【月組・風間柚乃さん】挑戦が怖いのは自分に期待しているから。そんな期待は捨ててしまえ!!【宝塚スター|ことばの力】
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TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力
2023.06.15
気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?
「挑戦が怖いのは自分に期待しているから。そんな期待は捨ててしまえ!!」
Yuno Kazama
2014年、宝塚歌劇団に入団。月組に配属される。その芝居力と表現力で観る人の心を動かす男役スター。早くから注目を集め、二度の新人公演主演を経験。入団まもなく経験した代役での堂々たる演技でも注目を集める。
宝塚歌劇公式ウェブサイト>>
陸上でも宝塚でも、目の前にある、高い“バー”を飛び越え続けたい
「子どもの頃の私を一言で表現するなら“ヤンチャとワンパクの極み”。家の中で人形遊びをするよりも、外でヒーローごっこをするほうが好き。とにかく体を動かすのが大好きなうえに、好奇心旺盛で怖いもの知らず。それはもう元気すぎるほどに元気な女の子で、夏休みは毎日のようにケガをして帰宅。しょっちゅう親に怒られていました(笑)」
おとなしくじっとしているのが苦手で「あの頃はあふれ出るエネルギーを持て余していたのだと思います」と笑う風間さん。そんな彼女が始めたのが陸上競技でした。
「小学校時代はあり余るエネルギーを消費すべく、疲れるまでひたすらに走り続けていました。振り返ると、私の幼少期はまるで本能で生きる動物のよう(笑)。宝塚歌劇団に入り、そこでたくさんの人に出会い多くの大切なことを学び、やっと一人の“人間”になれたような気がします」
努力を積み重ねることや支えてくれる方々の温かさ、宝塚で得た数えきれない学び。さらに、入団まもなく急場の代役で重要な役を演じるという出来事を二度も経験。周りの期待やプレッシャーと向き合う機会が多かった風間さんですが、「それも自分を成長させてくれた」と言います。
「私が陸上をやめたのは走り高跳びで負けて全国大会に進めなかったから。それは初めての挫折で、あまりの悔しさとショックで陸上を続けることができなかったんです。それくらい私は負けず嫌いで、それは今も変わりません。あの頃は幼さのあまり陸上を手放してしまったけれど、高い壁が目の前に現れるたび“絶対に乗り越えてやる!”と燃える、負けず嫌いの自分がいつも背中を押してくれるんです」
目の前の高いバーを乗り越えた先に成長した自分が待っている、それは走り高跳びも舞台も同じ。「周りが“ここまでだろう”と予想し定めるボーダーがあるのならば、それも越えていきたい」とまっすぐに語ります。
「子どもの頃、ワンパクだった私はピンクのタイツを履くことがどうしてもできなくて(笑)。バレエを始めたのは宝塚を目指し始めた中2の頃、遅めのスタートだったんです。音楽学校では、バレエだけでなく、自分は遅れをとっていると感じることが多くて。それだけに“人と違うことをしないと勝てない”と“何で勝負すべきか”を必死に探した時期もありました。人と違うことをするのは怖いと感じる人もいるかもしれませんが、私は怖くありませんでした。そうしないと、誰の記憶にも残らないと思っていたので」
度胸や思いきりのよさでも道を切り開いてきた、彼女が大事にしているのが「挑戦が怖いのは自分に期待しているから。そんな期待は捨ててしまえ!!」という言葉です。
「挑戦しないのは失敗が怖いから。失敗が怖いのは周りの目や評価が気になるから。周りが気になるのは自分をできる人間だと思っているから。そもそも、ちっぽけな自分の失敗なんて誰も注目してないのに、勝手に気にしてしまうんですよね。挑戦や失敗を経験してこそ人は成長する、だからこそ、それを妨げるものは“捨ててしまえ!!”なんです」
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【風間柚乃さんに3つの質問!】
Q1:
周りの人からかけてもらった言葉で
心に残っているものはありますか?
