「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」
Netflixシリーズ「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」独占配信中

最初は高みの見物だった「白さじチーム」のシェフたちでしたが、やがて彼らもこの勝負に翻弄されることに。なりふり構わず勝つためにひたすら考え、ひたすら料理をするのです。

一方、20人に選抜された「黒さじチーム」。彼らもいわば先鋭で確かな実力者たちです。しかし、いかんせん「白さじチーム」は数々の賞レースやコンテストに出場してきて、むしろ現在では審査員を担うほどの重鎮たち。そもそも「白さじ」は勝負の勝ち方を知っているのです。冷酷に思えるほどの勝利への執念。キャリアも、ネームバリューも関係ない、その本気の熱い戦いに、見ている私たちまで興奮して涙が溢れるのです。

白と黒のスプーン ~料理階級戦争~
Netflixシリーズ「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」独占配信中

たくさんのシェフが登場し、彼らの個性的な姿も見どころの一つです。

私のイチオシのシェフはなんといっても「白さじ」のエドワード・リーシェフ!

彼は韓国系アメリカ人のシェフで、「アイアンシェフ」などで世界的に有名な方。最初、彼はこの番組の出演を打診された時に断ったのだとか。

しかし、自分の韓国のルーツをもっと探りたいとの思いから参加を決意、収録のたびにアメリカから韓国に渡り、時差や韓国語が得意でないことなどのハンデを乗り越えながら、勝負に臨んでいたのでした。

また、アメリカで彼は、人権運動を行う社会活動家としても知られています。レストランで働く女性のための団体を立ち上げ、支援し、女性のシェフの割合を増やすこと、低所得層の女性シェフを支援するプログラムを作ることに注力。そして、女性だけでなく、人種や性別の多様性を尊重し、賃金、環境を含め労働者を守る運動をしています。番組内でも垣間見える、エドワードシェフの他者を尊重する姿勢、料理を思案しているときの知的な表情、それでいて茶目っ気たっぷりに料理をする姿。彼のような人が真のスターシェフなのだなとため息が出ました。

視聴者である私たちは、シェフたちの人生の転機に立ち会っている

私の友人「料理する変人」がどうなったか……それはぜひ番組をご覧ください。「白と黒のスプーン ~料理階級戦争~」はいまや、韓国では社会現象化しているそうです。彼のレストランも予約が取れないのだとか!

料理の変人こと、ナムノシェフがいるワインレストラン「Deep in」。韓国旅行に行く際には、ぜひ行ってみてください。彼の専門はジャパニーズフレンチだから皆さんもきっと気にいるはず!

今井真実さん
日本のフレンチが大好きな彼に、日本のフレンチシェフのレシピ本と私の梅レシピ本をプレゼント(写真/今井真実さん提供)

「白と黒のスプーン」に出演したシェフたち。2024年以前、以後。放送前、放送後。彼らの人生は、何もかも変わったはずです。

視聴者である私たちは、彼らの人生の転機に立ち会ったのでは、と、つい星占いを思い出してしまいました。

熱い志を持って料理をし続ける彼らは、これからも世界に誇る名誉の星をきっと掴み続けるのでしょう。

(『料理家 今井真実の「食べたいエンタメ」(ミニレシピ付き)』は毎月第4金曜日更新です。次回をお楽しみに!)


Staff Credit

撮影(料理写真)/今井裕治

Check!

あわせて読みたい今井真実さんのレシピはこちら!

今井 真実 Mami Imai

料理家

レシピやエッセイ、SNSでの発信が支持を集め、多岐の媒体にわたりレシピ製作、執筆を行う。身近な食材を使い、新たな組み合わせで作る個性的な料理は「知っているのに知らない味」「何度も作りたくなる」「料理が楽しくなる」と定評を得ている。2023年より「オージービーフマイト」日本代表に選出され、オージービーフのPR大使としても活動している。既刊に、「低温オーブンの肉料理」(グラフィック社)など。

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