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TAKARAZUKA STAR|ことばの力

【星組・天飛華音さん】「No Day But Today(今日という日は今日しかない)」【宝塚スター|ことばの力】

  • TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力

2024.05.16

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気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?

文字:TAKARAZUKA STAR INTERVIEW

星組

天飛華音さん

今の自分を作ったことば
No Day But Today(今日という日は今日しかない)

Kanon Amato

写真:ことばの力・宝塚歌劇団星組男役スター天飛華音さん

Kanon Amato・Profile

2016年、宝塚歌劇団に入団。星組に配属される。その存在感と表現力に早くから注目が集まり、三度の新人公演主演を経て昨年は初のバウホール公演主演も経験。歌もダンスも芝居も高く評価されている実力派の若手男役スター。

宝塚歌劇公式ウェブサイト>>


傷つくことを恐れたりせずに
人と、舞台と、まっすぐ向き合いたい

Kanon Amato

「4歳年上の兄と3歳年下の弟、その間にいるのが私で。母は“唯一の女の子だから”と私の髪の毛をいつも可愛く結んでくれるのですが、家に帰ってくる頃にはグチャグチャ(笑)。それくらい私はやんちゃな女の子でした」

そんな天飛さんがダンスを習い始めたのは幼稚園の頃。

「園の発表会で『こんぺいとうがぴっぴ』という曲に合わせてダンスを踊ったところ、それを見た両親が“天才だ!”と親バカを炸裂。“この子には才能がある!”とダンススクールに入れてくれたんです」と笑います。

「明るい両親は前向きな勘違いをすることが多いのですが、その勘違いがよい結果につながることも。それをわが家では“こんぺいとうの法則”と呼んでいるんです(笑)。その法則で子どもたちの才能の種を褒めて讃えてグングン伸ばしてくれた両親ですが、誰かが悪いことをすれば“何が悪かったかちゃんと考えなさい”ときょうだいで話し合いをさせたり、叱るときはちゃんとしっかり厳しくて。実は大人になった今でも母に叱られることがあります。歩みを緩め怠けてしまいそうになったとき、“初心を忘れるな!”って」

愛情あふれるご両親のもとですくすくと天真爛漫に育った天飛さんですが、宝塚歌劇団に入団後、本来の自分を封印して心を閉ざしてまった時期があったそうです。

「鹿児島の自然の中で伸び伸びと育ったからこそ、多くの人と密にかかわる環境やそれぞれが持つ価値観の違いに戸惑ってしまったのかもしれません。人と向き合うのが怖くなってしまったといいますか、次第に壁を作るようになってしまったんです。でも、そんな毎日を送っているうちに“こんな人生はおもしろくない”と感じるように。役者として技術を磨くことができても、それだけで豊かな表現はできない。せっかく舞台人として生きているのだから、心を揺らす表現がしたい、もっと引き出しを増やしたい。そのためには人としっかり向き合っていろいろな思いを経験したほうがいいのではないか、そのほうが人生も芝居も豊かになるのではないか、そう考えるようになりました」

心の壁を取り払った今は、「人と会い話すのが楽しくて仕方がない」と笑います。そんな今の天飛さんが大切にしているのが、大好きなミュージカル『RENT』の劇中歌の一節「No Day But Today(今日という日は今日しかない)」です。

「『RENT』は幼い頃から大好きなミュージカルなのですが、大人になってよりこの言葉が心に響くようになりました。人生はいつだって悩みや迷いがつきもので、余計なことを考えてはむだに不安や怖さを感じてしまうことがあると思います。でも、それはもったいないことでもあると思うようになりました。先のことを考えるのは大切なことですが、人生は一度きりで、過ぎた時間は戻ってきません。だからこそ、今この瞬間を思いきり生きる……。よそ見をせずに、目の前にある幸せにきちんと目を向けながら、この先も心を揺らすことを恐れずに歩いていけたらと思っています!」



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天飛華音さんに3つの質問!

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「天飛華音」はどんな人ですか?

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天真爛漫で好奇心旺盛!