月組トップスター・月城かなとさんが
かけてくださった、いくつもの言葉
たくさんあるのですが、今パッと頭に浮かんだのが、れいこさん(月組トップスター・月城かなとさん)からいただいたいくつもの言葉です。舞台はそこに立つ人のすべてが現れる場所。れいこさんは、そこでの月組の皆の姿をいつもしっかり見てくれていて、必要なときにさりげなくポンと刺さる言葉を届けてくださるんです。
今でも覚えているのが、新人公演終演後のこと。「どうだったの?」と聞かれ、「楽しかったです」と答えると、「それが一番」と言ってくださった。ただ、それだけの短い会話なのですが、それが当時の私の心にギュンと刺さった。
最近も「玉ねぎの皮をむくように、いろんなものがはがれていって、今は純粋な風間がいるね」という言葉をかけていただいて、その言葉がとてもうれしかった。下級生の頃はシャカリキで、無理をしたり、背伸びをしたり、肩に力が入っていたのですが。男役10年目を迎える今、いい意味で肩の力が抜けて柔軟になれている感覚があるのですが、言葉をかけていただいたのはまさにそんなときだったので。「ここまでのストーリーはすべてムダではなかったんだな」と改めて感じ、思わず涙が出そうになりました。
Q2:
「風間柚乃」は、どんな人ですか?
基本的な性格は子どもの頃から
変わっていない気がします(笑)
好奇心旺盛、自由、負けず嫌い、楽しむのが得意、一列に並べと言われたらそこからはみ出したくなる……基本的な性格は子どもの頃からあまり変わっていないような気がします(笑)。ぐんと入り込んだときの集中力はありますが、それがプツンと切れたあとのダラダラがひどい(笑)、この落差もまた幼い頃から変わらずです。今も公演後はついダラダラしてしまい、気づかぬうちに時間が経っていて楽屋を出るのが遅くなってしまう、そんなこともしょっちゅう。
ちなみに、私のお芝居のルーツも子どもの頃にあるんです。一人っ子として育った私は一人遊びが得意で。演じることやなりきることを楽しむようになったのも、そんな環境だったからこそ。そこに対する照れや気恥ずかしさのようなものがなかったんです。小学生の頃、クリスマスのときにページェントのような催しがあり、その配役はオーディションによって決まったのですが、演じることを恥ずかしがる友達をよそに私は思い切り気持ちを込めて陶酔しながら熱演。人気を集めていた天使ガブリエルの役を勝ち取りました(笑)。好奇心に動かされるままいろんなことに挑戦することで、自分が本当に好きなものが見えるようになった。「ダメなものはダメ」と厳しく叱りながらも、やりたいと思うことに自由に挑戦し経験させてくれた、両親にはとても感謝しています。
Q3:
「今、肩の力を抜いて毎日を楽しく過ごせている」と語る
風間さんの、「楽しい」と感じる瞬間を教えてください
苦しみもがくだけでなく
楽しみや喜びを見出しながら歩いていきたいから
舞台もプライベートも“楽しむ心”を大切にしています
舞台上で一番楽しい瞬間は「お客様と心が通じ合った!」と感じるときです。例えば、客席に笑っているお客様や、涙を流しているお客様を見つけたり、銀橋からはけるときにパッと客席を指さした先にいるお客様が少し恥ずかしそうな表情を浮かべていたり、反応が返ってくるたびに「通じ合えている」気持ちになると言いますか……。生の舞台だからこそのキャッチボールはやっぱり一番楽しいです。
プライベートでの楽しい瞬間は、いわゆる「日常」に紛れ込むとき。例えば、大型スーパーやショッピングセンターで行き交う家族を眺めながら買い物をしたり、公園でボーッとお母さんと子どもたちが遊ぶ様子を眺めたり。普段は日常とかけ離れた場所にいるからこそ、休日は普通の日常を感じたくなるというか。最近は車の運転をするようになったので、ドライブしながらスーパーやショッピングセンターを回っています(笑)。
>>NEXT STAGE
ミュージカル
『フリューゲル -君がくれた翼-』
東京詞華集
『万華鏡百景色』
ベルリンの壁崩壊へと向かう激動のドイツを舞台に、東ドイツ国家人民軍のヨナスと西ドイツのスターのナディア、惹かれ合う二人の恋の物語を描く。
● 主演:月城かなと 海乃美月
● 8/18〜9/24 宝塚大劇場 10/14~11/19 東京宝塚劇場
撮影/柴田フミコ 取材・原文/石井美輪
こちらは2023年LEE7月号(6/7発売)「ことばの力 vol.6 風間柚乃さん」に掲載の記事です。
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