尿漏れの基礎知識をきちんと理解しておきましょう
【女性に多い「尿漏れ」】正しく知っておきたい原因と対策法を泌尿器科医が解説
2024.01.12
[解説]
主なきっかけは、妊娠・出産と更年期
泌尿器科医がレクチャー
正しく知っておきたい
尿漏れの種類&対策法は?
女性に多い尿漏れの基礎知識を泌尿器科医がレクチャー。気をつけたい生活習慣などをきちんと知っておくことで、尿漏れの防止や対策もできるはず。
教えてくれたのは…
佐藤亜耶さん
自由が丘ウロケアクリニック
泌尿器科医
女性と子どものための泌尿器科クリニック「自由が丘ウロケアクリニック」院長。多くの女性のおしっこにまつわる悩みに寄り添い、日常生活をケア。
尿漏れの主な原因は「骨盤底筋のゆるみ」。加齢でひどくなることも
出産で骨盤底筋が伸びきってしまう
「妊娠・出産で尿漏れになりやすいのは、赤ちゃんの重さや分娩で、ハンモックのような形の骨盤底筋が損傷し、伸びきってしまうから。産後元に戻ってもダメージを受けているのでゆるみやすく、更年期の筋力低下で悪化することもあります」(佐藤亜耶さん)
〈 尿漏れの種類 〉
腹圧性尿失禁
くしゃみやとびはねる動き、重い荷物を持ち上げたときなど、おなかに強い圧がかかったときに起こる尿漏れ。骨盤底筋のゆるみが原因とされ、特に妊娠中や出産後に起きやすいといわれています。更年期以降の女性に多いとも。
【 治療法 】
特効薬がなく、骨盤底筋を鍛えることで改善。最近では、座るだけで骨盤底筋を鍛えられる磁気治療や、膣の粘膜が再生されるレーザー治療などの選択肢も。
切迫性尿失禁
突然、強い尿意を感じて、トイレに行くまでに我慢できずに起こる尿漏れ。過活動膀胱など、膀胱が過剰に反応することが原因で、膀胱からの圧が尿漏れにつながります。妊娠・出産だけでなく、若い世代から悩むケースもあります。
【 治療法 】
過活動膀胱の治療のための薬があり、薬物療法で大きく改善することも。軽い症状であれば、骨盤底筋トレーニングをすることも効果があります。
上の2つが合わさったのが
混合性尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状を併せ持つ尿漏れです。女性がなりやすい尿漏れの約半数は腹圧性尿失禁、混合性尿失禁が約3割、切迫性尿失禁が約2割だといわれています。
【 治療法 】
腹圧性と切迫性、どちらの症状が強いかで治療法が異なります。つらい場合は早めに受診して、原因を明確にするのがおすすめ。薬の処方や、ひどい症状なら手術も。
〈 実は、尿漏れによくない習慣 5 〉
1 重いものを持つ
おなかに力がかかる、重いものを持つ行為はNG。赤ちゃんの抱っこも刺激になり、特におなかを締めるタイプの抱っこひもは、圧がかかり尿漏れしやすく。膀胱や子宮が膣から外に出る“骨盤臓器脱”の症状がある人も注意!
2 体重の増えすぎ・やせすぎ
太ると骨盤底筋に重りがのる状態になるので、尿漏れがひどくなることも。急激な体重増加には気をつけて。またやせすぎも、全身の筋肉が弱くなり骨盤底筋がゆるむので×。適度な筋力は尿漏れ対策になります。
3 便秘
便秘だと、排便のときにどうしても力んでしまうので、骨盤底筋にも負荷がかかり、尿漏れしやすくなります。たまった便が膀胱を圧迫するので、尿意を我慢しにくくなることも。
4 カフェインのとりすぎ
カフェインは利尿作用があるので、尿意を強く感じたり、おしっこの量が増えることも。特に切迫性尿失禁の場合は、カフェインを減らすのがおすすめです。アルコールも同じ作用があるので、とり方には注意して。
5 ランニングやなわとびなどのはねる運動
トランポリン、なわとびなどのはねる運動のほか、ランニングも上下運動で負荷がかかり、尿漏れしやすくなることがあります。尿漏れ対策には、ウォーキングや、ヨガやピラティスなどの体幹を鍛える運動が○。
〈 尿漏れのギモンQ&A 〉
お風呂に浸かった後、膣に残ったお湯が出てくることが。これも尿漏れの一種?
尿ではなく膣に入ったお湯が漏れる
尿ではなく、入浴中に膣に入ったお湯が漏れている状態。骨盤底筋が弱くなると、膣もゆるんでお湯が入り、膣は括約筋のような締める筋肉がないのでそのまま出てくるのです。原因は尿漏れと同じなので、骨盤底筋を鍛えることで改善。
どれぐらいの尿漏れで、受診していいもの?