まず、頭に浮かんだのが「天真爛漫」「猪突猛進」「オーバーリアクション」という言葉です(笑)。周りからは「素直」と言われることも多く、嘘が苦手で、冗談すらも言葉どおりに受け止めてしまうことも。そのせいか、同期にもよく騙されるんです(笑)。

そんな私の長所を挙げるとしたら「好奇心旺盛なところ」でしょうか。特に今は“人”に対する好奇心がとても強くて。美味しい料理に出会えば「これを作った人はどういう思いで料理を始めて、どんな経験をして、この味にたどり着いたのか」、その人の人生を知りたくなってしまったり。また、私はコーヒーが好きでよくカフェに行くのですが、素敵なカフェを見つけたときも、インテリアから目の前にあるカップ、そこに注がれたコーヒーまで「これにはどんな思いが込められているのか」と、思いをはせてしまうんです。

ちなみに、短所は面倒くさがりやで大雑把なところ。何事もウェルカム精神ではありますが、だからこそ、細かいところには気づけない。細かいことが気にならないのは長所でもあるのかもしれませんが、視点を変えれば「こだわりがない」ということでもあるのかなと……。最近はもう少し、こだわりを持ってもいいのかなと思っています。

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今、ハマっていることを教えてください

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朝活で1日のQOLをあげています!

朝活です。私はこう見えて本を読むのが大好きなのですが、いろんな本を読むたびに目にするのが「朝の時間を有効活用すると1日のQOLが上がる」という言葉で。やっぱり、朝は大事なんだなと。昨年、初めてバウホール公演の主演を務めさせていただいたときに、朝活をスタートしてみたんです。

起きたらまず白湯を飲み、ラジオ体操をして、朝食に和食を食べ、稽古場に向かい、夜は早めに就寝する……。生活のサイクルが整ったら、自分自身の心や体調もすごく整う感じがしました。今も早く家を出ることができた日はカフェでコーヒーを飲んでから稽古場に向かったりして。そろそろ“朝瞑想”も始められたらなと思っています。

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男役9年目。今、どんな時期にいると感じていますか?

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今の自分を一言で表現するなら“絶賛人間研究中”

宝塚歌劇団では、本公演で上演されている演目を入団1年目から7年目までの下級生のみで演じる“新人公演”というものがあるのですが。入団9年目の今はそれを卒業して外側から新人公演を観る立場になりました。これまで一緒に頑張ってきた下級生達の舞台を見るのは、やっぱり他の舞台を見るときの気持ちとは少し違って。よく知る仲間だからこそ、「ああ、表現にはその人の持っているものが出るんだな」と改めて気付きました。

役者として技術を磨くことは大事ですが、それだけでは表現に限界がある。私は“小手先の技術”ではなく“心”を磨き“心”に届く芝居を演じたい……。そんな私の男役9年目を一言で表現するならば“絶賛人間研究中”。自分に、芝居に、深みを持たせるための経験を積み重ねている最中なのだと思います。まだまだ未熟ではありますが、いつか外側ではなく内側から滲み出る魅力を手に入れて、“背中で語れる男役”になれたらいいなと思っています。

写真:天飛華音さん

NEXT STAGE


ミュージカル・ロマン
『夜明けの光芒』

チャールズ・ディケンズ作「大いなる遺産」より

写真:ミュージカル・ロマン『夜明けの光芒』
©宝塚歌劇団

ディケンズの名作『大いなる遺産』を新たなミュージカル作品に。莫大な資産を相続したピップの波瀾万丈の人生を描く。主演:暁千星

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
6月3日〜6月8日

東京建物 Brillia HALL
6月14日〜6月20日


Staff Credit

撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2024年LEE6月号(5/7発売)「ことばの力 vol.13 天飛華音さん」に掲載の記事です。

▼ 「ことばの力」連載一覧はこちら

文字:TAKARAZUKA STAR INTERVIEW

TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力

宝塚歌劇団の男役スターがLEEに登場! 舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌたちが大切にしている「ことば」をテーマにインタビュー。

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