「HPV（子宮頸がん）ワクチン」について、女の子ママから寄せられた疑問に宋美玄さんが答えます【聴く婦人科診察室#107】

宋美玄

2023.07.17

音声

産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト番組「聴く婦人科診察室」は、宋さんとLEEweb編集長・畑江が婦人科系疾患、生理、セックスレス、更年期、女性を取り巻く社会問題などなど、女性の心身の健康について時に赤裸々に、時に為になるトークを繰り広げます。毎週月曜日18時更新です。祝・100回突破記念として、リスナーの皆様から寄せられた婦人科系のお悩みに宋さんがお答えします！　今週は「HPV（子宮頸がん）ワクチン」についてのご質問やご意見を取り上げます。

宋美玄さんの「聴く婦人科診察室」#107
今週のよりぬき

①マルメロさんよりメール「小6娘HPVワクチンについて。本人の性的志向がハッキリして、異性との性交の可能性が高まったら打てたら……と思うのですが、やはりや早めに打ったほうがいいのでしょうか？　9価ワクチン接種が開始され、検討のモチベーションは高まっています」
2023年4月から9価ワクチンも公費で接種できるようになりました。小学6年生から高校1年生まで9価ワクチンを無料で打てます」と宋さｎ
「15歳の誕生日まで、つまり14歳のうちに打つと、これまで3回接種だったのが2回のみ説種で済むようになりました。なので、打つかどうか迷っている場合、『14歳までに打てば1回少なくて済むよ』と説得するのも手です」と宋さん
HPVワクチンは2価、4価、9価の3種類。2価は最も子宮頸がんの悪性度が高いHPV（ヒト・パピロマーウィルス）16/18型をカバー、4価はHPV6/11/16/18型と尖圭コンジローマをカバー、9価はHPV6/11/16/18型に加え、HPV 31/33/45/52/58型が加わることで、子宮頸がんの原因となるHPVの約90%をカバーし、より高い予防効果が期待される
「日本人なら9価ワクチンで8割のがんが防げます。これまで2価、4価を接種した人も、2回目以降の接種を9価に変更OKです」と宋さん
「9価が公費で接種可能になる前に接種が終わってしまった方もいるかもしれませんが、より早く打つことのほうが重要。4価でも充分防げます」と宋さん
男子については4価のみ承認されており、自費で接種可能
「うちのクリニックに、産婦人科医の息子さんが接種に来たことがありましたね。他にも医学生とか意識高い男子が接種に来ることも」と宋さん
「マルメロさんから『男子こそHPVワクチン接種したほうが、結果自分も相手も守れるしいい気がするんですが……男子がみんな接種してくれたら女子は接種せんでも良くなるんちゃう？』とのコメントもありましたが、女子も打たないと公衆衛生上蔓延を防げません。カナダ等、男女ともに接種している国では確実に子宮頸がんが減っています」と宋さん
「異性愛かどうか見極める必要はないです、同性同士のセックスでも外陰部の接触はあるので。大切なのは、新しいパートナーと今後セックスする可能性があるかどうか、です」と宋さん
②Chiz（チヅ）さんからのVoicyコメント「中3娘の学校で開かれた制教育講座の主な内容が子宮頸がんワクチンについてで、『有料になると高いので今のうちに受けましょう』的なことを言われました。が、女子の母同士『あの頃の不安が払拭されるだけのデータがないとね……』と、ワクチン副作用被害者の集団訴訟を思い出しました。娘は『そういうことしないからとりま大丈夫』と言うのでまだ打ってません。自分が接種するならともかく、子どもに、となるとやはり判断が難しいです」
「HPVワクチンの安全性は科学的に確認されています。ただそれが集団訴訟のようにくりかえし報道されていないのが問題。メディア関係の方、集団訴訟についての報道で皆さんの怖さが払拭されていないので、安全性についても同じ位報道してほしいです。未だに不安かかえている方も多いけど、『あのとき打っておけばガンにならなかったのに』と後悔するかもしれませんし」と宋さん
「当時の報道を子どもは覚えていなくてもお母さんのほうが覚えてて、結果接種を止めちゃう。20歳前後の成人している娘さんの場合、ご本人が『打ちたい』と思うなら止めないでほしいです」
「それに娘さんが親御さんに本当のことを言うとも限らないですし、そもそも中3の娘さんに接種を決めさせるのは難しいのでは……これ機に性教育について家族で話し合ってみては？HPVワクチンについての情報サイト『みんパピ！』を読んで、心配なら婦人科受診してみてください」と宋さん