生活していて気になることがあれば受診してOKです
外出時の心配や下着が汚れるなど、何かしら生活で困ることがあれば受診して。診断で尿漏れの原因がわかれば、対策もしやすく。最近は女性泌尿器科や、婦人科と泌尿器科を合わせた「ウロギネ外来」も増えています。
腹筋がないと、やっぱり尿漏れしやすくなりますか?
腹筋より、体幹が弱いと骨盤底筋がゆるむ
いわゆる6パックと呼ばれる腹直筋はあまり関係ないのですが、筋肉はつながっているので、体幹がしっかりしていないと骨盤底筋もゆるみやすく。姿勢も悪くなるので、体幹や腹筋はほどほどにあると○。
トイレの際、排尿を途中で止めると尿漏れ対策になると聞いてトライしたけど…効果はあるの?
効果はまったくありません! 不自然な排尿は悪影響も
尿はスムーズに出すことがとても大事。途中で止めることを習慣にすると、残尿があって不快に感じることも。排尿後の尿漏れを気にして、最後に出し切ろうと力むのもNG。おしっこはリラックスした状態で、自然に出すことを意識して。トレーニングは別で行いましょう。
産後の尿漏れは改善しつつあるけれど、頻尿は継続。頻尿についても知りたいです
頻尿は膀胱の機能問題。切迫性は残ることも
頻尿は過活動膀胱など、膀胱の機能の問題。骨盤底筋を鍛えて腹圧性尿失禁が治っても、切迫性尿失禁は残るケースも。尿漏れが心配でトイレの回数が増えると膀胱が尿をためられなくなり、頻尿が進むこともあります。
〈 尿漏れ対策グッズ 〉
お話を伺ったのは…
河北典子さん
花王
’11年花王入社。’23年より生理用品・吸水ケア用品ブランド「ロリエ」の吸水ケア用品の商品事業開発を担当。
お話を伺ったのは…
山舖純子さん
花王
’09年花王入社。’23年より女性の心と体に寄り添う生理用品・吸水ケア用品ブランド「ロリエ」のマーケティングを担当。
消費者の声から、30代・40代も使いやすい専用ナプキンが登場
2023年の4月に発売された「さらピュア吸水 超吸収スリム」。商品開発までの経緯を聞きました。
「弊社のアンケートでは、※40代以上の2人に1人が尿漏れ経験ありとの結果が。想像以上に多いことがわかり、尿漏れに悩む40歳前後の女性でも手に取りやすい、尿漏れ専用の吸水ナプキンの開発に至りました。将来的にさらに尿漏れに悩む可能性がある世代なので、吸水ナプキンでのケアが広がれば、という思いも。弊社の超薄型生理用ナプキンの技術を尿漏れ対策にも活用しています」(河北さん)
おりものシートや生理用ではなく、専用商品を使うメリットは?
「おりものシートと同じぐらいのの薄さで下着につけてもゴワゴワしないのですが、吸水力は抜群。すぐに尿を吸収して表面がサラサラに。また、瞬間消臭で尿漏れ独特のにおいを素早く閉じ込めます。日常的に長時間つけるものなので、つけ心地の快適さにはこだわっています」(山舖さん)
※40〜70代女性1370人(2021年5月花王調べ)
ロリエ さらピュア吸水 超吸収スリム/花王
スリムでもしっかり吸水&消臭。超薄なのに頼れる尿漏れ専用吸水ナプキン。吸水量が、従来の5㏄、15㏄、30㏄、50㏄に加え、今秋3㏄、10㏄も発売。吸水量・長さや尿漏れの程度によって選べる。15㏄¥462(編集部調べ)
こちらもおすすめ!
\編集部セレクト/
尿漏れにも対応! 吸水ショーツ
マチ部分は吸水速乾布+吸収体+防水ボンディング布の3層構造で、急な尿漏れにも対応できるよう吸水量は30㏄。外出時でも安心。完全無縫製吸水ショーツ 1分丈レギュラー¥2200/グンゼ
膣に入れることで、骨盤底筋を意識でき鍛えやすく
重りを膣に挿入して使用する、骨盤底筋トレーニング用のアイテム。何もない状態で骨盤底筋を意識するのは難しいので、膣の中に入れることで鍛えやすく。Blush ケーゲルトレーニングキット¥4510/fermata
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Staff Credit
イラストレーション/いいあい 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2023年LEE12月号(11/7発売)「尿もれ・痔 さらば!「下半身クライシス」」に掲載の記事です。
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